紗雪が嬉しそうにしていると、彼もつられて自然と気分が明るくなった。なにしろ、紗雪からは多くのことを教わってきたのだから。「社長、何かご用でしょうか?」紗雪は吉岡へ視線を向けた。「知っての通り、私は明日からバラエティ番組の収録に行く。だから、その間のスタジオのことはしばらくお願いね」「はい」吉岡は即答した。「その件なら前から指示をいただいていましたし、準備もとっくに済ませています」その返事に、紗雪は満足そうにうなずいた。「信頼しているわ。今回は、あなたの実力が試される機会でもあるの。私がいない間も、私がいる時と変わらないくらい、もっと良いスタジオにしてほしい」「ご安心ください、社長。必ずやり遂げます」吉岡は心の中で密かに誓った。必ずこのスタジオを守り抜く、と。紗雪が留守にするのはほんのしばらくの間だ。その程度の期間すら守れないようでは、期待や、これまで育ててくれた恩に応えられない。紗雪がこれほどまでに手間と時間をかけて自分を育ててくれたのは、いずれスタジオの運営を支えられる人材になってほしいからだ。特に彼女が不在の時には、誰かがスタジオを見ていなければならない。そしてその役目を担う者として、自分以上に適任な人間はいない。突然これほど重要な任務を託されたことで、吉岡の責任感は一気に膨れ上がっていた。そんな彼の緊張した様子を見て、紗雪は優しく声をかける。「大丈夫。そんなに気負わなくていいのよ。何かあればすぐ連絡して。収録中はスマホを清那に預かっているはずだから、その時は彼女に連絡しても大丈夫。時間ができたら、私からも必ず返事をするから」「分かりました」その後も紗雪は細かな注意事項をいくつか伝え、さらにあの老獪な柿本敦とどう付き合うべきかについても助言した。話しているうちに、吉岡が自分なりの考えや判断をしっかり持っていることにも気づき、彼女はようやく胸をなで下ろした。時には手を離し、部下に自分の想像を超える仕事を任せてみることも必要だ。そうして初めて、彼らが以前より大きく成長していることに気づける。もし何も任せずにいれば、彼らはいつまでも同じ場所に立ち続け、前へ進むことができない。それでは、これまでの育成が無駄になってしまう。そんな状態の人材を抱えていても意味がない。
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