جميع فصول : الفصل -الفصل 1500

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第1491話

紗雪が嬉しそうにしていると、彼もつられて自然と気分が明るくなった。なにしろ、紗雪からは多くのことを教わってきたのだから。「社長、何かご用でしょうか?」紗雪は吉岡へ視線を向けた。「知っての通り、私は明日からバラエティ番組の収録に行く。だから、その間のスタジオのことはしばらくお願いね」「はい」吉岡は即答した。「その件なら前から指示をいただいていましたし、準備もとっくに済ませています」その返事に、紗雪は満足そうにうなずいた。「信頼しているわ。今回は、あなたの実力が試される機会でもあるの。私がいない間も、私がいる時と変わらないくらい、もっと良いスタジオにしてほしい」「ご安心ください、社長。必ずやり遂げます」吉岡は心の中で密かに誓った。必ずこのスタジオを守り抜く、と。紗雪が留守にするのはほんのしばらくの間だ。その程度の期間すら守れないようでは、期待や、これまで育ててくれた恩に応えられない。紗雪がこれほどまでに手間と時間をかけて自分を育ててくれたのは、いずれスタジオの運営を支えられる人材になってほしいからだ。特に彼女が不在の時には、誰かがスタジオを見ていなければならない。そしてその役目を担う者として、自分以上に適任な人間はいない。突然これほど重要な任務を託されたことで、吉岡の責任感は一気に膨れ上がっていた。そんな彼の緊張した様子を見て、紗雪は優しく声をかける。「大丈夫。そんなに気負わなくていいのよ。何かあればすぐ連絡して。収録中はスマホを清那に預かっているはずだから、その時は彼女に連絡しても大丈夫。時間ができたら、私からも必ず返事をするから」「分かりました」その後も紗雪は細かな注意事項をいくつか伝え、さらにあの老獪な柿本敦とどう付き合うべきかについても助言した。話しているうちに、吉岡が自分なりの考えや判断をしっかり持っていることにも気づき、彼女はようやく胸をなで下ろした。時には手を離し、部下に自分の想像を超える仕事を任せてみることも必要だ。そうして初めて、彼らが以前より大きく成長していることに気づける。もし何も任せずにいれば、彼らはいつまでも同じ場所に立ち続け、前へ進むことができない。それでは、これまでの育成が無駄になってしまう。そんな状態の人材を抱えていても意味がない。
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第1492話

「君が明日からバラエティ番組の収録に行くって知っていたから」京弥の言葉を聞いても、紗雪は特に驚かなかった。監督が彼に伝えているだろうことは、最初から分かっていた。京弥ほどの立場と影響力があれば、彼が自分の動向を知りたがるのは当然のことだ。そして周囲の人間が、それを彼に知らせないはずもない。紗雪は苦笑しながら言った。「収録に行くだけよ。そんなに長い間離れるわけじゃないし......出張みたいなものなんだから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ」「心配しているのは君じゃなくて、俺自身なんだ」「......え?」紗雪は思わず目を瞬かせた。どういう意味だろう。一瞬、言葉の意味が理解できなかった。次の瞬間、京弥は大股で近づき、彼女を力強く抱きしめた。低くくぐもった声が耳元で響く。「俺が心配しているのは、自分のほうだ。君のいない生活に慣れられそうにないから」その言葉に、紗雪は思わず吹き出しそうになった。まさか自分が京弥にこれほど大きな影響を与えているとは思っていなかったのだ。「それ、本気で言ってるの?」紗雪はそう尋ねた。実のところ、彼が自分にどんな感情を抱いているのか、今でも完全には確信できていなかった。だからこそ、つい確認したくなったのだ。「もちろん本気だよ。嘘だと思った?」京弥は真剣な眼差しで彼女を見つめた。「今の俺の気持ち、もう十分伝わっていると思っていたけど......」その言葉を聞き、紗雪も彼の想いを理解した。だが彼女は昔から、恋愛感情という不確かなものに自分の人生を委ねることができなかった。だからこそ、強くなろうとしてきたのだ。「京弥が私を大切にしてくれていることは分かっている。でも、その気持ちがどれくらい続くのかは分からない。だから不安なの。結局、自分を支えられるのは自分だけだと思っているから」その言葉を聞いても、京弥は彼女を責めなかった。実の母親にさえ捨てられた過去を持つ彼女が、そんな考え方になるのは無理もない。今の彼には、その気持ちがよく理解できた。だが同時に、紗雪にはもっと自分を頼ってほしいとも思っていた。自分だけの世界に閉じこもるのではなく、心を開いてほしかった。「わかってるよ、紗雪」京弥は優しく言った。「でも俺は、君に
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第1493話

紗雪が口を開こうとした瞬間、京弥に遮られた。「先に最後まで聞いてくれ。君が負けず嫌いなのは分かっている。でも時には、俺を頼ってもいいんだよ?」紗雪は京弥の瞳に宿る真剣な光を見て、彼が冗談を言っているわけではないと悟った。そして最後には折れるしかなかった。「分かったよ。本当に必要な時に、ちゃんと言うから」「それならいい」二人は顔を見合わせて微笑んだ。これでようやく本音を伝え合えた気がした。これから先、どんなことがあっても互いに隠し事はしない。紗雪は改めて念を押した。「私は明日B市に行くから、何かあったら必ずすぐ知らせてね。あなたに何かあるのは嫌だから」その瞳には心配の色が浮かんでいた。これだけ長い時間を共に過ごし、京弥の存在が当たり前になっていた。だから数日とはいえ離れることに、まだ慣れそうになかった。京弥は軽く笑った。「そこは安心して。何なら、一緒に行こうか?」「それは駄目だよ」紗雪は即座に首を振った。「私は仕事で行くの。遊びに行くわけじゃないんだから、連れて行くわけにはいかないでしょ」京弥の正体を知らなかった頃ならまだしも、今は違う。彼の身分を知った今、何の理由もなく連れて行けば、周囲に余計なプレッシャーを与えてしまうかもしれない。紗雪の脳裏には、自分によくしてくれた監督の顔が浮かんだ。そう思うと、少し胸が痛んだ。監督には余計な噂話や中傷に巻き込まれてほしくない。それが原因で番組に影響が出ることなど、なおさら望んでいなかった。ネット上では、彼女はすでに十分すぎるほどの批判を集めている。彼女を快く思わないネットユーザーも少なくない。それでも監督は反対意見を押し切り、彼女を番組に出演させ続けた。交代させようと考えたこともなかった。だからこそ、紗雪は心から感謝していた。彼女は恩を仇で返すような人間ではない。監督が自分に良くしてくれていることも、すべて理解している。だから今回も番組に問題が起きないよう、全力で協力するつもりだ。もし京弥が顔を出せば、知らず知らずのうちに監督へ圧力をかけてしまうかもしれない。紗雪の真剣な表情を見て、京弥も事の重大さを理解したようだった。「分かった。彼にプレッシャーをかけるようなことはしない」その約束を聞い
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第1494話

京弥は長いまつ毛を伏せ、その奥にある感情を隠しながら低い声で言った。「それはそうだけど......でも、声を聞くだけなのと、実際に会えるのとでは全然違うんだ」電話越しの会話と、ぬくもりのある抱擁。その違いくらい、京弥にははっきり分かっていた。「本当に、数日がすれば戻ってくるから」紗雪は改めてそう約束した。それにしても、以前は気づかなかった。京弥がこんなにも人懐こく、離れがたい性格だったなんて。彼ほどの大企業を率いる人間なのだから、もっと冷静で自分の考えをしっかり持ち、長年ビジネスの世界を渡り歩いてきた果断な人物だと思っていた。ところが、自分の前ではまるで子どものようだ。今の紗雪には、自分がどんな気持ちでいるのかうまく説明できなかった。とりわけ京弥から向けられる激しいほどの愛情は、あまりにも真っ直ぐで、一度に受け止めるには重すぎるほどだった。それでも彼女は、その想いをそっと胸の奥にしまい込んだ。京弥がどれほど自分を好きでいてくれるかは分かっている。だが、二人にはそれぞれ仕事があり、進むべき道がある。どちらか一方が立ち止まり、ただ相手が前へ進むのを眺めているだけではいけない。そんな関係では、いつか互いに置いていかれてしまう。まして京弥ほどの立場の人間ならなおさらだ。彼の動向は常に世間やメディアの注目を集めている。もし人々に、彼の隣にいる女性が自立心もない、成長しようともしない人間だと思われたら――きっと誰もが言うだろう。あんな女性がどうして京弥にふさわしいのか、と。紗雪は昔から先を見据える人間だった。だからこそ、ビジネスの世界で確かな居場所を築くことができた。二川グループを離れてからも、外には数え切れないほどの敵がいた。それでも彼女は一つひとつ跳ね返してきた。それ自体が、彼女の実力を証明している。彼女は守られるだけのか弱い存在ではない。自分の考えと信念を持った一人の人間だ。二川グループに自分の居場所がないのなら、別の頂点に立てばいい。努力の成果を誰かと分け合うことを、彼女は好まない。二川グループでの一件を経て、紗雪は自分が何者なのかを以前にも増して明確に理解した。誰かに支配されるような生き方は選ばない。やがて荷造りもほぼ終わった。いっぱ
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第1495話

彼の声はかすかに掠れていて、胸の奥に押し込めた感情を抑えきれないかのようだった。なぜだろう。京弥の声を聞くだけで、紗雪の胸の奥に沈んでいた感情まで掻き立てられる気がした。耳元もくすぐったく熱を帯びる。もともと京弥が魅力的な男だということは知っていた。けれど今夜、その魅力のすべてが自分だけに向けられているようだった。「京弥......」紗雪が唇を開いた瞬間、京弥はその隙を逃さなかった。二人は強く抱き合いながら唇を重ねる。その瞬間、紗雪の頭の中は真っ白になった。思考はすべて途切れ、目の前には強引なほど存在感を放つ彼の姿しかない。呼吸をするたびに感じるのは、彼の気配ばかりだった。京弥もまた紗雪を強く抱き締め、一瞬たりとも離したくなかった。胸の内では何度も同じ言葉が渦巻いていた。――足りない。これだけでは全然足りない。彼が欲しいものは、最初からこんな程度ではなかった。紗雪を自分の血肉に溶け込ませ、二度と離れない存在にしてしまいたい。そんな衝動さえあった。だが、それが許されないことも理解している。もしそんなことをすれば、紗雪はきっと嫌がる。そしていつか自分から離れていってしまう。時間が経つほど、二人の距離は遠くなってしまうだろう。だからこそ京弥は必死に感情を抑え込んでいた。これから数日間、紗雪に会えない。そう思うだけで、胸の奥の理性が、抑えきれない衝動に塗りつぶされそうになっていた。募る想いを押さえ込むことができない。紗雪もまた、彼がこんな行動を取る理由を理解していた。だから彼の気持ちを受け止めることにした。どうせ数日間は会えなくなる。彼女自身も京弥を恋しく思っていた。互いの想いを確かめ合ってから、これほど長く離れるのは初めてだ。結局のところ、紗雪も彼と離れがたかったのだ。何か慰めの言葉をかけようとしたその時、次の瞬間には身体がふわりと浮いた。「きゃっ」思わず声を上げる。紗雪は慌てて彼の首に腕を回し、ようやく身体を安定させた。「何するの?」少し拗ねたような声が漏れる。まさか京弥が何の前触れもなくこんな行動に出るとは思わなかった。以前の彼はこんな人ではなかったはずだ。今の姿はまるで恋に夢中になった若者のようだった。
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第1496話

京弥は眠たげに目を開けた。差し込む朝の光が紗雪の顔を照らし、その輪郭を柔らかな光で包み込んでいる。その瞬間、京弥は心臓が止まりそうになった。いや、ただの錯覚だったのだろうか。それでも彼は、自分の心が紗雪のために強く鼓動しているのを感じていた。長い間静まり返っていた心が、再び鮮やかな生命力を取り戻したようだった。だがそんな変化を、紗雪は知る由もない。彼女に分かるのは、京弥がただじっと自分を見つめていることだけだった。紗雪は服を着ながら、ぶつぶつと文句を言う。「あんまり遅くまで無茶しないでって言ってたのに、どうして聞いてくれないのよ」話しながらも、腰の違和感のせいで動きはどこかゆっくりだった。昨夜の京弥は、しばらく会えなくなることばかり考えていて、まったく加減というものを知らなかった。紗雪の非難を聞き、京弥もさすがに気まずそうに鼻の頭を掻いた。「仕方なかったんだよ。そればかりは俺にもどうにもできなくて......それに紗雪だって、嫌そうじゃなかったし」最後のほうになると声はどんどん小さくなっていく。なぜなら、紗雪の表情がみるみる険しくなっていくのが見えたからだ。これ以上続ければ、本気で怒らせることくらい彼にも分かっていた。結局、京弥は素直に手を上げた。「分かった、分かった。俺が悪かった。配慮が足りなかった。次からはちゃんと気をつける」「次はないから」紗雪はそれだけ言い残し、そのまま立ち上がった。時計を見ると、もうのんびり言い合っている時間はない。まだやるべきことが残っている。ここで時間を無駄にしていたら、B市へ向かう予定に影響が出てしまう。紗雪は手早く身支度を整えた。一方の京弥はベッドに寝転んだまま、のんびりと彼女を眺めている。「本当に手伝わなくていいのか?」「いいってば。大人しくしていてくれるだけで十分よ」紗雪は振り返りもせず答えた。だが京弥は少し不満そうだった。「少しくらい、手伝わせてもいいじゃないか......」紗雪はその言葉を信じなかった。昨夜の件だけでも、彼が自分の言葉をろくに聞いていなかったことは十分分かっている。本当に気にかけていたなら、あんなことにはならなかったはずだ。今はそんなことをしている場合ではなく、一刻も早く空港
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第1497話

彼女は前もってアラームをいくつも設定していたし、両親にもちゃんと話をしてあった。もし起きられなかったら、両親が部屋に入って起こしてくれることになっている。だから清那は、自分が起きられるかどうかについてはまったく心配していなかった。準備は万全だったのだ。紗雪は満足そうに清那の肩を軽く叩いた。「よし、それじゃB市でも引き続き頑張りましょう」「ええ、そうね!」二人が話していると、京弥がスーツケースを持ってこちらへ歩いてきた。「向こうに着いたら気をつけるんだ。何かあったら必ず電話してくれ」紗雪は手を振った。「分かってるって。ちゃんと電話するって何度も言ったでしょう」その横で清那がからかうように笑う。「まさか兄さんにこんなにベタベタした一面があるなんてね」その言葉を聞いた瞬間、清那は京弥の冷たい視線を受けた。「......」彼女は即座に視線を逸らし、紗雪の後ろへ隠れる。頭で考えるより先に体が反応していた。やはりこういう時にからかうものではない。紗雪がそばにいても、京弥は京弥だ。その威厳に挑戦していい相手ではない。その様子を見た紗雪は呆れたように言った。「もう、二人ともいい加減にしなさい」京弥は真面目な顔で紗雪を見る。「俺はまだ何も言ってない。先に挑発してきたのは彼女だ」清那が反論しようとしたが、その前に紗雪が口を開いた。「清那も少しは落ち着きなさい。じゃないと次に京弥に叱られても、私はもう助けてあげられないからね」清那は不満そうに口を尖らせた。「紗雪も兄さんの味方なんだね」紗雪はわざととぼける。「そうかしら?私は身内びいきをせず、正しいほうの味方をするタイプだけど」その返答に京弥は思わず笑ってしまった。結果として傷ついたのは清那だけだった。京弥は笑みを収め、改めて真剣な表情になる。「何かあったら必ず俺に報告すること。判断に迷った時も遠慮せず相談してくれ」そして最後に紗雪へ視線を向けた。「何事も気をつけて。帰るの、待っているから」清那は呆れたように手を振る。「兄さん、最近ずいぶん口数が多くなったよね。前とはまるで別人じゃない」京弥は淡々と返した。「恋人もいないお前に何が分かる」「......」短時間で二度も心をへし折
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第1498話

清那は以前から、紗雪は普通の人とは少し違うと思っていた。何をするにも自分なりの計画があり、仕事と私生活をきっちり分けている。そんな紗雪の姿に、清那は心から感心していた。彼女のそばで働けば、多くのことを学べる気がする。ただ盲目的に持ち上げるのではなく、本当に成長できるのだと思っていた。もし清那が本気で努力して学ぼうとするなら、紗雪も喜んで面倒を見るつもりだった。吉岡が紗雪のもとで働き続けているのも、まさにそういう理由だった。紗雪は誰に対しても知識や経験を隠したりしない。だから彼女が何かを教えたがらないのではないかとか、自分を脅威だと思うのではないかなどと心配する必要はない。教えられることなら教える。自分にできる範囲なら全力で助ける。それが紗雪という人間だ。移動中も、清那はずっと楽しそうにB市でのバラエティ番組収録について話していた。「ねえ、芸能人に会えたりするかな?」「たぶん会えると思うよ」清那は期待に満ちた顔をしている。「面白いこともたくさんありそうだよね~収録場所ってどんなところなんだろう?」紗雪は少し考えてから答えた。「そうね。場所についてはもう事前に聞いていたでしょう?」こういうことに関して、紗雪はあまり特別な感慨を抱いていなかった。バラエティ番組にはそれぞれのキャラクター設定があり、収録もある程度は台本に沿って進むものだと思っている。だから何か一つでも学べることがあれば十分で、それ以上は求めていなかった。だが清那の考えは違った。彼女の顔には終始、期待と憧れが浮かんでいる。「紗雪、私はね、いろんな職業やいろんな世界を体験することが大事だと思っているの。そうして初めて、その面白さが分かるんじゃないかなって」清那は真面目な表情で続けた。「私、今まで経験してきたことが少なすぎたから、何をやっても中途半端。だからこれからはもっと前を向いて頑張りたいの。このままじゃ本当にだらけた人間になっちゃうから、今度こそ本気で知識も教養も増やしたいと思ってるよ」そう言って、清那は思わずため息をついた。特に紗雪のそばにいると、自分との違いを強く感じてしまう。紗雪は笑いながら言った。「そう思えるのはとてもいいことよ。でも焦らなくていい。一度に全部できるようになる人なん
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第1499話

監督は紗雪をこの番組に出演させるために、すでに多くのプレッシャーを背負ってきた。それなのに当の本人が努力を怠れば、それでは以前と何も変わらない。そんな紗雪の真剣な姿を見て、清那も自分を変えなければならないと感じていた。このまま怠け続けていたら、紗雪のそばで学べる貴重な機会を無駄にしてしまう。紗雪のもとで働きたいと思っている人は大勢いる。その中で自分がこの機会を得られたこと自体、とても恵まれていることなのだ。両親からも言われていた。紗雪についていけば多くのことを学べる、と。だからこそ、この得難い機会を大切にしなければならない。移動中、紗雪はほとんどの時間を休息に充て、体力を温存していた。......B市空港。トレンチコートをまとい、サングラスをかけ、美しいウェーブヘアをなびかせた女性が、ハイヒールの音を響かせながら空港から姿を現した。圧倒的な存在感を放つその姿に、行き交う人々は思わず視線を向ける。誰もがその女性の放つ気品とオーラに目を奪われていた。彼女はVIP専用通路から出てきたため、その姿はなおさら目立っていた。空港の出口に到着すると、女性はスマホを取り出して電話をかける。迎えの者が到着する前に、すでに大勢の記者が押し寄せていた。彼女の正体に気づいた者がいたからだ。名高い建築デザイナー――篠塚千弦(しのづか ちづる)。京弥の叔父・晃生が「彼に最もふさわしい女性」と評していた人物である。少なくとも晃生の目には、千弦こそ京弥に最適な女性だ。彼は常々、京弥のような名門一族の当主には、それに見合う女性が必要だと考えていた。そして千弦は、その条件を完璧に満たしていた。海外には自身のデザイン事務所を持ち、家柄も椎名家と釣り合っている。両家は代々親交があり、ビジネス上の付き合いも深い。さらに千弦は、京弥にとって最も頼れる協力者であり、ビジネスパートナーでもあった。晃生から見れば、この二人はまさに理想的な組み合わせだ。紗雪と比べると、なおさらそう思えた。記者たちは千弦を取り囲み、次々と質問を投げかける。「篠塚さん、今回の帰国にはどのような目的があるのでしょうか?」「なぜ鳴り城ではなくB市へ来られたのですか?」「そうですね。本来なら鳴り城がご実家ですよね?」
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第1500話

「そのご質問、とても興味深いですね」千弦は赤い唇をゆるやかに持ち上げ、微笑みながら答えた。「今おっしゃった話題は、実は私自身も最近よく考えていたことなんです。私と椎名さんの関係についてですが、私たちは最高のパートナーです。以前もそうでしたし、今もそうです。そしてこれから先も変わりません。ですから責任を持って申し上げますが、私たちの協力関係が終わることはありません」その言葉を聞いた記者は光栄そうに笑った。「ありがとうございます。ということは、今後も篠塚さんと椎名さんから新たなプロジェクトや協業のお話が聞けそうですね。お二人の今後のご活躍を楽しみにしていますし、さらなるご成功をお祈りしております」「ありがとうございます」千弦は珍しく機嫌よくそう返した。彼女にとって、自分にふさわしい男性は京弥しかいなかった。雲の頂に立つようなあの男だけが、自分の隣に立つ資格を持っている。この世のどんな男も、京弥には及ばない。それ以外の男たちはあまりにも凡庸で、彼女の目には入らなかった。だが千弦は野心家でもあった。自分の本心を簡単に表へ出すことはない。必要がなければ、決して本音を見せない。なぜなら京弥が、何よりも仕事を重視する男だと知っているからだ。彼のそばに居続けるためには、仕事という絆で結ばれることが最も有効だと理解していた。その時、別の記者が質問を投げかけた。「篠塚さん、椎名さんがすでにご結婚されているという話がありますが、その件はご存じですか?」その瞬間、千弦の瞳に冷たい光がよぎった。身体の脇に下ろしていた手は、知らぬ間に固く握り締められている。――もちろん知っている。だからこそ、こうして急いで帰国したのだ。彼女はずっと、京弥の隣で静かにパートナーとして支えていけば十分だと思っていた。そして彼の隣に立てる女性は、自分以外にいないとも信じていた。ところが京弥は、誰にも気づかれないまま結婚していた。「もちろん存じています」千弦は余裕のある笑みを浮かべた。「でも私たちはパートナーですから。彼の結婚については心から祝福していますよ」口元の笑みは少しも崩れなかった。だが注意深く見ていれば、その身体がわずかに硬くなっていることに気づいただろう。京弥の隣に、自分以外の女
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