こんなゴミみたいな男と一緒になんて、絶対に嫌だ。「もうお義兄さんとも呼ばないのか」辰琉は、自分でもおかしいと思うときがある。彼女に尊重されたいと思いながらも、一方で一緒になりたいと願っている。そんな矛盾した気持ちは、ときに辰琉自身をも苦しめた。しかし今、彼にとって一番の目標は、紗雪を自分のものにすることだ。紗雪は吹き出すように笑った。「自分の言ってること、おかしいと思わないの?」「私のことが好きだとか言っておいて、お義兄さんって呼ばせようとするなんて」本当に変な話。辰琉自身も、矛盾しているのは分かっていた。でももう言ってしまったことを今さら撤回するのも、自分の顔に泥を塗るようなものだ。「とにかく、俺が君を好きなのは本当だ」彼の目には真剣な色が浮かび、なんとか紗雪を口説き落としたいという思いが滲んでいた。「くだらない!」紗雪は、辰琉の意図が分かった今、この場にとどまる意味をまったく感じなかった。こんな奴に時間を使うより、ジョンとプロジェクトの具体的な打ち合わせでもしていた方がよっぽど有意義だ。「もういいわ。帰る。これ以上は時間の無駄よ」紗雪は、自分がなぜあのとき辰琉と一緒に食事に行くことを了承したのか、今では後悔しかなかった。黒歴史もいいところだ。時間の無駄にもほどがある。紗雪が立ち上がるのを見て、辰琉は焦った。「どこに行くんだ?」「あんたには関係ないでしょ」そう言って、紗雪は扉を開け、そのまま出て行った。彼女は大股で歩き、もう一刻たりともこの場に留まるつもりはなかった。こんな場所に長居するなんて、ただの馬鹿みたいだ。辰琉は拳を握りしめ、どうしても諦めきれなかった。せっかく紗雪を呼び出したのに、こんな簡単に帰らせるわけにはいかない。今回のことを教訓にされて、次に誘っても絶対に出てこなくなるだろう。それだけは避けたい。そう思った彼は、後を追って廊下に出た。「紗雪、待ってくれ!」声をかけても、紗雪はますます早足になった。辰琉も表情を険しくしながら足を速める。そしていつの間にか、二人はホテルのロビーの真ん中に差し掛かっていた。男としての体力の差もあり、すぐに彼は彼女に追いついた。「紗雪、お願いだ。チャンスをくれないか?」辰琉は懇
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