京弥は驚きの表情で紗雪を見つめた。額の前髪が少し濡れ、露出している肌は雪のように白く、全身から言葉では言い表せない艶やかさが漂っていた。その姿を目にした瞬間、京弥の瞳には赤みが差し、理性よりも本能が勝った。またしても、眠れぬ夜となった。翌日。紗雪が目を覚ましたとき、京弥はまだ隣で眠っていた。彼の彫りの深い顔立ちを見つめながら、紗雪は昨夜のことを思い返す。こうして見ると、この男にはそれなりに満足しているのかもしれない。今のような関係を保っていれば、それで十分。余計なことを考えなくて済む。彼女には、もう感情に重きを置く時間などなかった。二川グループは、彼女の手で変えていかなくてはならない。プロジェクトもここまで進んだ今、そう簡単に手を引けるわけがない。紗雪は、自分にも他人にも、立ち止まることを許せなかった。ベッドを離れる前に、紗雪は一度だけ京弥に深く視線を落とし、その後身支度を整えて会社へと向かった。彼女が出ていった後、ようやく京弥はゆっくりと目を開けた。さっきまで紗雪がベッドの上でじっと自分を見つめていたのは、彼にも分かっていた。ただ、目を開けなかっただけだ。二人の間にできた溝は、簡単には埋められないことも、彼には分かっていた。京弥は溜息をつき、眉間を指でつまむようにして目を閉じた。心が重かった。まだまだ頑張らないと。そう自分を奮い立たせるようにして、彼も会社へと出かけた。家にいるより、会社にいる方がましだ。家には、まだ伊澄がいる。彼女にどう対処すべきかと考えるだけで、頭が痛くなる。だったら早く会社に行った方がマシだ。それにしても、もうこんな状況なのに、伊吹はなぜ彼女を連れ帰ろうとしないのか。そう考えるたびに、京弥はますます頭痛がひどくなる気がした。この先、伊澄がいつになったら出て行くのか、見当もつかない。一方その頃、京弥が名前に出した伊澄は、会社で悠々自適に過ごしていた。伊吹が裏で根回ししてくれたおかげで、今の彼女は海ヶ峰社で完全に自由自在、深く考えずに済んでいた。彼女がこの会社で部長の地位にいるのは飾りじゃない。彼女は常に、紗雪の一挙一動を監視していた。紗雪が何か動けば、すぐに部下がその情報を報告してくる。伊澄は資料をめくりな
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