161「聞いたわよー。上手いことやったわね。相馬さんをGetするなんて」「えっ、そんなこと私……」「掛居さん」 呼ばれて相馬さんの方を見ると困った様子で手を合わせて『お願い・頼む』って感じのポーズをとっていた。 エアーボイスで『どういうこと?』と訊くと、『あとで話すから』と彼からもエアーボイスで返ってきた。 周囲から『良かったね』とか『おめでとう』というような声が掛かり、私がハッとして相原さんのデスクの方に視線を向けると……。 彼は祝福を受けている私のことを憮然と見ていた。 よくよく見てみると彼の表情は憮然としているようでもあり、悲し気でもあり、表情をなくしているようでもあり。 自分の焦りのせいなのか同じ人の顔の表情がくるくる変わって見えるなんて……自分の余裕のなさを感じる。『どうしてこんなことに……』 どんな事情があるにせよ、火元は相馬に違いなかった。 こうなってみると花自身には何の責任はないものの、さりとて、なら相原がこの状況を微塵も気にせずにいられるかというと、それも違うだろう。 好意を寄せている女性が自分以外の男とこれから付き合うらしく、しかも公認になり周囲からは祝福までされているのだから。 12月のクリスマスの告白からおよそ2か月、熱烈な恋人たちとはほど遠い幼子を挟んでのゆったりとした穏やかな付き合いを互いに育んできて、互いの持つ寂しさなどを埋めてきたのだ。 花の方だってそうだ。 相馬との約束はまだまだ先のことで、時間を掛けて決断すればいいと考えていたのだ。 これでは突然の嵐にあったようなもの。
최신 업데이트 : 2025-05-27 더 보기