自分でも、衝動的だと思う――一葉はそう自覚していた。だが、人生には、時にはこうした衝動が必要なのだ。そうでなければ、人は永遠に泥沼の中でもがき続けることになる。車に乗り込むと、源が一葉の方を見ていた。何度かそんなふうに窺うような視線を向けた後、彼はついに堪えきれなくなったように口を開いた。「なあ、一葉……本当に、本当に俺と籍を入れる気でいるのか?」そう口にした途端、彼はしまった、という顔をした。どうしてあんなことを言ってしまったんだ、と自分を責めているのが手に取るようにわかる。もし彼女がこの一言で考え直し、結婚しないと言い出したらどうする。これは、自分の夢が叶う唯一のチャンスなのだ。十年だ。丸十年もの間、ずっと遠くから彼女を見つめてきたのだ。ようやく巡ってきたこの機会を、自ら手放すような真似をしてどうする。まったく、俺という男は……!そんなふうに激しく後悔する源の姿を見て、一葉は、やはりこの人は本当に良い人なのだと、改めて思わずにはいられなかった。きっと、自分が心変わりするのを恐れているのだろう。それなのに、どこまでも自分のことを優先して、後で後悔して苦しまないようにと、もう一度考えるよう促してくれている。こんなふうに自分を想ってくれる人と結婚すれば、きっと、悪くない未来が待っているはずだ、と一葉は思った。人柄も良く、頭も切れ、見た目も良い。ご両親も素晴らしい人たちだと聞いている。子供も、こんな環境でならきっと健やかに育ってくれるだろう。安定した家庭環境で、子供の面倒を見てくれる人がいれば、自分も憂いなく研究の世界に没頭できる。考えれば考えるほど、源との結婚は最良の選択だと思えてきた。もちろん、そう思おうとしている自分もいる。良い面だけを見て、悪い面から目を逸しているだけなのかもしれない。だが、それがどうしたというのだろう?この道を選んだからには、迷わず進むだけだ。ただ……どうやら源も、そして一葉自身も、少しばかり衝動的になりすぎていたらしい。覚悟を決めたらすぐに籍を入れようと、そればかりで……今日が何曜日なのか、二人してすっかり頭から抜け落ちていたのだ。車で役所に乗り付け、その扉が固く閉ざされているのを目にして、ようやく思い至った。今日は土曜日。役所は、休みだということ
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