脳とマシンを繋ぐスマートチップの研究者は、一葉だけではないのだから。かつてF国で開催された研究サミットで出会った、同じ分野の碩学たち。彼らとはすぐに意気投合し、M国への留学が決まった後には、共同で研究チームを立ち上げる約束まで交わした。サミットの終わりにはグループチャットまで作り、帰国後も頻繁に情報交換をしていた。最初こそ活発だったチャットも、いつからか誰も発言しなくなった。ただ、多忙な日々の中で自然と疎遠になっただけなのだと、一葉はそう思っていた。まさか……!こんな形で、全員が囚われの身となっていたなんて……!中でも特に親しかったスナイダー博士が我に返り、一葉に向かって力なく笑いかける。彼らを一人ひとり、この場所に集めた張本人である文人は、全員が旧知の仲であることなどお見通しだ。男は、わざとらしく笑みを浮かべて言った。「皆さん、同じ分野の権威ですから、ほとんどの方が顔見知りでしょう。今さら私が紹介するまでもないですね」「こちらが、青山さんからご提供いただいた最新の研究成果です。皆でこれを検討し、いかにして最短でブレークスルーを達成するか……知恵を出し合ってもらいましょうか」一葉が提供した最新の実験データが大型スクリーンに投影されると、その場にいた誰もが息を呑み、賞賛の声を上げた。それが紛れもなく本物の成果であると確認が取れると、文人は「所用がある」と言い残して会議室を後にした。文人が去った後、室内にいた研究員の大半が、無意識のうちに安堵のため息を漏らした。彼らのような科学者の多くは、人類に貢献することをこそ望んでいる。悪事に加担することなど、断じて本意ではない。もしも、そうせざるを得ない状況に追い込まれていなければ……だからこそ、文人に面と向かう時は誰もが重圧を感じていた。彼が部屋を出て行った途端、それまで張り詰めていた空気がふっと緩み、ほんの少しだけ活気を取り戻す。誰かが、苦笑いを浮かべながら自嘲気味に口を開いた。「F国のサミットじゃ、『いつか絶対チームを組んで共同研究しよう』なんて語り合ったもんだがな。まさかこんな形になるとは思わなかったが……まあ、ある意味、願いが叶ったってことか」その言葉に、皆が顔を見合わせる。そして最後には、やるせない笑みを浮かべるしかなかった。「しかし、青山……君は
Ler mais