必死に涙を拭うが、後から後から溢れてきて、ちっとも止まらない。泣きたくないのに、涙は言うことを聞かずに頬を伝い落ちていく。どうやっても拭いきれない涙をそのままに、一葉は顔を上げて慎也を見た。「慎也さんは、謝る必要なんてないわ。あなたは何も悪くない!」自分の命を懸けてまで、彼女を救ってくれた。そのために、命を落としかけてさえいたのだ。彼に、何の落ち度があるというのだろう。謝罪など、必要ない。悪いのは、全て私なのだから!役立たずな私が、あの状況で烈の正体を疑うことすらなかったせいで、こんな事態を招いてしまった!全て、私のせいなのに!慎也は、そんな彼女の心の内を見透かしたように、静かに言った。「一葉、お前も悪くない。自分を責めるな」「この一件で責められるべきは、獅子堂烈だけだ!あの男が、異常なだけなんだ!」そう言うと、彼は一葉が何かを返す前に、続けた。「言吾のことは、そこまで心配しなくていい。傷は急所を外れている。血さえ止めれば、命に別状はない。それに、烈が彼を殺す心配も無用だ」「烈が死を偽装し、言吾を替え玉に立てたのは、この犯罪組織で遊び飽きた後、再び獅子堂家に戻り、輝かしい跡継ぎとして表の世界に返り咲くためだ。そして、自分が犯した罪のすべてを、言吾になすりつけるつもりなんだよ。その計画を成し遂げるには、まだ時間がかかる。それまでの間、烈は言吾を殺さないどころか、むしろ生かしておかなければならないのさ。奴が全戦力を、言吾ではなく俺たちの方に集中させた……それが何よりの証拠だ」慎也という男は、実に聡明だった。撤退の最中、烈が全火力を自分たちへ集中させているとの報せを受けた時点で、彼はすでに烈の真意を読み切っていた。この追撃戦において、烈が望んでいるのは、自分と一葉の死だけなのだと。だからこそ、彼はあれほど躊躇なく言吾を置き去りにできたのだ。「もう、言吾の情報を探るよう、人を放ってある。じきに確かな報せが届くはずだ。あまり気を落とすな。自分を責めてもいけない」そう言って、慎也は一葉の頭をそっと撫でた。その眼差しは、彼女のそんな姿を見るのが辛いとでも言いたげだった。その心配そうな瞳を見つめ返しながらも、一葉は何も言えなかった。どんな言葉を返せばいいのか、分からなかったのだ。むろん、分かって
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