紫苑とて、本心からこの場所に留まり、自分をここまで貶めたあの役立たずの男を見送りたいわけではなかった。ただ、義父の同情をさらに引き、自分の不憫さを印象付けておきたかっただけだ。だから、彼女はさらに別れの言葉を並べ立てた後、執事と共にその場を後にした。車に乗り込み、屋敷を離れるとき、彼女は思わず振り返って獅子堂の家を見た。初めてこの門をくぐった日、自分がどれほど大きな野心に満ちていたかを、今でもはっきりと覚えている。未来に抱いていた、あの途方もない希望。自分の一生を意のままに操るだけでなく、多くの人間を駒のように動かし、全てを思い通りに進められると、本気で信じていた。まさか、その何一つとして叶うことなく、こんなにも惨めに、全てを失って逃げ出すことになろうとは。人生とは……なんと、ままならないものなのだろう。視界からどんどん遠ざかっていく屋敷を見つめていると、堪えきれなくなった涙が、頬を伝って落ちた。この瞬間、彼女は初めて理解した。時代劇で見る、罪を得て一族もろとも流罪となったお姫様が、振り返って我が家を見る、あの最後の眼差しに込められた尽きせぬ哀しみを。本港市──ここしばらく、一葉は人に獅子堂烈の動向をずっと見張らせていた。彼が脱獄したという知らせを聞いた時、言吾と慎也が万全の備えをしていると分かってはいても、胸のざわめきを抑えることはできなかった。万が一のことが起きたら、という恐怖。そのせいで、見張りをさらに厳しくさせていた。だからこそ、あの報せを一葉は誰よりも早く知ることになった。ここしばらく、一葉は人に烈の動向をずっと見張らせていた。彼が脱獄したという知らせを聞いた時、言吾と慎也が万全の備えをしていると分かってはいても、胸のざわめきを抑えることはできなかった。万が一のことが起きたら、という恐怖。そのせいで、見張りをさらに厳しくさせていた。だからこそ、あの報せを一葉は誰よりも早く知ることになった。──精神病院で、文江が烈を刺し殺し、その場で自害した、と。その衝撃は凄まじく、一葉はしばらく呆然として、我に返ることができなかった。文江という女性と直接言葉を交わした回数は決して多くはない。だが、その数少ないやり取りだけでも、彼女がどれほど烈という息子を偏愛しているかは、痛いほど伝わってきていた。烈がどのような死に方をしよう
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