そしてが困ったように口を開いた。「雅人さんから電話がかかってきた時、ちょうどあなたが二階から私を呼んでたでしょう?だから、通話状態のまま上がってきちゃったのよ」理恵はまだ恥ずかしさのあまり頭がどうにかなりそうだった。開けっ放しになっているドアに目をやり、恨めしそうに言う。「ドアは閉めてってよ。開いてたから、お母さんが来たのにも気づかなかったんじゃない」「はいはい」柚木の母はそう答えてドアノブに手をかけたが、閉まりかけたドアの隙間からひょいと顔を覗かせて付け足した。「大したことないって。雅人さんだって、そんなにはっきりとは聞こえてないはずよ。考えすぎないの」パタン、とドアが完全に閉まる。理恵は再びベッドに顔を突っ込み、うめき声やら悲鳴やらを思う存分クッションにぶちまけた。ひとしきり叫んだあと、放り出していたスマホを拾い上げる。通話はまだ繋がったままだ。理恵は電話の向こうの親友に向かって、怒涛の愚痴を浴びせた。「大したことないわけないでしょ!よりによって橘さんに聞かれたのが、あの『結婚して恩返しして』とかいうイタい台詞なんだから!ああああ私のイメージが!私のプライドが!もう無理、生きていけない。いっそ太平洋の底まで重りをつけて沈んでしまいたい!!」電話の向こう側で、透子は親友の悲痛な叫びを聞きながらかける言葉を探していた。理恵は普段サバサバして明るいが、恋愛絡みになると意外と繊細で傷つきやすいのだ。「大丈夫、恥ずかしくなんかないよ。お兄さんなら誰かに言いふらしたりしないから。本人が知ってるだけで終わりだってば」透子はできるだけ優しく声をかけた。「その本人の前で大恥かいたのが一番の問題なの!」理恵はなおも嘆き続ける。「相手が他の誰かだったら、こんなに引きずらないのに……!」好きな人だからこそ、その人の前ではちゃんとしていたかった。少しでも可愛いところを見せたかった。だからこそ、今こうしてプライドがズタズタに引き裂かれているのだ。「うーん……でもさ、お兄さんは理恵が好意を持ってることくらい、とっくに知ってるわけじゃん?今回のは、まあ……二回目の告白みたいなもんだと思えば、ね?」透子は必死に言葉を繋いだ。「こんなの、ロマンチックのかけらもないよ。ただの痛い妄想女じゃん」理恵の声がさらに沈み込んだ。「しかも、私お兄さん
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