雅人は目を見開き、画面を数秒間凝視した。透子の言葉の意味を二度、三度と確かめてから――いや、頭で理解するより先に、指が勝手に通話ボタンを押していた。すぐに電話が繋がった。雅人は焦りを隠せない声で問い詰めた。「どうして急に海外に行きたくなくなったんだ。この前、家族みんなで向こうに住もうって決めたじゃないか」――なぜ突然、気が変わった。何があった。しかも、自分と両親だけで海外へ行けと言っている。妹一人を国内に残すなど、到底認められるわけがない。ようやく見つけ出した家族だ。二十年も離れ離れだった。再びばらばらになることなど断じて許さないし、まして妹を一人きりで残していくなど、あり得ない。透子の声が返ってきた。「ごめんね、迷惑かけて。こんなふうに気持ちがぶれるの、よくないってわかってるんだけど……」兄の声音がいつもより硬い。怒らせてしまったのだと思い、彼女は素直に謝った。だが――謝れば謝るほど、電話越しの雅人の空気はさらに張り詰めていく。「なぜ僕に謝る。栞は何も間違っていない。ただ、海外に行かなくなった理由を聞きたかっただけだ」なぜ謝る必要がある。家族の間に「ごめんなさい」など要るのか。それとも――妹は心の底では、まだ自分たちを家族と認めていないのか。表面上は親しげに振る舞いながら、内心ではずっと距離を置いている。あの他人行儀な遠慮が抜けていないのか。雅人は考えまいとしても考えてしまい、胸の奥が鋭く痛んだ。拳を握りしめたまま、どうすればいいのかわからなくなる。妹は、自分たちが見つけるまでに二十年もかかったことを、まだ恨んでいるのだろうか。かつて美月を本物の妹と取り違え、彼女を深く傷つけてしまったことを、まだ許せずにいるのだろうか。――きっとそうだ。たとえ口では許したと言い、その後一度もあの話を持ち出さなかったとしても。あの頃の傷は、妹の心に深く焼きついて消えない。どれだけ時間が経っても、完全には消し去れないのだ。自責と罪悪感が胸を満たした。謝ろうと口を開きかけた、その時。電話の向こうで、透子が話し始めた。「実はね、前からそこまで海外に行きたいとは思ってなかったの。やっぱり国内にいる方が好きで。最初は、新井さんにしつこくつきまとわれてたから、みんなと一緒に海外へ逃げちゃおうかなって思ってたんだけど。
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