弁護士が依頼人の言葉を伝えると、向かいに座る翼は、思わず吹き出しそうになった。まさか、蓮司は本当に不能だったのか?だが、彼はすぐに表情を引き締め、立ち上がって真剣な面持ちで言った。「当方としては、病院での検査を要求します。診断書を確認しない限り、信用することはできません。また、原告は婚前に持病があることを明かしていませんでした。たとえ治療可能であったとしても、被告側には知る権利があります。これは婚前における重大な事実の隠蔽にあたります」裁判所は留置場に職員を派遣し、指定された病院で原告の性機能に関する検査を行うよう手配した。蓮司はその間に、大輔にメッセージを送り、以前の「不能」に関する診断書を偽造するよう、何としても手配するよう命じた。大輔は慌てて会社を飛び出して手配に向かった。スマホのメッセージを見ながら、その心境は……言葉にならないほど複雑だった。結婚して二年、社長は透子に一度も触れていなかった?その上、医者を見つけて不能であるという証拠を偽造しろと……これはあまりにも突飛な話だ。裁判所から付き添いの者が来て検査が行われるが、蓮司はまったく心配していなかった。彼自身は「健全」そのものだからだ。大輔が過去の診断書を届けさえすれば、あとは弁護士がうまく立ち回ってくれるだろう。たかが二年の問題だ。一生続くわけではない。以前言わなかったのは「劣等感」からだと説明すればいい。男のプライドが、それを告白できなかったのだと。とにかく十分な報酬は払ってある。弁護士が臨機応変に対応してくれるはずだ。蓮司は少し気持ちを落ち着かせた。控訴審で予想外の展開があったとはいえ、最終的な結果は変わらないと信じていた。彼が病院に着いた頃、もう一方の、新井家の本邸では——蓮司の計画は完璧だったが、現実は容赦なかった。彼はお爺さんが常に自分の動向を「監視」しており、しかも自分とは真逆の立場にいることを忘れていた。執事がお爺さんに、二度目の審理と、本人が病院へ検査に行ったことを報告すると、お爺さんは怒りのあまり卒倒しそうになった。新井のお爺さんは怒りに震えながら言った。「馬鹿げているにもほどがある!あの不埒者め、恥というものが微塵もないのか!」傍らの執事も気まずさで口をつぐみ、内心で深いため息をついた。若旦那様は透子を引き留める
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