男の口元には青い無精髭が伸び、目は深く窪み、その瞳は虚ろで光がなく、まるで魂を抜かれた抜け殻のようだった。まだ数日会っていないだけだ。いや、一昨日会ったばかりではなかったか。どうして社長はこんな姿になってしまったのか。「社長、お迎えに参りました……」大輔は驚きながらも、そう声をかけた。蓮司は答えず、ただ足を動かし、機械のように無表情で彼を通り過ぎて行った。その眼差しは依然として生気がなく、焦点すら合っていなかった。大輔は声をかけようとしたが、結局は黙り込み、慌てて職員が用意した社長の私物を手に取ると、小走りで後を追った。家路の途中、車内もまた静寂に包まれていた。大輔はバックミラー越しに後部座席の男を見た。まるで彫像のようにただ座っており、何の反応も表情も見せなかった。今日の裁判で敗れ、透子と完全に離婚が成立したことで、社長はそのショックから立ち直れず、こんな姿になってしまったのだろうと、彼は推測した。はあ……ため息をつきながらも、彼は思わず心の中であの諺を呟いた。――後の祭り、だ。運転手がマンションの前で車を停め、大輔は荷物を持って一緒に中へ入った。部屋は十日ほど誰も住んでいなかっただけだが、ドアを開けた瞬間、大輔は空気中に漂う埃の匂いを感じ取ったような気がした。家具の配置は変わっていない。だが、今の家と、一、二ヶ月前に如月さんがまだいた頃の家とでは、まるで別物だった。生活感が完全に失われ、がらんとした印象で、どこか寂しさが漂っていた。大輔は提案した。「社長、まずはお風呂にでもお入りになりませんか?私がリビングを片付けておきますから」蓮司は答えず、黙って小部屋へと向かった。そこは、透子が家を出る前に最後に使っていた客室だった。ベッドに体を投げ出すと、鈍い音が響き、鉛のように重たい体は、まるで息絶えたかのようにぴくりとも動かなくなった。ドアのそばに立ち、大輔は静かにため息をついた。そして、客室が透子の残していった衣類で埋め尽くされているのを見て、やりきれない思いで首を横に振った。彼女がいる時は寝室を別にしていたのに、いなくなってからは、自ら彼女の部屋で寝るようになった。まるで社長が彼女を深く愛しており、後悔の念に駆られているかのようだ。だが、結婚して二年、一度も彼女に触れなかったのは、
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