別におかしなことじゃない。配車アプリの車が近くで客待ちしているのは、よくあることだ。それに、彼は顔もちゃんと見せたし、声もかけてきた。悪い人なら、そんな簡単に顔を見せないはず……前に自分をつけ回した男みたいに。でも……なんとなく嫌な予感がして、透子はどうしても変だと感じていた。それに……相手が現れる回数が多すぎる。透子は人ごみに紛れ込み、その人たちの友達のふりをした。そして、別の地下鉄の入口に着くと、彼女はすぐに中へ入った。女が誰かに迎えられたわけじゃなく、別の入口から地下鉄に入ったのを見て、路肩の車の中で、男の表情が急に険しくなった。彼が笑っていないその顔は、まさに怖い顔そのもので、見るだけでぞっとした。ターゲットの警戒心が強すぎる。どうやら、完全にこっちを疑っているみたいだ。まだ顔を見せて二日目なのに。若い女は単純でだまされやすいと思ってた。感情に訴えて関係を作り、京田市の郊外に連れ出して始末する……その計画は、もう無理だろう。計画は失敗、しかも顔まで見られた……男は地下鉄の入口をにらみつけ、その目はまるで獲物を狙う鷹のように鋭かった。……駅に入って、地下鉄に乗っても、透子は時々後ろを振り返り、あの運転手がついてきてないか確かめようとした。でも、彼の姿は見えなかった。息はまだ少し荒く、彼女は眉をしかめた。最近、本当に何を見ても敵に見えるほど、神経質になりすぎている。会社に着いて、ビルの正面玄関に入ろうとした時、彼女はまた振り返って周りを見回した。でも、道の両側に止まっている車はほとんどが黒か灰色で、白い車があっても、形が違っていた。透子は小さくため息をつき、振り返って中に入った。やっぱり、気にしすぎだったみたい。この張り詰めた気持ちが落ち着くには、もう少し時間がかかりそうだ。路肩にて。男は同じ男だったけど、彼はもう灰色のバンに乗り換えていた。予想通りだ。ターゲットは彼を疑っているだけじゃなく、完全に警戒している。帽子を目深にかぶり、男はタバコに火をつけると、目を閉じてしばらく休んだ。……一方、新井グループ。大輔は昨日、社長を迎えて帰った時、その精神状態を心配して、休みを取らせる準備までしていた。ところが、電話で様子を聞くと、逆に車を寄こすよう言われたのだ。
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