All Chapters of 私が去った後のクズ男の末路: Chapter 1171 - Chapter 1172

1172 Chapters

第1171話

彰人は目の前の女をじっと見据えていた。願乃の胸は激しく上下している。やがて男は腰をかがめ、床に散らばった紙を一枚ずつ拾い上げていった。そして、それらをまとめるとライターで火をつける。揺らめく炎の中で、低く囁くように口を開く。「桜庭は他の男と関係を持ったことはない。ただ仕事が少し体裁のいいものじゃなかっただけだ。若くて綺麗だし、ピーターが惚れるのは当然だろう?それとも、引き裂くつもりか?願乃――やめておけ。大人の世界ではな、パートナーが最優先なんだ。俺にとってのお前がそうであるように、どんな時でも……たとえ結代であっても後回しだ。分かるだろう?それから、騙し合いの話だが――……ふっ、誰だって一度や二度は人を騙してるものだ。あの夜、お前だって分かっていたはずだろう?それでも俺と寝た。俺を利用しようとしたんじゃないのか?願乃、お前が成長したのは嬉しいよ。だが、もう少し大人になれ。成功への道に細かい綺麗事は必要ない。普通のことだ。親にでも聞いてみろ――その手にどれだけの血がついているか。俺より綺麗だと思うか?……そんなわけがない」……願乃は彼を睨みつけた。男は相変わらず微笑んでいる。どこか甘やかすような優しい笑み。けれど、その瞳には一片の笑いもなかった。もしできるなら――願乃には一生、何も知らずに生きてほしかった。だが、もう遅い。彼の牙を見てしまったのだから。ならば、この世界の残酷さを教えるしかない。こういう人間は彼だけではない。ただ彼はその中でも頂点に立つ存在に過ぎない。勝った者が正義だ。そんなことは本来もっと早く知るべきだったのだ。彰人は一歩、また一歩と距離を詰める。そして顔を寄せ、そっと彼女の頬に触れた。願乃は顔を上げ、吐き捨てるように言った。「彰人、あなたは気持ち悪い」「そうだな。俺は、お前にとって不快な男だ。でも、それでも好きなんだろう?それとも――俺と寝るのが好きなだけか?この前なんて、見苦しいくらい取り乱していたじゃないか。思い出してみるか?安心しろ、ちゃんと用意はしてある」……願乃は唇を噛みしめ、抗おうとする。だが、女が男に抗えるだろうか。そもそも――これは最初から仕組まれたゲームだった。彰人が莫高チップを立ち上げ、メディア
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第1172話

朝、願乃が目を覚ましたとき――心は驚くほど静かだった。取り乱すこともなければ、激しい行動に出ることもない。昨夜のあの狂気じみた感情はまるで最初から存在しなかったかのように消えていた。壊れることもなく、ただ――受け入れたようだった。彰人という男の本質を。そうだ。どうして彼を変えようなどと思ったのだろう。変える必要などない。自分には関係のないことなのだから。彼女がすべきことはただ一つ――きっぱりと線を引くこと。利用できるものは利用する。関係のない部分にはもう踏み込まない。それでいい。これが吹っ切れたのか、それともただ屈しただけなのか、願乃自身にも分からなかった。ただ、昨夜すべてを吐き出したことで、どこかどうでもよくなっていた。今もそうだ。一晩、あれほどまでに絡み合ったというのに、彼女は平然とベッドのシーツをはねのけて起き上がり、そのまま浴室へと向かう。シャワーを浴び、男を柔らかなベッドの上に置き去りにしたまま。身体を洗い終えると、彰人のシャツをそのまま借りて身につける。昨夜のドレスは引き裂かれていて、とても人前に出られる状態ではなかった。スイートルームの扉を開けると、外には雅南が立っていた。その表情は言葉にしがたい複雑さを帯びている。願乃は何も言わず、そのままエレベーターへと歩き出した。中に入ると、鏡に映る自分をじっと見つめる。沈黙。雅南は息を潜めたまま、一言も発せない。周防社長の気持ちは痛いほど分かっていた。誰だって、他人に振り回されるのは耐えがたいものだ。かつて彰人によって満たされていた彼女の人生は今、再び崩されている。それが誰であっても、苦しいに決まっている。やがて一階に着くと、黒塗りの車がすでに待機していた。願乃は乗り込むが、終始一言も発しなかった。心の中では理解している。自分と彰人の関係はこの曖昧なまま続けるしかないのだと。冷酷な人間ほどすべてを容易く手に入れる。そして自分は常に劣勢に立たされる側。家に帰って泣きつくことなどできるはずもない。あのとき、結婚を選んだのは自分だ。ならば、この道は最後まで歩ききるしかない。もう子供ではない。いつまでも家族に後始末をさせるわけにはいかない。車が走り出してしば
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