All Chapters of 私が去った後のクズ男の末路: Chapter 1181 - Chapter 1182

1182 Chapters

第1181話

夜更け。彰人は力なく身を横たえた。闇の中にいるはずなのに、なおも眩しさを感じる。彼女がすぐ傍にいるのに、遥かな隔たりがあるようで――もう戻れないのだろうか。かつての願乃はあれほどまでに従順で、あれほどまでに彼を頼っていた。寒くなれば、足先まで彼が温めてやっていたのに。冷え込む夜、彼女の足は彼の懐に潜り込んできた。氷のように冷たかったそれも、しばらくすれば彼の体温でじんわりと温もりを取り戻した。だが今は――その頑なな心はどれほど温めようとしても、もう温まらない。彰人は腕で目元を覆った。それでも胸の奥がじわりと疼き、喉の奥から押し出すように、低く声を落とす。「願乃……正直、俺は時々、自分が情けなくなる。俺たちが一緒にいることで、お前の人生が壊れたっていうなら……考えたことはあるか?俺の人生だって、お前で変わったんだ。俺が払ってきたものも、もがいてきたことも……お前にとっては何の価値もないんだろうな。お前にとって恋なんて、簡単に手に入るものだからだ。俺じゃなくてもいい。ピーターでも、他の誰でも――いくらでも、お前を愛するやつは現れる。だから、お前は欠けることがない。だから……俺の想いなんて、安っぽく見える。そうだろ?この半年、俺がどれだけ消耗したか……考えたこと、あるか?一度でも、俺を気の毒だと思ったことは?石だって、これだけ熱を与えれば、いつかは溶ける……そう思ってた。でも、お前は違った。本当に一度も、俺に情けをかけたことがない。時々思うんだ。プライドを捨てて、お前にすがりつけばいいんじゃないかって。でもな……愛情なんて、乞うものじゃない……だろ?」言い終えると、彼は静かに立ち上がった。「邪魔はしない」そのまま、彰人は部屋を出ていった。客室へ戻り、灯りもつけずにリビングのソファへ腰を下ろす。――そのまま、一晩中。……寝室。願乃はなおもベッドの上で小さく身を丸めていた。差し込む月明かりが、その顔を白く浮かび上がらせる。目尻には、二筋の涙の跡。それはかつて彰人を愛していた証。――あるいは今もなお愛しているのかもしれない。ただ、もう……どう愛していいのか分からないだけで。下腹がきゅっと波打つ。胎内の子が動いたのだ。小さな拳で、内側から強く叩くように。その瞬間、願乃は
Read more

第1182話

深夜。彰人はまだクラブの個室にいた。豪奢なその空間は薄暗く、客は彼一人だけ。ソファに身を預け、目を閉じている。隣には一人の若い女。美月よりも若く、整った顔立ち。艶やかな黒髪に、透けるような白い肌。しなやかな肢体は今の願乃とは比べものにならない。――この女を抱けば、願乃との関係は終わる。そんな考えが何度も何度も頭の中を巡る。それでも、結局、連れ出すことはなかった。ただ、この場所でひたすら酒をあおる。吐くまで飲み、胃がひっくり返るほど苦しくなっても飲み続ける。だが、どれほど体が苦しくとも、心の痛みには到底及ばない。愛しても手に入らない。その苦しさが彼の中であまりにも鮮明に形を成していた。酒が進み、意識は朦朧とし始める。半分夢の中のような状態で、ただ、隣に柔らかな温もりがあることだけを感じていた。女の名は玉井涼香(たまい りょうか)。美大を出たものの仕事に恵まれず、今はここで接客をしている。酔い潰れた男を見つめながら、彼女の心臓は高鳴っていた。――彼は元・メディアグループの社長。その後、莫高チップを立ち上げ、資産は数兆円規模。容姿も整い、体つきも隙がない。まさに、選ばれた男。しかも調べたところ――今は独身。元妻と同居しており、しかも妊娠中ではあるが、籍は入れていない。関係も良好とは言えないらしい。つまり、自分にも可能性はある。涼香はそっと身を寄せる。ほのかな香りをまとわせ、男の感覚を刺激するように。これほどの距離で、何も感じない男などいない。彰人はゆっくりと目を覚ました。大きな手で顔を強くこすり、視線を上げる。若い女は甘えるように微笑んだ。「氷室様、少し外の空気を吸われますか?お手伝いしますよ」彰人は一度、静かに目を閉じる。そして、再び開いたときには、そこにあった濁りはすでに消えていた。上着を手に取る。女が近づこうとしたが、彰人はそれを拒んだ。個室を出ると、外で雅南が待っていた。どこか言いづらそうな表情を浮かべている。会計を済ませ、二人はそのまま車に乗り込んだ。彰人は目を閉じ、かすかに息を吐く。「いつもついてこなくていい。俺は女じゃない」……雅南は複雑な表情を浮かべた。「社長が取り返しのつかないことをし
Read more
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status