わざとなどということが、あるはずもない。あんなにも青臭く、未熟な生き物なのだから。それに、結安はあれほど彼を恐れている。結安はいつだって芯の強い子だった。両親が惨死し、他人の家に身を寄せることになっても、服を売って金に換えたことを彼に見咎められた時ですら、毅然と立ち回ってみせた。しかし、昼間のあのような出来事のあとでは、本当に怯えきっていた。恋など一度もしたことがないのだ。初めての男との親密な接触が、あのような形だった。そもそも二人の間に感情の土台などあるはずもない。それどころか、彼は間接的とはいえ、彼女の両親を死へ追いやった男なのだ。肉親が惨死し、その仇と同じベッドで枕を並べている。人の心を失ってでもいない限り、どうして平然としていられるだろうか。男の胸元から、ようやく忍び泣きが漏れ聞こえてきた。どこか壊れてしまいそうな、かすかな響きを帯びて。「ちがうの……怖い、です。これからは、もうしないで……?」……当然、駄目に決まっている。彼が彼女を養っている目的は、まさにそこにあるのだから。彼女が成長し、少しだけ大人びた頃に目的を果たせば、それで終わりのはずだった。今さら彼女に拒む余地などあるはずがない。だが、途切れることなく続くすすり泣きは男の心をひどくかき乱した。背を向けることすらできず、小さな頭を胸元に預けたまま泣き続けるその姿に、どうにも調子を狂わされる。頷くわけにもいかない。かといって拒めば、彼女はこのまま一晩中眠らずに泣き続けそうだった。結局、彼は乱暴に彼女の髪をくしゃりと撫でると、その小さな身体を腕の中へ抱き寄せた。そして、気が済むまで泣かせてやるしかなかった。子供というものは、泣けばそのうち眠りにつく。結安は、長い間泣き続けていた。午前二時を回るまで、ずっと。章真は視線を落とし、腕の中の少女を見つめた。ようやく泣きやみ、大人しく身を預けている。だが、その頬を伝った涙は彼の胸元をじっとりと濡らし、不思議と落ち着かない気分にさせた。――近すぎる。近すぎるし、甘やかしすぎだ。章真は心の中で小さく舌打ちした。こんなふうに甘やかしてしまっては、これから先、少しでも気に入らないことがあるたびに泣かれ、そのたびに機嫌を取らなければな
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