夜が更けた。マンションの大きな窓辺、白いカーテンが夜風に揺れている。茉莉は琢真に抱かれて帰ってきた。少女はずっと俯いたまま、若い男の肩に顔を寄せ、甘えるように身を預けている。琢真は覗き込み、柔らかく囁いた。「まだ恥ずかしいのか」茉莉は答えず、ぎゅっと抱きついて顔を隠す。彼は低く笑い、それ以上からかうことはせず、客室のソファへと彼女をそっと降ろした。両腕でソファを支え、茉莉を背もたれとの間に閉じ込める。額から垂れた黒髪が影をつくり、幼さに艶めいた色を添えていた。「まずドレスを脱いで、化粧も落とせ。俺はキッチンで夜食を作る」そう言って彼女の細い腕を軽くつまむ。「痩せすぎだな」茉莉は唇を噛み、恥ずかしそうに囁いた。「あたし、白玉が食べたい。あんこの……」「家にはないな。けど、下に二十四時間のコンビニがある。買ってこよう。その前に、キスしてくれ」茉莉はまだ一度も自分から彼に触れたことがなかった。男は急かさず、ただじっと待つ。やがて、少女は小さく身を寄せ、頬を赤らめながら唇を触れさせた。「これで、いい?」「十分だ」琢真は微笑み、彼女の小さな鼻をつまんでから立ち上がる。ドアの開閉音が遠ざかり、部屋には茉莉だけが残された。灯りに照らされた茉莉の顔は華奢で愛らしい。抱き枕を抱え込み、唇に指を添えては、くすぐったそうに笑う。……琢真は下へ降り、煙草に火を点けた。歩きながら吸うその姿は、どこか家庭的な男の顔をしていた。コンビニであん入り白玉を一袋、さらに輸入フルーツと茉莉の好きな牛乳を選んで持ち帰る。ドアを開けると、客室から水音が聞こえた。茉莉がシャワーを浴びているのだ。胸に満ちるのは、得も言われぬ充足感——新婚を思わせる生活だった。裕福な家に育った彼だったが、家事に不自由はしない。白玉を煮て、茉莉の胃袋に合わせ六粒だけを椀に盛り、残りは自分で片づけた。果物も皿に綺麗に盛り付ける。茉莉はなかなか出てこなかった。琢真は急かさず、彼女が支度をしているあいだ、数枚の書類に目を通していた。やがて、客室から軽い足音が近づき、彼はスマートフォンを置いて顔を上げる。現れたのは、きちんと寝間着を着こんだ茉莉だった。ボタンは一番上まで留められ、洗いたての黒髪は丁寧に乾かされて、ほんのりと香りが
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