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第40話。

Auteur: 愛月花音
last update Dernière mise à jour: 2025-05-08 17:37:47
 思わない返答が返ってきたのでレイヴァンと声が重なってしまった。

今の聞き間違いだろうか? 誰が誰の恋人だと言ったのだろうか?

「今……何て?」

『だから、メアリー夫人は我が君主・クロノス様の恋人だ。現在もな』

「「えぇっ~!?」」

 またもや、レイヴァンと声が揃ってしまった。驚きを隠せない。

 だって、クロノスは時の神だ。そんな凄いお方が……エルザのご先祖様と。まさかご加護だけではなく、愛し合っていたなんて。

「いや、だがメアリー夫人は前代サファード公爵の妻だぞ」

『そうだな、表向きはな。美しく、何より神に信仰があったメアリー夫人を君主も惹かれるようになった。しかし君主も精神体のため、現世に降りることはできないし、触れることもままならない。そこでだ、君主はある人間の男を器に使うことにした。サファード公爵の初代当主がまだ伯爵だった頃。彼もまた信仰のあった心優しい若き青年だった。丁度病で亡くなった彼の身体に憑依して身体を手にする。そして生き返った彼は、その後メアリー夫人を娶り、子供を授かった。それが、サファード一族のルーツだ』

 エルザ達サファード一族って……。

「じゃあ、サファード一族の先祖って、クロノス様の子でもあったのですか!?」

『そうだ。我が君主は肉体を創ることはできないが、魂を創り出すことはできるのでな。それを利用して生まれてくる赤子の器に君主が創った魂を憑依させた。それが私だ!』

「「えっ……?」」

 またもやレイヴァンと声が揃ってしまっエルザ。クリスが、また驚くような発言をしてきたからだ。どういうことだろう?

「どういうことだ? クリス。ちゃんと答えろ」

 レイヴァンが怒ったように言うと、クリスはニヤリと笑う。

『そのままだ。私は一度憑依した経験がある。サファード公爵の息子として。その頃の母上はメアリー夫人だった。そして時が絶ち、老いた私はまた天界に戻り、今度は門番として現在に至る。今の体で2代目ってことだな。あの頃の髪色は初代当主に似て黒髪だったが。今の容姿は父上に合わせたからだ』

「に、2代目!?」

 さらっと答えるクリスにエルザ達は言葉が出なかった。

 つまりクリスも元はご先祖だったってことだろうか? まさかそんな歴史があったなんて想像もしていなかった。昔は黒髪だったんだ。

 そういえば肖像画がそうだったような気がする。今頃になって思い出してきた
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