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第37話。

Author: 愛月花音
last update Last Updated: 2025-05-08 17:23:12

 レイヴァンはジッとクリスティーナを見る。顔立ちは、どちらかと言えばエルザに似ていて、同じ髪色。しかも自分の娘なのだから不思議な気分だろう。

「ほう……エルザによく似ている。昔のエルザを思い出して可愛らしいな。クリスティーナ。私のことをパパと言ってごらん?」

 レイヴァンはパパと呼ばせようとする。しかし、クリスティーナはジッと見るだけで無言だった。どうしたのだろうか?

「パパだよ。パパ」

「うっ~まんま」

 するとエルザの方を見てママと言ってくる。

「いや……私じゃなくて」

「どうしたんだ? パパだぞ? パパ」

「ふ、ふえ~ん」

 何度も呼ばせようとするのだが、段々とぐずり出してしまう。泣かれてしまうので、レイヴァンは慌ててあやそうとする。

 すると何処からか、クスクスと笑う声が聞こえてくる。女性の笑い声だった。

 そうしたら黄金に輝き出すと人の形になっていった。姿を現したのは、同じ容姿をしており、エルザより長く腰まである金髪。そして虹色の目をした女性だった。

(えっ……この方もサファード一族なの!?)

 エルザとレイヴァンは驚いた表情をする。すると、輝きが止み、その女性の目は普通の碧眼に戻っていく。

 エルザとレイヴァンを見ると、ニコッと優しく微笑んでくれた。

(わぁ……私にそっくり。いや……私よりも綺麗だけど)

 それに見たところ年上だろう。20代後半か、30代前半ぐらいだろうか? それに何だか懐かしく感じる。

 女性は驚いているエルザ達に近寄り話しかけてきた。

「フフッ……クリス様が父親が変わるかもしれないからと、クリスティーナ様に情報を教えなかったので父親として認識していないのでしょう。時期に認識すると思いますわ」

「父親だと……認識させていない? あの野郎は」

 女性の言葉にショックを受けるレイヴァン。ボソッと怒りを露わにしていた。

 女性はそれを見てクスクスとさらに笑っていた。

「あの……あなた様は?」

「あ、申し遅れました。私はメアリー・サファード公爵夫人でございます。メアリー夫人とお呼び下さい。未来の皇帝陛下と皇妃様にご挨拶を申し上げます」

 ドレスの裾を上げて綺麗なお辞儀をしてきた。

(メアリー・サファード公爵夫人ですって!? ま、まさか亡くなった私のご先祖様なの?)

 衝撃的な自己紹介に驚かされた。しかし、ここは天界と現世の狭間。亡くなった方も
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     レイヴァンはジッとクリスティーナを見る。顔立ちは、どちらかと言えばエルザに似ていて、同じ髪色。しかも自分の娘なのだから不思議な気分だろう。「ほう……エルザによく似ている。昔のエルザを思い出して可愛らしいな。クリスティーナ。私のことをパパと言ってごらん?」 レイヴァンはパパと呼ばせようとする。しかし、クリスティーナはジッと見るだけで無言だった。どうしたのだろうか?「パパだよ。パパ」「うっ~まんま」 するとエルザの方を見てママと言ってくる。「いや……私じゃなくて」「どうしたんだ? パパだぞ? パパ」「ふ、ふえ~ん」 何度も呼ばせようとするのだが、段々とぐずり出してしまう。泣かれてしまうので、レイヴァンは慌ててあやそうとする。 すると何処からか、クスクスと笑う声が聞こえてくる。女性の笑い声だった。 そうしたら黄金に輝き出すと人の形になっていった。姿を現したのは、同じ容姿をしており、エルザより長く腰まである金髪。そして虹色の目をした女性だった。(えっ……この方もサファード一族なの!?) エルザとレイヴァンは驚いた表情をする。すると、輝きが止み、その女性の目は普通の碧眼に戻っていく。 エルザとレイヴァンを見ると、ニコッと優しく微笑んでくれた。(わぁ……私にそっくり。いや……私よりも綺麗だけど) それに見たところ年上だろう。20代後半か、30代前半ぐらいだろうか? それに何だか懐かしく感じる。 女性は驚いているエルザ達に近寄り話しかけてきた。「フフッ……クリス様が父親が変わるかもしれないからと、クリスティーナ様に情報を教えなかったので父親として認識していないのでしょう。時期に認識すると思いますわ」「父親だと……認識させていない? あの野郎は」 女性の言葉にショックを受けるレイヴァン。ボソッと怒りを露わにしていた。 女性はそれを見てクスクスとさらに笑っていた。「あの……あなた様は?」「あ、申し遅れました。私はメアリー・サファード公爵夫人でございます。メアリー夫人とお呼び下さい。未来の皇帝陛下と皇妃様にご挨拶を申し上げます」 ドレスの裾を上げて綺麗なお辞儀をしてきた。(メアリー・サファード公爵夫人ですって!? ま、まさか亡くなった私のご先祖様なの?) 衝撃的な自己紹介に驚かされた。しかし、ここは天界と現世の狭間。亡くなった方も

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第36話。

     気を良くしたエルザはクスッと笑うとわざと出し入れするスピードを速くする。「まっ……て……あっ……ぐっ」 耐えられなくなったレイヴァンは、そのままエルザの口に精液を出してしまった。 うっ……不味い。流石に美味しいとは言えない味だったが。 むせかえりながらレイヴァンを見ると、さらに息を切らしながらハァハァと漏らしていた。いつも達した時よりも感じているように見える。 どうしてだろうか? 涙目になっている頬を赤らめているレイヴァンを目にすると、また悪戯心に火が付きそうになっていく。まるでエルザは本物の悪女になった気分だった。「まだ終わった訳ではありませんわ」 エルザはそう言うと彼を押し倒し、上に覆い被さる。そしてレイヴァンの陰茎をエルザ自身の膣内に少しずつ挿れていく。奥に入って行くと少しの振動でもピクッと反応してしまうが、ゆさゆさと揺らしながら上下に腰を振るう。「あっ……んんっ……」 声が漏れるのを我慢しながら腰を揺らすと胸も同じリズムで揺れている。 レイヴァンはエルザの両手を重なり合うように繋いでくれる。そして唇を嚙み締めるように声を押し殺していた。しかし、しばらくすると耐えられなくなったのだろう。 身体を起こすと、エルザの口を強引に塞いできた。舌を入れてきて、絡ませるような深いキスだった。その間も腰は動いている。「んんっ……ふっ……」 唇が離れると甘い吐息と、声が漏れてきた。「エルザ……んっ……」 レイヴァンは、エルザの名前を呼びながらも、また唇を塞ぐ。腰の動きは激しくてなっていく一方だった。お互いに限界に近づいていく。 するとレイヴァンはエルザを後ろに押し倒し、さらに激しく打ち付けていく。「ああっ……ダメ……もう……イッちゃう」「エルザ………愛している」「わ……私も……ああっ……ダメ……イク。イッちゃう。レイヴァン様~」「……くっ……」 お互いの名前を呼び続けながらも、同時に達してしまった。 エルザは、そのまま意識を手放した……。だが、しかし。「……エルザ。起きろエルザ」 しばらく深い眠りに落ちていたはずなのに、レイヴァンの声で目を覚ました。一体どうしたのかしら? エルザは、眠い目を擦りながら目を開けると、またあの空間に連れて来られていた。 周りは何もない『無の空間』。どうしここに? しかも、今回はレイヴァンも

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第35話。

     レイヴァンはエルザを抱き締めてきた。『……苦しいぞ』 間にクリスが挟まってしまったが、レイヴァンはお構いなしに強く抱き絞める。「……もう離さない。絶対に」 思いを打ち明けてくれる。その言葉はあたたかく嬉しい言葉だった。「……はい」 やっぱりレイヴァンのことが好きだと改めて思った。  そして、その日の夜。エルザはレイヴァンの居る寝室に。入浴を済ませて、クリスを寝かせてきた。その際にベビードールに着替え、その上にバスローブを羽織る。 レイヴァンはバスローブに着替えてベッドに座って待っていた。「クリスは眠ったのか?」「はい。日中は頑張って起きていましたが、ぐっすり」「……そうか」 レイヴァンは少し照れた様子だった。エルザもドキドキしながらも隣に座る。すると手を握ってくれた。さらに胸が熱くなる。「本当だったら……嫌われても仕方がないと思っていた。いや……嫌われたくはない。だが……あんなに酷い言葉で君を傷つけた」 必死に言葉を選びながら、もう一度謝罪しようとしていた。「こんなことを望むのは自分勝手だと思っている。だが、私は今でもエルザが好きだ。その気持ちは変わらない。だから……その」 段々と頬を真っ赤に染まっていくレイヴァンにクスッと笑ってしまう。 必死に弁解をしながら、気持ちを伝えようとする姿が可愛いと思ってしまった。 あの頃には考えられないほど。いや……前よりも距離が縮んだような気がする。エルザは嬉しくて自分からチュッと唇にキスをした。 レイヴァンは驚いてエルザの顔を見る。フフッとエルザは悪戯っ子のように笑う。 すると気を良くしたのか今度はレイヴァンの方からキスをしてくれた。触れるような甘いキス。その内に舌を絡めるような激しいキスになっていく。 我慢できなくなったのか、エルザを押し倒してきた。今まではおしおきか、ご奉仕だったので変な感じだ。でも嫌ではない。 エルザは両手を挙げて求めるとレイヴァンは、またキスをしてくれた。キスをされながらバスローブを脱がされていく。胸を弄られる度にビクッと反応してしまう。唇から首筋に移動していくと、エルザはある提案をしてみる。「レイヴァン様……今回も私が」「だが……」「私がそうしたいのです」 そう言うとくるりと向きを変えるとレイヴァンを押し倒した。いつもはベッドではエルザが、ご奉仕す

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第34話。

    「だ、ダメだ。あの男は絶対にダメだ。あの男はエルザに好意を抱いていたくせに、レイナに魅了され失礼を働いた最低野郎だ」 さらに顔を真っ赤にさせて激怒するレイヴァン。(えっ? 何故そこにセイン様の名前が出てくるの? 『魅了』って、もしかしてもセイン様も?) エルザへの好意の意味が分からないが。セインが、あのような態度になったのは、どうやらレイナの能力のせいだと察する。しかしクリスは平然とした顔をする。『父上と対して変わらないだろう? 父上も『魅了』された1人なのだから。私のお陰で正常な判断が出来たに過ぎない。そうだろう?』「……ぐっ……」 ぐうの音も出ないレイヴァンは、さらに小刻みに震えていた。涙目になっており、逆に気の毒になっていく。 父と母も止めたらいいのか分からずにオロオロしている。 もしかしてエルザのためにクリスは代償を払わせようと、こんなことを言っているのだろうか? しかし、これはやり過ぎるのでは?「クリス。それ以上は言い過ぎよ。メッ」 エルザはクリスを注意をする。さすがに実の父親に言うことではないだろう。『……私は母上のために言っているのだぞ?』「それでもよ。二人は私を守ろうとしてくれたのでしょう? それが分かればいいの。これ以上レイヴァン様……あなたのお父様を責めるつもりはないわ」「……エルザ!?」 エルザの言葉に驚くレイヴァン。確かに婚約破棄をされた時はショックだったけど、それは自分を思ってやったこと。 エルザは、それに対して怒りを抱かなかった。何よりレイヴァンの心が自分に離れて行かなかったことが何よりも嬉しいと思った。 真っすぐとレイヴァンを見るとニコッと微笑んだ。「レイヴァン様。あなたを許します」 理由が何であれ、エルザはこの方を責めるつもりはない。だって……心から愛した方だから。それは今でも変わらない。 するとレイヴァンの目尻には涙がこぼれ始める。「本当に……すまなかった。エルザ」「まあ、泣かないで下さいな」 エルザはクスクスと笑いながらハンカチを差し出し、涙を拭いてあげた。きっと張り詰めていた糸が切れたのだろう。 これでいい。本心が分かっただけでも、その意味はあったのだから。 クリスは呆れたように、ため息を吐いていたが、両親はそれを見て微笑む。初めて家族になったのだと思えるひとときだった。 その

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第33話。

    「しかし、その聖女様にも困ったものだわ。どうにかできないのでしょうか? このままだと娘が可哀想過ぎます」『その心配は必要ない。すでに手は売ってある。それに、敵にする相手を間違えた。我が君主はこの件に関してお怒りだ。今回の権限は私に一任されている。そのためにも、今は父上に勝手なことをしないように、機嫌を取って見張っておけと言ってある。父上は不満そうだったが、母上を婚約破棄した代償はきっちり払ってもらうつもりだ』「……なるほど。それはもちろんですとも」 母の心配とは逆に我が息子と父は楽しそうに笑っていた。何を企んでいるのだろうか? その笑顔が何だか怖く感じる。すると、その時だった。「それは随分と私の事を悪く言っているようだな」 とレイヴァンが応接間に入ってきた。(えっ? どうして!?) エルザはクリスを抱き上げたまま、慌てて立ち上がる。父と母も。「あ、いや……そのままでいい。急な訪問失礼する。サファード公爵夫妻が娘に会いに行くと聞いて私も慌てて来たのだ」「そのために、わざわざ!?」 皇太子なのに、そのために、わざわざ自分の住んでいる邸宅に来てくれたことに驚く。 レイヴァンが少し気まずそうに眉を下げていた。心配して? それでも皇族が自ら両親が訪問した時に見計らって、会いに来てくれるなんて普通なら考えられないことだ。「……会いに来たのは……その……」『どうした? 座って話したらどうだ? せっかく私が父上に教えてやったのだ。今日サファード公爵夫妻が来ることを』 クリスが、そう言ってきた。(えっ? クリスが教えたの!?) エルザと両親は驚いた表情をしながらクリスを見る。しかし本人はニヤリと笑っていた。 言われるがまま、お互いにソファーに座ることに。エルザと母は隣りの席に。 父は私達の後ろに立つ。そして、レイヴァン様は向かい側のソファーに座った。 すると真っ先にレイヴァンがエルザ達に申し訳なさそうに頭を下げてくる。「今回の婚約破棄の事は本当にすまなかったと思っている。許してくれとは言わないが、私にチャンスが欲しい」 チャンスを与える身分ではないのだが。「えぇっ? 頭をお上げ下さい。そんな……チャンスだなんて、恐れ多い」「いや……本当なら顔も見たくないのも当然なのだ。君を守るとはいえ深く傷つけたのは事実だ」「……それは」 確か

  • 婚約破棄された悪役令嬢は、聖母になりました!?   第32話。

     それから数日後。手紙の通り、密かに葬式が行われたらしい。そして両親は、その足でそのままエルザに会いに来てくれた。玄関の外で待っていると2人が馬車から降りてきた。 久しぶりに会った母と父は、少しやつれているような気がする。エルザを見るなり、母は泣きながら強く抱き締めてくれた。「エルザ、よくご無事で。会いたかったわ」「お母様……私もです」 久しぶりに抱く母のぬくもりにエルザまで涙がこぼれそうになる。父の方を見ると、申し訳なさそうにするも、優しい表情をしていた。「お父様」と呼ぶと、2人ごと抱き締めてくれた。「……すまなかったな、エルザ。父親なのに何もしてやれなくて」「いえ……そんなことはありませんわ。2人にお会いできて凄く嬉しかったです。さあ、中にどうぞ。息子も待っていますわ」 エルザはニコッと微笑み、2人を邸宅の中を案内する。中は『ホワイトキャッスル』に似ているので驚いていた。 応接間に案内する。クリスは乳母のケイリー夫人に抱っこされていた。ケイリー夫人が挨拶をすると、すぐにクリスが口を開いた。『よく来てくれた。サファード公爵。そして公爵夫人』「クリス様!? ご、ご挨拶を申し上げます」 両親は息子を見るなり、慌てて頭を下げ始める。「えっ? もしかして、すでにご存知だったの!?」 2人の様子に驚いた。手紙のやり取りでは事情はレイヴァンから聞いて知っていると書かれていたが。 どちらにしろ、クリスは次期皇太子候補なのでサファード公爵家より身分は高い。 そのため先に挨拶するのは当然と言えば当然だが。『顔を上げろ。今は娘と孫の顔を見に来たのであろう?』「は、はい……」 父は、そう返事を返すが緊張をしている様子だった。 クリスの方はフフッと笑う。そしてソファーの方に座るように指示を出す。ソファーの近くのテーブルにはケーキやお菓子が準備しておいた。 両親が向かい側の席に座ると、エルザは反対側の席に座る。その際にクリスはエルザの膝の上を、もたらせるように座らせる。今だと支えがあれば座れるぐらいだ。 少し緊張した様子だったが、父は咳払いをすると先に口を開いた。「エルザ。手紙に書いたと思うが、事情は殿下から聞いている。お前が婚約破棄をされる前に我が邸宅に来て事情と謝罪をしに」「まあ、レイヴァン様が我が家に!? しかも謝罪だなんて」高貴

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