向かった先は、カフェテリア。この時間は授業中だから、利用するものはいない。見とがめられたとしても、アスナは「実技禁止」の身だし、俺は俺で魔法の授業で習う程度のことは既に身についている。だから問題ないだろう。「誰もいねえ」「ちょうどいいだろう?アスナ、俺はBセット。あと、アールグレイティーをポットで。食後はレモンタルトだ」「持って来いって?はいはい、ご主人様。このアスナに全てお任せください」ちょうど観葉植物の影になる特別席。アスナはそこの椅子を恭しく引き、そこに俺が座ったのを見届けると、言われたものを注文しにカウンターに向かう。その背を見送りながら、俺はエリオットについて一旦考えを整理してみることにした。ゲームのエリオットは主役なだけあり、天真爛漫な人物という印象だった。おっとりと穏やかで優し気な外見の割に頭の回転は速く、状況判断にも優れている。ここまでは今日出会った彼と同じだ。アスカが断罪されたのは、彼をその外見で「可愛いだけの取るに足らぬ輩」だと判断し、自分の優位を信じて疑わなかったから。そこがゲームと現実との違いになる。この世界とゲームの世界が違うということはもう理解している。しかし、それは「俺」と「アスナ」というイレギュラーが関わった事象に関して、だと思っていた。つまり、俺たちが全く関わることのないキャラクターは、ゲームと同じ行動をとるし、ゲームと変わらぬ人生を送るのだ。彼らが変化するのは、イレギュラーと実際に、もしくは間接的に関わりを持ったとき。しかし、エリオットが俺に向けた感情。あれはゲームの彼ではありえないものだった。彼はイレギュラーと関わることで変化したのではなく、はじめから違っていた。そこから導かれる答えは……「エリオットも……転生者?」「アスカ、持ってきたぞ」とん、と目の前にトレーが置かれる。「Bセットは運んでくれるそうだ。届くまで茶でも飲んでようぜ?」丁寧な手つきでティーカップに紅茶を注ぐ。「ほい。砂糖は2つ、だったよな?」「うむ。それでいい」「礼はいらないぜ?で、難しい顔で何を考えていた?」「アスナ、恐らくエリオットも転生者だ。もしくはお前と同種」「何故そう思う?」「お前というイレギュラーに反応した。そして、お前と同じ匂いを感じる。お前はどう思う?」俺の言葉にアスナはニヤリと
Terakhir Diperbarui : 2025-06-13 Baca selengkapnya