All Chapters of 悪役令息に転生した俺は、悪役としての花道を行く…はずだったのに話が違うぞ⁈: Chapter 61 - Chapter 64

64 Chapters

豚は豚だ

「と、とにかく!ボクが言いたかったのは、侯爵が妖精姫に異常なまでに執着しているということなのです。どうやら、過去に婚約を申し込んで断られているようなのですが……お母さまから聞いたことはございませんか?」 ふむ。父上のノロケで「マーゴットには多くの輩が惚れていた」だの「私の妻はあらゆる男から憧憬の生刺しを向けられていた」だの「熾烈な争いを勝ち抜いたのが私」だのと聞いたことがある。そういえば「侯爵家の阿呆が権力にものを言わせ『妖精姫は私のものだ』と戯言を抜かしていたのでな。思い知らせてやった」とも言っていたな……もしやそれか? 一応確認してみると、アスナもエリオットも額に手をあて首を振った。 「絶対それだろ……」「それですね……どう考えても……」 よし、纏めてみよう。 「つまりは、その豚は恐れ多くも母上に懸想し、母上の実家である伯爵家よりも格上であることから無理矢理に母上を娶ろうと画策してそれを自慢げに吹聴したあげく、実質王国最高権力者に等しい父上にあっけなく返り討ちにされた。それでも未練がましく母上に執着し、図々しくも父上への逆恨みを一方的に募らせていた。母上は父上が公爵家にガッツリと囲い込み守っているから手が出せない。そこで学園という治外法権の場にいる私で過去の恨みを発散しようとした、というわけか?」 こうして口にしてみると…… 「下らん!実に下らん!要は自分に魅力がなくクソだったから振られただけだろうが!父上と豚を並べてみろ!誰だって父上を選ぶだろう!誰があの豚と結婚したい?身分意外は底辺も底辺。容貌はもとより、人格も下劣極まりない男だぞ?」 吐き捨てるように告げれば、エリオットが「あのー……」と手を上げた。 「一応言っておきますが、学生時代の侯爵は……豚ではな
last updateLast Updated : 2025-06-25
Read more

汚らわしいにも程がある

単に権力欲におぼれた豚だと思っていたが、想像よりも酷い内容に頭が痛くなりそうだ。そんな俺に、エリオットが申し訳なさそうにおずおずと切り出す。「……あの……非常に申し上げにくいのですが……続きが……」「「まだあるのか?!」」思わずアスナと俺の声が被ってしまった。権力を手にするため、という分かりやすい筋書きが、初恋拗らせ逆恨みストーカーだったというゾッとする事実が分かったのだぞ?母上の私物を集めているだけでゾッとするのに、それよりも言いにくそうに言うこととはなんだ?!「……非常に聞きたくない。少し落ち着かせてくれ」大きく深呼吸をする。この上更に酷い内容だったら、俺は確実に奴を殺る。いっそその方が早いし気持ちがいい。一切の憂いを絶てるし、世の中からゴミも減る。いいことづくめだ。いや、もういいんじゃないか?焼き払えば罪なき者にも被害が出るかもしれないが、直接殺る分には問題ないだろう!と、椅子に座ったままの俺にアスナが後ろから椅子ごと抱き締めてきた。抱き締める、と書くと愛情表現のようにもとれるが、ギリギリギリ、と音のしそうなこれは……「おい!何故俺を拘束する?」「話を聞き前にアスカの身柄を確保しておく方がいい気がする」チッ。勘のいい奴め。無理に解くのは簡単なのだが、俺も話の途中で飛び出さない自信がないのでとりあえずこのまま話を聞こう。「……アスナ様、絶対にアスカ様を放さないでくださいね?あと、アスカ様、これはあくまでも侯爵の行動からボクが推察した話であり、確定ではありませんから。そこだけはご了承ください。それと、ボクはこの件に一切関係ありませんので!!いいですか?ボクは無関係!」必死か!そんなに不味い内容だということか。「いいだろう。お前は無関係だ。では話せ」「あの……その秘密の部屋には、妖精姫様のものが沢山集められていたわけなのですが……」「それは先ほど聞いた」「………その中にアスカ様のコーナーが……」ガタン!!「クソ!アスナ、放せ!というか、お前も来い!焼き払うぞ!放さないのならば、遠隔で……メギ…」「ああああ!!ダメだって!やめろっ!それ隕石落とすヤツだろうが!被害甚大すぎっ!!」渾身の力で口をふさがれた。簡単な魔法ならば無詠唱でいけるのだが、さすがに伝説クラスのメギナとなればそうはいかない。しかし
last updateLast Updated : 2025-06-26
Read more

父上、キレる

「リオ、お前は馬車を拾って校門前で待て。俺は学園長に休みの報告をしてくる。……3日あれば足りる、か?アスナ、お前はレオンに公爵邸に来いと伝令を頼む。巻き込むぞ。あいつが居れば後の処理が格段に楽になる。面倒ごとは押し付けてやろう。よし、行け!」「ええー?3日ですか?!ボク、入学した初日なんですけど……っ」エリオットが何やらわめいているが、知るか!こっちは今この時にも、豚が俺や母上の写真に何かしらしているかもしれないのだぞ?どちらが優先かなど語るまでもあるまい。「後でどうとでもしてやる。さっさと行け!」「あのさ、今授業中じゃね?レオンのクラスに殴り込めって?」「婚約者の精神的貞操の危機なのだ。仕方あるまい。『アスカの命令だ。学園長の許可は得ている』と言えばいい」「はあ?精神的貞操の危機……まあ間違いでは……ない……か?俺の戻りが遅かったら先に行け。後で追いかける」「分かった。頼んだぞ!」後は振り返りもせず学園長室に殴り込……乗り込んだ。ノックと同時にドアを蹴り飛ばす。「失礼する!学園長はいらっしゃるか?」「うわあ!な、な、なんだっ?!」「アスカ・ゴールドウィンだ。私と、私の従者アスナ・ゴールドウィン、本日A‐2に入ったエリオット・クレイン。そして王太子レオン・オルブライト。私の精神的貞操の危機に対処すべく、本日より3日間の休学を申請する。場合により延長する可能性もあるためご承知おきを。以上、可及的速やかな対処を望む。急いでおりますゆえ、異論は認めぬ。では、失礼する!」返事も待たずに飛び出した俺を、学園長は茫然として見送ったのだった。廊下を滑るように疾走すれば、授業終了のチャイムが。教室から次々と生徒たちが廊下に溢れ出てきた。「え?!あ、アスカ様?!」チッ!邪魔だな。「道を開けろ!」前方に向かって威圧を放てば、面白いほどさあっと左右に人が別れた。俺に近い数人は腰を抜かしてしまったようだ。申し訳ないが、緊急事態なのだ。許せよ。「……どうされたのでしょう?」「何かあったのかしら?」ざわつく生徒たちを残し、生徒の間を一瞬のうちに通り抜ける。「感謝するぞ!」学園長室に向かってからここまで5分。戻るころには馬車も準備できているだろう。はたして、校門前にはエリオットと馬車がスタンバイしていた。「あ!ア
last updateLast Updated : 2025-06-28
Read more

父上、キレる2

平日だというのにいきなり客を連れて戻った俺に、家人は大騒ぎだった。 「アスカ様?どうされたのですか?何かございましたか?」「バート、彼はエリオット。クレイン伯爵の息子で私のクラスに遅れて入学してきた。彼がある恐ろしい情報を私に与えてくれた。父上に報告する必要がある。すぐに父上を呼んでくれ。あと……母上の気をそらせ。どこかに連れ出して欲しい」 最後の言葉は小声で伝える。バートは俺の様子でただ事ではないと察したようだ。素早く使用人に指示を出す。 「マーゴット様にはアスカ様が戻られたことは内密に。温室に新種の花が咲いたことをお伝えし、そこでのティータイムをお勧めするのだ」「かしこまりました」「ご主人様に、アスカ様が重要な話があるとお伝えしろ。そして第二ダイニングに。」 ここで改めてバートはエリオットに向き合った。 「ご挨拶が遅れ申し訳ございません。ようこそお越しくださいました。私はこの屋敷で執事をしております、バートと申します。」「ボクこそ突然失礼いたしました。エリオット・クレインです。エリオットと」「では、エリオット様。客間へご案内させて頂きます。主人が参りますまでしばしお待ちくださいませ」 バートが先導しようとするのを片手をあげて止めた。 「ああ、いい。私が案内するから。バートは父上の所に頼む。その方が早い」 執務中の父上は、バートでないと動かないだろう。 「ありがとうございます。ではそのように」 素早く、しかし美しい礼を残してバートが去ると、エリオットがガクリとその場に崩れ落ちた。 「は
last updateLast Updated : 2025-06-29
Read more
PREV
1234567
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status