「さあみんな! 朝御飯だよ!」 四方院本邸の敷地内にある桜夜の私邸に、少女サイカの声が響き渡る。本来この私邸はすぐに任務につけるようにと用意されたものだった。しかし今や桜夜の私邸というよりは、彼の押し掛け妻たちの家と化してしまった。不死身の魔女の討伐に実質成功した段階で彼女たちは自由の身となった。どこでもすきなところにいけるようになり、当初の契約も破棄されるはずだった。 しかし彼女たちには行く宛がなかった。もちろん桜夜を頼れば、寮のある四方院学園に入れるくらいはしてくれたかもしれない。とはいえそんな知識のない3人が思い立ったのは、このまま桜夜のお嫁さんになろうというものだった。そうしてハウスキーパーがやるはずの家事を3人で分担し、甲斐甲斐しく桜夜の世話を焼いた。 桜夜もなれない環境に最初は戸惑ったが、もうなれてしまった。だが、だからこそ思う。このまま彼女たちを自分の懐に入れてよいものかと。どこかで突き放すべきではないのかと。食卓につきながら、数日前に兄と慕う四方院家次期宗主候補の1人である若き天才、四方院 一(しほういんはじめ)との会話を思い出す。◆◆◆「いったいなにを悩んでいるんだい?」「それは……」 紅茶の入ったカップを桜夜の前に置きながら、一は微笑む。「あんなにかわいい子たちなんだ。受け入れてあげればいいじゃないか。それともタイプじゃないのかい?」「兄さんでもそんな下世話なことを言うんですね」「そりゃあ私だって人間だからね。そして君も人間だ」「僕は……」「大丈夫。君は人間だよ。確かに、おばあさまは君の瞳の中には化け物がいるといった。確かに、君は鳳凰と契約して病弱な身体を捨てた。だけどやっぱり人間だ。血も涙もながれ、そして失うことを恐れるちっぽけな人間だ」「兄さん……」 一は笑う。「だからね、桜夜。あの子たちが大切だと思うなら、失いたくないと思うなら、中途半端はやめて自分の心と向き合いなさいな」◆◆◆(自分の心、ねえ) スープを飲みながら難しい顔をしていたのだろう。サイカが不安そうに尋ねてきた。「あのお口に合いませんか? やはり和食の方が……」「ああ、いやいや、おいしいよ。ただ……」「ただ?」「いや、なぜ君たちがここまでするのかなって。君たちを助けるという契約は終わっただろう?」 サイカは少し怯んだが、ホムラとリオ
Last Updated : 2025-04-24 Read more