Semua Bab PSYCHO-w: Bab 41 - Bab 50

87 Bab

30.疑いの祝宴

 ルキのプライベートルーム。 未だ点滴をしている蛍はルキの息がかかった一般の病院へ転院扱いとなる。美果と行った課外活動で足を滑らせ唐竹が刺さったという診断で押し通す。蛍も同意した。 大学にも口裏合わせと多少の御礼も含めて、移動には時間がかかっていた。 今頃、結々花も駆けずり回っていることだろう。 ルキと美果は再びここに戻ってきたが、昼に映画を観ていたスクリーンは片付けられ、空調もベッドメイクもしっかり整えられていた。 そして大きな窓の側。 小さなアンティーク調のコーヒーテーブルが置かれていた。 向かい合うように座る二人。 白いアクセントクロスに、シャンパングラスともっきりがおかれていた。「枡で出すなんて最高」 テーブルの側には数種類のグラスのはいったキャビネット。その上にアイスペールにはいったシャンパンが冷えていた。「熱燗の方がよかったかい ? 」「折角だし、木の香りを楽しむわ」「あいつはね、ガタイは強そうなんだけど。こういう気遣いの方が得意みたいなんだ。面白いだろう ? 」「スミスって人 ? そういえば、ゲームの時も説明が丁寧だったし、眼鏡のお兄さんより威圧感も無いわね。 いやぁ……そんな事より、あのさぁ。別にソファで飲んでも変わんないんだけど……。なんであんたとカップルのディナーみたいな絵面で向かい合わなきゃなんないのか……」「美果ちゃん、飲む前にそういうの良くないよ……もー」 部屋から見える景色は既に夜。 コンテナターミナルの外灯と、遠くに見える漁船や海岸沿いのクレーンの誘導灯の妖しい輝き。 確かに旅行中の恋人同士と言っても過言では無い落ち着いた空間だった。「さぁ、いただこうか。遠慮なくどうぞ」「ええ、ありがとう。折角だし、酌くらいするわよ。このシャンパンでいいの ? 」「ああ、ありがとう」 お互い相手の酒を注ぎ合う。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-01
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31.サイコパシー

    もっきりを鷲掴みした美果の視線が鋭く釣り上がる。「なにか疑ってるなら、眼鏡の奴なんじゃない ? 」「椎名 ? 何故 ? 」「だって、本来イベント中は誰も入れちゃいけないんでしょう ? なのに最終的にわたしを船に入れたし、あんたに会うまで、わたしが来たって情報は警備の黒服以外知らなかったじゃないの。その場であんたに連絡入れればいいじゃない」「そうだけど。それにしたって、椎名は無いね」「ふーん。言い切れるんだ。あの側近二人を相当信用してるのね。    なんか意外。あんたみたいな人って、部下でも簡単に使い捨てにするのかと思ってた」「する時はするよ。椎名とスミスは俺の地雷を踏まないだけ」「わたしは踏むかもよ ? 」「その口振りじゃいつかそうなるかもね」「ええ。でも、あんたを敬ってお喋りする気なんてわたしには無いからね。地雷踏んで殺されるのも許さない」    美果は取り付く島もない様にルキに暴言を並べていく。しかしまだアルコールは回って無いはずだ。「……美果ちゃん。今回、勝利したけど……気が済んだかい ? 俺にはとてもそう見えないんだよねぇ」「さあね。わたしも分からないの。 勝利した気がしないのよ。    これって何 ? なんであんたなんかと酒飲んでるのかも分かんない。顔見てるだけで病みそうだわ」「酷くない ? 」「……あんた、本当に寂しい男に見えるわ」 刹那だ。 ルキの笑顔が一瞬だけ凍る。「はは。俺が ? そんなふうに見える ? 」「ええ」「こんなゲームをしてるからかな ? 偏見だよ ? 」「違うわ。そういうんじゃない。 あんたは自分をサイコパスだと称するでしょ ? ケイくんを自分と比較して話してるじゃない ? それは何故なの」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-02
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32.サイコパスの証明

   ルキは素直に美果の言葉を聞き入れるが、それでも蛍がサイコパスではないのではないか……という不信感は拭え無い。それに対し、美果が反論するのは何故なのか、ルキはその答えには至っていない。「なるほど。『共感の欠如』か。それもサイコパスの特徴ではあるもんね……。それでも、俺は納得がいかないかな」「あんたが正に、絵に描いたようなサイコパスよね。  新興宗教の教祖みたい。口先だけで人を丸め込んで、気に入らない者は衝動的に殺す。ケイくんを気に入ってると言いながら、自分の望まない……ケイくんがサイコパスじゃなかったら、用済みなんでしょ ? 」「そうかもね。たまにうっかり斬っちゃう時はあるけど、カタギさんにそこまではしたことないよ。     ケイも余計なことをしなければ、家に帰して接触しない様にするしね」    警察に逃げ込んだり等と、騒ぎを立てた参加者の末路が、蛍が見た飛び降り自殺の女性だ。だが、蛍の性格上、警察に通報するなんてことは無い。     しかし美果には、蛍が安全に家に帰宅し、ルキと二度と会わないで済む生活をするビジョンが見えない。蛍がサイコパスである事に確信を持っているからである。「ケイくんも筋金入りのサイコパスよ。  まず、ご遺体で何やらするなんてことが、『良心の欠如』よ。加えて遺族のことを考えれば『共感も欠如』してる。父親に気付かれても続けるのが『衝動性』。  サイコパスの特徴の中で、ケイくんがなにか当てはまらない事ある ?   唯一、あんたみたいな『減らず口』だけ持ち合わせてないだけ」「その『減らず口』はサイコパスにとって大いなる武器さ」「世のサイコパス全員が全員じゃないわ。なんでもそういうのって、統計をとったデータの中の割合じゃない。全員じゃないわ。     共感、良心が欠如してる……そんなケイくんが他人のプロフィールだけ見せられて「この中で誰が死にたいと言いますか ? 」と質問したところで、分からないのよ。理解が出来ないの。他人に興味が無いから。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-03
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33.PSYCHO-w 【We】

 穏やかな空気だがスピード勝負だ。 ルキは空いたグラスを置くと、そこへ手際よく美果が酒を注いでいく。美果は一瞬だった。真新しく控えめなデザインのネイルの手で、口元を豪快に拭う。「早……。最高どのくらい ? 」「数えたことなんて無いわ。新しい瓶も開けて置くわね。こんなのすぐよ」「……うん。フルーティーなのに日本酒の重さはそのままで深みがある。いつも椎名が酒を選んで仕入れるんだ」 二杯目。ルキが 互いの酒を注ぐ。「こういうのって味見して仕入れるの ? 」「物によってはね。有名ブランドの銘酒なんかは味見しないよ。問題は埋もれているような天才から見つける幻の一滴だ」「へぇ。あんたを飲み仲間にしたら、毎回いい酒が飲めそうね」 三杯目。 美果が注ぐ。「一気飲みはよくないっていうけど、人によるわよね〜」「後でガタが来ない為って事もあるんじゃない ? 美果ちゃん、毎回そんな飲み方してるの ? 身体壊しちゃうよ ? 」 四杯目。 ルキが注ぐ。「酒くらい飲めないとね。わたしの好きなタイプ、豪快に飲む人だから」「美果ちゃん、昼は別のこと言ってなかった ? 」「いいえ ? 酒強くて、体毛ごわっごわで、筋肉ムキムキで髭が逞しいマタギみたいな人」 五杯目。 美果が注ぐ。「筋肉……までは部下にもいるけど、流石にマタギでは無いなぁ」「いやいや、あんたの黒服から男を紹介しろってんじゃないわよ」「だってさぁ。今どきいる ? そんな男性」「県内にも居るわよ ! 多少、お歳は召してるけど」「晩婚になりそうだね」「……う……。晩婚は、お互い様よね ? あんたそんなんで女に好かれるとでも思ってんの ? 」「えー !? これでもモテる方なんだけれどなぁ〜 ? 」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-04
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34.PSYCHO-w 【double】2人のサイコパス

「あの医者め ! カルテ改ざんで行き場が無くなったところをルキ様に拾われた恩を !! 」『どうした ? 』「スミス ! ルキ様が医者に毒を盛られた ! すぐに全員で確保に迎え !  解毒剤を用意させるんだ  ! くれぐれも殺すな」『なんだと !? わ、分かった ! 』 その時、医者はまだ蛍の医療コンテナで作業していた。 蛍の容体が急変したら自分が疑われる事を理解していた医者は、鉱物由来の劇薬を選んだ。その特殊な薬物に乳糖とでん粉を混ぜ、錠剤加工したものを処方していた。    一錠で致死量に至るものではない。蓄積性毒物という性質で、一度に致死量を投与する必要は無いのだ。ゆっくりゆっくり……体内に蓄積し続ける毒で、数日かけて殺すつもりだった。    しかし、早々に蛍に勘づかれたのだ。 老医者は蛍がピンピンしている事で、何とかならないかと点滴やら注射器に細工を試みるものの、今の時代である。新品の医療既製品に細工をするのは難しく、苦戦していた。 このままでは蛍が一般の病院に引き継がれてしまう。それまでにどうにか、梅乃に指示された通り症状を重くしたかった。最悪、食べ物などに混入させてもいい。とにかく目に見えて依頼を完璧に遂行している様に振る舞いたいのだが、計画は失敗に終わったのだった。蛍はピンピンしている。    コンテナの入口が無数の足音で埋め尽くされ、騒がしさに蛍が目を覚ました。「涼川  蛍、身体に異変はないか ? 」「ああ、アレね。初日しか飲んでないからなんともないよ」「そうか。    おい ! 殺すなよ !? 地下の拷問部屋へ連れて行け ! 」 スミスと共になだれ込んできた黒服に医者は連行された。 その後、ルキは解毒剤を無事手に入れ、更に美果に盛られたのが一錠だけという量の少なさにより、大事には至らなかった。 これがもし一撃で殺せる猛毒だとしても、美果は躊躇いなく飲ま
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-05
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game-3 1.双子とピアス

 物心がついた頃には、いつも知らない男が家に来ていた。「あっ……。あぁ〜…… !! 」 そして毎日、子供たちは客と母親の行為が終わるまで、部屋の隅に立たされた。「ガキ共 ! ちゃんと見てろよ ! 」「……はい」「んうぅ ! はぁぁ……あ、あー…… ! 」 不快。  恐怖。  母親という事以上に、知らない男が母親を突き刺している絵面が倒錯的過ぎて、子供達の頭が考えるのを止めろとブレーキをかける。 行為が終わり客が帰ると、金を数え終わった母親が舌打ちをした。「全く。これじゃろくな生活も出来ない。  ほら ! これでハンの所に行って、鶏を持ってこい。一番ボロなのを着ていけよ」 母親に渡されたのは穴だらけの竹籠だ。  二人いた片方の子供がそれを受け取る。  どちらも同じ背丈、同じ顔、同じ性。  ルキは双子で生まれた。  英語圏だが、アジア圏内。  その土地の国籍を知ったのなど、もう少し経ってからだった。  劣悪な家庭環境。学校や自宅学習など行かせて貰えるはずもない。周囲も哀れに思いつつも、曖昧に済ませられていた。何よりこの双子は産院で生まれた後、家周辺から殆ど出たことが無かった。  右のベビーピアスが兄のルキ、左のベビーピアスが弟のルイだった。「あんたは一緒に行くんじゃないよ ! 包丁を研いでおきな。夕食用に捌いておくんだ。  一時間後にまた客が来るよ ! 相手はあんただよ ! 」 いつからか、もう思い出せない程昔から。  ルキ、ルイの二人の幼子を、母親は客を取り働かせていた。  前回は客の乱雑な扱いに、歯を立ててしまい殴られた。数時間止まらない鼻血。それでも一時間後には別の客が来る。従わないと死ぬほど蹴られる。ストレスか暴力か、いつも血尿だった。「包丁は朝研いだから……食べ物を探してくるよ」 母親は煙草を咥えたまま返事は無かった。  事情に口出し出来ない隣人夫婦。ハンと言う老夫婦でいつも食べ物を持
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-06
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2.恐怖の来訪

「ルイ。あんたはここに残りなさい」 残される事に意味は無い。ルイでもルキでも、どちらでもいいのだ。  母親はベルトを持つと、躊躇わずに何度も飽きるまで振り下ろす。  痛みで蹲り、失禁するほど叩かれても、もはや呻き声すら出さなくなる。  二人とも死なないのを知っている。死なない程度に鞭打たれる事を知っている。理由など考えては駄目なのだ。自分たちはそういうもの。そう生まれたのだと言い聞かせる。  寝室に二歳の自分たちの写真がある。  キャンドルの立つテーブルの上、ルイもルキも満面の笑みで顔にクリームを付けて笑っている。  少なくとも、生まれた頃からこうでは無かったはずだった。  しかし既に記憶には鬼のような母の姿しか残っていない。  初めて男に差し出された時の恐怖と痛みが、どうしても忘れられない。眠れない日が増える。そんな時は双子の片割れと抱き合い、お互いを守るようにくっ付いて眠った。  意味の無い母親の折檻が終わると、ルキがルイを部屋まで運ぶ。「いつもより短く済んだ……」「この後、お客と会うからだね」「バンダホテル……風呂に入れるね」「うん」 ホテルまで出向く仕事は風呂に入れる事もある。だが、いくら綺麗なお湯をかけてもまた着るのは同じ穴のあいた臭う服だ。「服も洗っちゃうとか」「そんな暇はないよ」 この時、双子は七歳。  人生が大きく動く。  客とホテルを出た後、母親とルイ、ルキは外で客の背を見送った。  それが済むと母親はキョロキョロと、次の客になりそうな男を物色して歩く。  バンダホテルのそばの道路を一本越えると、そこは自分たちの生活とはかけ離れた別世界だった。  近代的な通り道。  建物、通行人、車……全てが自分たちの住む家とは違った。三人は祖父の残した一軒家に住んでいたが、生活水準はスラムに住む者より遥かに下回っていた。 三人がバンダホテルを一周した頃、大通りで一際目立つ高級ホテルの前に一台のリムジンが停まる。「うわ……なにあれ。長……
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-07
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3.ルイ

 しばらくすると、ルキが戻ってきた。  全身血まみれだった。「ルキ ! 」「ルイ ! どきな !   ルキ、やったかい ? 」 ルキが小さく頷いた瞬間、ルイの全身が床に崩れ落ちた。取り返しがつかない一線。もう自分とは繋がれない気がして。「今日は……おばさんは居なかった。留守だったんだ。だからおじさんだけ……」「よし ! 連絡してみましょ ! 」 母親は狂喜乱舞するように、恐らくあの男に連絡を入れ始めた。「ルキ……こんな事するなんて……」「あいつら見ただろ ? 周りにいた子供さ。  俺達と同じ事してても、身なりもいいし血色もいい。客前に出されても、きっと身体に痣なんかも無いはずさ。動きで分かったろ ? 健康なんだ。  いい暮らししてる」 ルキは母親と名も知らぬ特殊な紳士とを天秤にかけていた。「殺しなんて、どうって事なかったよ……これで今の生活が終わるなら ! 」「ルキ……そんな。僕を置いて行かないで ! 」「ルイ。さよなら……俺は行くよ」 数日後。  朝早くに迎えに来た『付き人』を名乗る男達に、ルキはあっさりと連れられて行った。「う……うぅ……」「行った行った !   ふぅー。二人分も稼ぐのは容易じゃないのに、全く……なんでボンクラが残ったもんだか。  ほら、十分もすればあんたの客が来るよ !? 準備は出来てるのかい !? 」「ルキ……ルキィ……」 怒鳴られたところで、もう戻らない。  半分になってしまったルイは涙をポロポロと零しながら、自分の指で丁寧に準備を始める。  気付いてる。  本当は気付いてる。  自分の母親がおかしいのも、ルキの言ってる事が現実である事も。  利き手でゆっくりゆっくり拡げながら、もう片手でシーツをキツく握る。昨日まで眠れない夜を共に過ごした片割れ。  今夜からはもう居ない。「おう ! やる気満々じゃねぇか
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-08
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4.怨み

「…………ルキ…………」 戻らない。 もうルキは戻らない。 どうして殺された ? 条件が違ったのか ? 何かあったのか ? 何も分からない。 ルイは納屋に行くと、大きな鉈を研ぎ始める。砥石に流れる山の湧水。その水音と砥石に刃物が摩耗するスシュッと言う音。集中力だけに支配される脳。 ルイが自分だけの世界に没頭出来る時間。 これが刃物研ぎの時間だった。 錆び付いていたはずの大きな鉈が、大剣のように重厚で、カミソリのように斬れ味のいい刃に仕上がる。 ルイは部屋にルキの首を移すと、シーツに包んでベッドで共に横たわる。 この時。 ルイの何かが──歪んで、崩れて、無くなって──生まれた。「ルキ。……なんでだよ……。なんでこんな事になったんだよ…………」 ガチャリと言う音がして、ルイはするりとベッドを這い出る。「またいらしてね」「少し高ぇよ」 行為が済んだ客と母親が談笑しているのが聞こえる。 母親と客が部屋から出てきたのだ。「必要ならもう一人付けられるわよ」「息子だろ ? 俺は男は……」 部屋から出てきた男がルイを見て固まる。「息子って、コレか…… ? 女にしか見えねぇ。ま、まぁこれなら……ゴクリ……」 下卑た笑みを浮かべる男に向かい、ルイが躊躇いなく鉈を振り下ろした。「オベーーーーーーっ !!!!  」 一撃で脳天を割る。 血を吹き出し倒れる客を跨ぎ、頭の方へ移動し客の頭蓋から鉈を引き抜こうとする。「ぎゃあぁぁ !! 何してんのよ !! 」「あ…&h
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-09
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5.ルイが消えた日

 次の日の正午。 一目見ただけでも忘れない、豪勢なホテル。そこに、ルキを買った紳士のリムジンが横付けされた。 ルイはフリルの付いたポーチからキャンディを取り出すと、驚くほど大胆に接近する。 少年たちを連れた男。 近くで見れば、呆れるほどによく分かる。 並の企業経営と言う枠を超えた者なのだろう。車も服も、これまでルイが目にしたこともないような上質な物だ。子供でも分かる程の生活水準の高い男。 しかし、でっぷりとした樽のような腹に、黒いスーツ。さながらペンギンのようで、車から這い出るにもお付の少年たちに引き起こされ、ぴょこぴょこと踊るようにバタついていた。 ルイはその姿が可笑しくて仕方がなかった。「おじさぁ〜ん」 声をかける。ルイを見たペンギンは、なんとも不思議な面持ちで首を傾げた。「ん。あ〜、どこかでお会いしたかな ?  おや ? どこだったかな…… ? まあ、いい」 そういい、ルイに札束をぶつけた。「持って帰れ。着慣れない服を着てても仕草ですぐ分かる。俺は慈善事業する良い奴だからな」「…………」 ルイはこの時、気付いた。 昨日の電話。 母親が話していた下っ端みたいな連中の後、自分と話した男。『好きなだけ殺せ』と言ったあの男の重量感のある声を覚えている。 このペンギンでは無い。「…………」「おい、どうした ? 道を開けろ」 この男はルキを殺していない。 だとしたら、ルイの話した男はまだ現れていないということだ。「好きなだけ……殺せ……か……。じゃあ仕方ないかもね」 シャッ !!  ルイはドレスの裾から鉈を取り出し、車のそばにいた運転手を鉈で凪ぐ。駆ける。純白の
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-06-10
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