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All Chapters of PSYCHO-w: Chapter 31 - Chapter 40

40 Chapters

20.変態

「美果ちゃん ! 美果ちゃん美果ちゃん !!  あっははは ! 同じだよ !! 美果ちゃんもケイに拘ってるじゃない ! 」「こ、拘りじゃない ! わたしはケイくんを心配して……」「違うね」 ルキは美果を見据えると、キッパリと言い放つ。そして悪意のある笑みで語り始めた。「俺は思う。君、ケイの事なんか気にしてないだろ ?  君が住むのは自己肯定感の世界だ。  ここに来た本当の目的は復讐さ。前回、君を評価しなかった俺への恨みが動力源。ケイを助けるなんて口実だろ。  美果ちゃんも、俺たちの仲間に変態したんだよ。だから、自分を俺に認めさせないと気が済まない。 自分の興味のない相手なら二度と会わなくていいのに、どうしても俺が許せなかったんだね ? 」「……っ」 何も言い返せなかった。  美果は蛍と関わり、蛍を知れば知るほど深みにハマってしまったのだ。  歪んだ世界は一度触れると、時に、飲み込まれてしまうほど魅力的に溺れることがある。「あぁ、そだそだ。絵をおしえて一ヶ月くらい経つんだっけ ? 知ってるよ ?  美果ちゃん、ケイの絵ってどうなの ? よくシリアルキラーの描いた絵の展覧会やってるじゃん ? あんな感じ ?  それとも……その様子だと、もっとイイの ? 」「…………」 蛍が描く絵はどれも個性的だが、芸術的センスが飛び抜けて目立つ訳では無かった。  だが、独特な狂気が存在した。 アートセラピーと言うカウンセリングがある。上手く自分を表現出来ない、または説明が上手く出来ない感情をケアする目的で絵を描くのだ。 美果の専攻では無いが、その絵を見た時。自分に関しての話をあまりしない、蛍の中にいる獣が、ようやく美果に可視化出来た瞬間でもあった。  そしてその奇妙なドス黒い感情をぶつけたスケッチブックに、とてつもない魅力を感じてしまったのだ。「ねぇ、美果ちゃん。教えてよ」「貴方になんか教えたくも見せたくも無い。触れさせないわよっ !! 」「くすくす。そんなにムキにならなくても !! 美果ちゃん、君は蝶だったんだね ! さぁ、その羽の色を見せてご覧よ。  この俺にお願い事をするんだ。君が俺に差し出せるものはあるの ? 」「え ? ……えと、お金は……」「まずオークションを一旦、止める事。  ケイを家に帰す事
last updateLast Updated : 2025-05-22
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21.代償

結局、何度果てようがルキが美果を犯している間、自分が性的快楽を暴発することは無かった。「もう ! 死ぬ……死ぬっ !! 」 半分飽きが来ていたルキは全てを自動化に任せ、美果を放置していたが、これ程の生き地獄は無いだろう。身体をくねらせながら、快楽を何とか抑えるように藻掻く。拘束されていない尻だけが自由だが、動けば動くほど刺激が強くなるだけ。 ルキは本を片手にぼんやりと椅子に座り、鏡に写った自分の眉を撫でていた。「……〜〜〜 !! いやぁぁぁ !! 〜〜〜……………………」 悲鳴を上げ続けていた美果が遂に気を失ったところで我に返った。「あらら、またか。 美果ちゃ〜ん、起きて」「……うぅ……ん、うぅぅ、ふあぁぁあ !! 止めて !! 止めてってば !! 」「そうだ。いい事思いついた」「止めてーーー !! もういやぁぁぁ !! 」「ねぇ、美果ちゃん」「これ抜いてっ !! 早く早く早く〜〜〜っ !! 」「いい事思いついたんだ ! 聞いてくれる ? 」「聞く !! 聞くから早く !! やだ !! またイっちゃう ! 」「ん ? ああ。じゃあ最後に一度イったら話聞いてよ」 考えられない程大きな、美果に突き立った物体をルキは最後にグリグリと押し当てる。「聞く ! 聞くってば……あぁっ !! あぁぁぁぁっ !! ………………」「……しまった。美果ちゃん ? 起きてー。ほら、まだ話してないんだけど。 駄目だな。準備を先にするか。ん〜、結構広がってるから入るかな」 詰まっていた物を引き抜くと、今度は小さな振動物を丁寧に目一杯詰め込んでいく。「この俺が刃物一本使ってないんだから感謝して欲しいくらいだよ……」 切創性愛のルキにとって、流血のない相手になんの感情もなかった。サディズムの本能でやってみたはいいものの、女性のカン高い悲鳴はどうにも心地良いものでは無かった。□□□□□□□□ ゲーム開催日から三日目の早朝。 蛍はようやく目を覚ました。 場所は恐らくコンテナ船の中だ。部屋の作りが病室では無い。広さを考えると、ここもコンテナの中だろう。 壁は凸凹した金属板。 いつもテレビやトラックの荷台等で見知った、一般的なコンテナの作りだ。 白いベッドにサイドテーブル。その上には冷水と日
last updateLast Updated : 2025-05-22
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22.蝶と囁き

「少し遊ぼうと思ったんだけど、流石にぶち込んじゃ可哀想だしね。玩具で代用してたんだけど、俺が暇だしさ本末転倒だよね」    ルキがしょうもなさそうにくすくすと笑いながら、手元の安っぽいプラスチックのスイッチをカチカチと動かす。「ああっ !! 」    更に響く振動音と共に美果の身体が蛍に倒れ込む。「はぁ、はぁっ ! また ! だ、駄目 !! 」 恐らく始まったばかりの状況じゃない。  美果の中には既に玩具がひしめき合って仕込まれていた。蛍の寝巻きにまで流れる愛液。  背後からルキが手を伸ばし美果を強引に起こし、足と足を絡ませ固定する。美果の締め付ける部分を見せびらかすように、そのまま広げて蝶を開く。  独特なフェロモンの香りが蛍の鼻をつく。  もう玩具では物足りな気な美果の秘部が誘い込むかのように蜜を垂らしていた。「……止めろよ、美果は関係無いだろ」「しょうがないじゃん。美果ちゃんが勝手にこの船に押しかけて来たんだから。  ……まぁ、なんで場所を知ってたかは敢えて聞かないけどさ。  ほら、美果ちゃん。俺、疑われちゃうからなんか言ってよ」 美果は既に堕ちている。  今にも飛びそうな快楽の中、トロんとした瞳で蛍を見つめる。「ケイくん、わたしは大丈夫だから……あっ ! んあぁん !!   ルキ、もうこんな弱い振動じゃ……早く終わらせてっ ! 」「ちょっとちょっと。俺に命令しないでくれる ? 」 一気に中の異物を引き抜くと、今度はルキの長い指が侵入し、限界まで口を拡げる。「や、あっ……んん ! 」「ほら、見てよケイ。美果ちゃんの内側、すっごい綺麗な色してるだろ ?   中はぁ……ん〜まぁまぁかな」 蛍の目の前、淫らに動くルキの指。  美果は耐えることなく快楽に身を任せるだけだった。蛍は尋常では無い美果の肉欲と脱力感に、何らかの薬物投与の疑いをすぐに察した。「あ〜あ、指だけで腰
last updateLast Updated : 2025-05-22
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23.復讐の経緯

 時は蛍がコンテナ船へ乗った日まで遡る。 結々花は図書館へ戻り、その日も来館した美果を多目的ルームに案内した。    しかしそれから一時間もしないうちに美果がカウンターへ現れた。通常、この図書館施設は出入口の受付で監修室や小体育館を借りるのだが、多目的ホールをメインに使用している美果が図書館内の結々花のカウンターに来るのはなにか事情があるはずなのだ。「美果ちゃん、帰るの ? 」 浮かない美果の表情に結々花も躊躇ってしまう。全てに勘付いている。接触をしてくると言うのは関わりたいからだ。 この子は真実を知りたいのだろうと思う。「落ち着かない……。  わたし、まだ連絡先交換してなくて……なんでこんな便利な物を忘れてたんだろ。言ってくれれば良かったのに」 スマホを手にカウンターのポトスを見つめる。「あー……。あまり自分の内情を話す子じゃないもんね」 蛍と美果の間柄がまだそんなものなのか……と、結々花は意外だった。美果の方が蛍に絆されているように見える。美果も面倒見が良く、上手く蛍を飼い慣らしていると推測していたが、それも違う。 蛍と美果は図書館を一歩出れば、それぞれプライベートを共にすることは無かった。せいぜい帰宅途中に画材を買う時くらい共に歩く程度。「あ、ごめんね。ちょっと……」 結々花の胸元でヴーヴー音を立てる物体。 時刻とタイミング。 結々花の組織の者だった。人的接触型SPY  ヒューミント。これはターゲットと接触し、近しい間柄になり潜り込むスパイである。 結々花はその場から走ると、廊下でそのコールを取った。「ねぇ ! どうなったのよ !!? 」『ルキは船上 ! これでも俺、情報早ぇから ! 』 流暢な日本語。そして若い男性の印象。 結々花はこの相手の顔を知らない。しかし長年に渡ってMの周辺を洗う中で、
last updateLast Updated : 2025-05-23
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24.スケッチブック

「一度、負けてるから、どうしても勝ちたいの」「美果ちゃん……貴方は生きて帰れたのよ ? 」「わたし、今度こそ勝つ。その為に行くの」 何を言っても聞かない意思表示。 人助けではなく、勝つために行くと言う。 こういう人間は止められない。今までルキのゲームに関わった者の中にも、多く存在したのだ。「どうしてこうなっちゃうの……いつもいつも…… ! 」 あの狂気の世界に依存してしまう。平凡な生活を送っていた者ほど、ルキと言う男を求めてしまうのだ。「一体、ルキの何がそうさせるの ? 」 山本  美果は変わってしまった。しかし結々花は一つ間違っている。美果を変えたのは蛍である。蛍のスケッチブック。それだけ美果にとって劇薬だったのだ。「……無駄死にだけはやめて……」「しませんよ」「……どうしてこんな事に……。貴女を巻き込もうなんて、考えてなかったのよ !?」「結々花さんも言ったじゃない……。グレーなこともするって」 結々花は心底参った表情のまま、早退のタイムカードを切った。「勝算があるのよね ? 」「負ける気は無いですけど」 □□□□□□ 蛍と梅乃のコンテナゲームが終了してから三日。 早朝、蛍の医療コンテナに美果とルキが訪れ密かな戯れがあった後に戻る。 時刻はゲーム開催、四時間前。 シャワールームから出た美果が真新しいバスローブを羽織り、ウェーブした黒髪をドライする。 鏡に写った背後には椎名とスミスが、ルキと共に古い映画を観ながら談笑していた。 ここは船上にあるルキのプライベートルームだ。コンテナ船の全体が見渡せる、広い窓ガラスの高級ルームとなっていた。 暫く唸っていた美果のドライヤーが止まる
last updateLast Updated : 2025-05-24
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25.探る

 ルキがやや押され気味の会話。 美果には取り付く島がない。 村長が大酒飲みうわばみと会話をしているようだ。「ねぇ。あんたさ、ケイくんが斎場で……シテるところ……本当に観たの ? 」 グラスを口元へ寄せるルキの手が止まる。「気になるかい ? ケイが普段やってる事に」    ルキは意外だとばかりに美果に笑いかける。 だが美果はルキのザラついた気配を見逃さなかった。「……。 再会してからずっと思ってたけど。あんた、嘘が下手よね」「んー ? 初めて言われたかな」「そう ? わたし、昔から人の感情とか嘘に敏感でね。分かっちゃうの。うまく説明出来ないけど、第六感みたいな感じなのかな。 ケイくんがしてる事に興味は無いけど……あんたがそれを観たとは思えないのよね」「どうしてそう言い切れるの ? ケイは俺の質問の全てに否定しなかったでしょ ? 」「あんた、ただ自分の想像の範囲だけで言ったんじゃないの ? それにわたし、朝は途中で退室したから最後まで聞いてないわ」 これは図星だった。 ルキは蛍ならご遺体をどうするかだけを想像して、カマをかけただけだった。カメラを仕込んだなどと言うのは大嘘。 蛍の反応で悟ったつもりのルキだったが、美果は全く別の情報を持っていた。 蛍がスケッチブックに描く、ある部分の共通点だ。 それは、ご遺体に刻まれたシンボル。 蛍は行為の後、気に入った死者には星座マークを体の見えない部分に損壊を与える。その死者の誕生月の星座のシンボルだ。    恐らく型があり、その通りに皮膚を焼き焦がす。 そしてその写真を撮り、後から部屋でスケッチブックに描く。完成した絵の隅には、ご遺体の名前、生年月日が書き込まれ、更には試食部位や味の違いが記されている。 美果はそれを絵で見ていた。 蛍から美果への&he
last updateLast Updated : 2025-05-25
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26.美果の人選

 予定通りの観覧者とルキの挨拶。 『今宵、新女王誕生となるのか ! 挑戦者 山本 美果の登場です !! 』 ルキの紹介と共に、美果の観ていた目の前のモニターがOFFになる。 進行は蛍の際と寸分違わぬ体制で行われた。 ここからは観覧者達がスクリーンを見上げる時間だ。 美果は蛍と同じ条件コンテナの並んだ船室まで案内されていた。    ただ一つの違いは、スミスが美果に公開したホワイトボードの獲物。その中に、大きな赤で『‪✕‬』が付いている者が一人。 美果はスミスから蛍と同じ説明を受ける。「この中から一人……選べるのね ? 質問してもいい ? 」「お答え出来る範囲であれば問題ありません」「ケイくんは誰か……別の子と対戦してたけど、続行不可能で負けたのよね ? 」「はい。山本 美果さんの勝利条件は、現地点で勝利している山王寺 梅乃の42分32秒を下回る事です。 涼川 蛍は獲物を逆上させ、気絶するまで殴られてしまったのでタイムはカウントされません」「42分……。それより早く『死ぬ』って言わせるのか……。 この、‪✕‬が付いてるのはケイくんの獲物 ? その梅乃さんの獲物なの ? 」「この‪✕‬は涼川 蛍の獲物です。江川  春樹と言う獲物は賞金を手にした後、帰宅途中のタクシー運転手に情報を漏らしましたのでルール違反となりました。 山王寺 梅乃の獲物はこちらです。ご覧になりますか ? 」「いいの ? 」 スミスがファイルから、山王寺グループの闇金で首の回らなくなった福田のプロフィールを美果に差し出す。「山王寺さんは昏睡状態からのスタートでしたので、獲物をご自身で選べないのを考慮し、悪い意味での顔見知りを御用意させて頂きました」「そうなんだ……」 美果は福田のプロフィールを流し見ると、再び
last updateLast Updated : 2025-05-26
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27.美果 スタート

 冷たい扉がガシャリと閉まる。 美果は一度深呼吸をし部屋を観察すると、梅乃と同じくカメラスタンドを手にした。 構造の理解力が早いのか、手早く分解していく。「この女性は確か……涼川  蛍と同期で参加した者でしたな」「芸大生よね ? 」 これに観覧者達は期待にざわめいた。 美果はまずカメラの一番長い支柱を選び、早苗を床に転がしてスカートを捲りあげる。下着を脱がせ、自分の身に付けていたシャツを裂き脚を開いて固定する。 次に、分解したスタンドのバリを見つけると、それを使いマットレスの布を綺麗に剥いで行く。 一枚の白い布。 これを器用に折りたたみ穴を開け、外したカメラのコードで縫うように成型し、何とか白衣を作り出す。襟まである精密なものでは無いが、小学生の給食着のような簡素なスタイル程度にまで寄せていった。ブラジャーのストラップを外し左右繋げ、ウエストにベルトとして巻き付けることで縫い目になった布部分を重ねて隠す。スレンダーな体型が幸いしたようで、布は足りた。 更に余り素材の中から細い支柱二本を見つけると、それを交差させる。マットレスの針金で中心部を捻り、ハサミのような物を作り出す。 スパイラルパーマのかかった髪を綺麗に纏め直し、残りの素材を折り畳んだマットレスの上に神経質なほど真っ直ぐ並べて行く。 やがて早苗が目を覚ました──美果の「研究員だ」と言う嘘を信じてしまった。 常連の観覧者は皆分かっていた。 パニックになった者はすぐに目の前にあるものを信じてしまう。そして会話の出来る存在だと分かると、必ず生き残る手段を交渉してくるのだ。 □「う……ん……。あなた…… ?     !!? な、何これ ! ここは…… ? どこなの !? 」 目を覚ました水沢  早苗は予想通り取り乱し、命乞い混じりに泣き喚いた。
last updateLast Updated : 2025-05-27
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28.堕天

 更に騙され借金が二千万。 住宅と新車のローンも残っている。 それを身重の自分をこんな得体の知れない場所に、金と引き換えに売られたなど考えたくもない。「……信じられない ! 信じないわ !  何かあるでしょ !? 誓約書とか、承諾書とか !! 」「事務所にはあると思います。 ですが、すみません。作業しないとわたしもここから出れないんですよ」 美果の策。 共鳴。同調。誘惑。「実は……その……。わたしも開業に失敗した医者で……。五十代まではここでタダ働き同然なんです」「はぁ !? 」 なんとも仕方なさそうに、力無く笑って見せる美果。「あ、あなたも閉じ込められてるって事 ? 失礼だけど……わたしより若いわよね ? 」 早苗はその言葉ですぐに落ち着きを取り戻し、耳を傾けようと反応を示してきた。美果も演技を続ける。「父が開業医でしたので、そのまま研修して自分の病院を隣接しようかと……でも、甘い考えでした。いざやってみると、資金繰りが厳しくて。 ここは健全な製薬会社の研究所とかじゃないです……。闇バイトみたいなもので、所謂無認可の施設です。 わたしも最初は捕まっちゃって……。医者だから命があるようなものなんです」「具体的に何を研究する施設なの ? 」「初めは風邪薬とか伝染病の特効薬とかって言われてたんです。でも、最近は体の構造を把握して、肉体改造する錠剤型機械の治験ですよ」「機械 !? 何それ ? 」    怪しげだと言わんばかりに顔を歪める早苗に、美果は頷いて微笑んで見せる。「そう、凄いんですよ ?     身体にメスを入れずに、小さな機械が治療してくれる優れものらしいです
last updateLast Updated : 2025-05-28
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29.決着

 手の拘束を引きちぎった早苗は美果に掴みかかった。しかし、美果は冷静に自分を見下ろすだけで、怒りや困惑の色はない只々、自分が大人しく従うのを待つだけ。    早苗は覚悟を決め手を離し、菩薩のような穏やかな微笑みを美果に浮かべた。「わたしと引き換えで構わないわ。 赤ちゃんを助けて。人工保育器に入れられる段階まで、なんとかわたしの身体をもたせて欲しいの。 あとは子供と引き換えでいい。わたしは死んでもどうなってもいいから、子供を生かして欲しいの。 お願い ! 」    決まりだ ビーーーーーッ !!  けたたましい音に早苗も美果も肩を跳ね上がらせる。 ルキの手が終了のブザーを押したのだった。タイマーの数字を眺めて苦笑いを浮かべた。「タイムは28分46秒か。……全く母親の執念ってのは末恐ろしいね」 勝敗が決まったその瞬間、観覧者たちは「ほぅ〜」と、前回パニックを起こしていた美果を思い出し驚きの声を上げた。「板についてきたのでは ? 堕胎する所が観れないのが残念だが……」「ルキさんの選ぶ参加者は本当に楽しいわねぇ」「最初はくだらない寸劇だと思ったが、タイムが早い !! デスマスクの時と同じ子だとは思えない」    美果の作は大いに評価された。 騒がしいその部屋の裏を通り抜け、ルキはコンテナ船の下部へ向かう。「ルキ様」「椎名、水沢さんにゲーム内容を説明して、賞金を持たせたら婦人科まで乗せて行ってあげて。他に女性黒服を同乗させて。 スミス、二人を出して」「はい」「了解しました」 数回、金属音をあげると、コンテナの扉が開く。 その頃には美果は早苗の足の拘束を解き、体調に変化はないか確認していた。「何 !? 今度は何なの !? 」「水沢  早苗さん。お疲れ様でした。
last updateLast Updated : 2025-05-29
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