黄と黒が同盟を結んだ翌日、全 思風たちは机の上にある地図を囲んでいた。 地図は禿王朝全体を見渡せるものではあったが、いたるところに赤いバツ印がついている。その数たるや、とてもではないが数えていられないほどだ。「殭屍が絡んだ事件、こんなにあったんだ」 さらりとした銀の髪を揺らした美しい子供が、地図を眺めて呟く。 右隣には黄族の代理長、黄 沐阳が立っていた。彼は頷き、黄族領土を指差す。「ああ。結構……というか、ありえないぐらいあるよな。ここ一年で、こんなに起きてるなんてさ。俺もビックリしたぜ」「でも、明るみに出てないやつもあるんだよね?」 尋ねれば、彼はうんざりした様子で肩を落とした。もう一度地図を見やり、休憩と称して背伸びをする。「……報告が来てないだけで、細かなやつはもっとあると思うぜ? ただ、それら全てを拾ってったら日が暮れちまう」 関係のない情報も入っている可能性すらあるため、わかる範囲での確認となっていた。それでも数えきれないほどに起きている事件だったため、彼らは疲れを見せていく。「國中で起きてるって事はわかるけど……それ以外は、何もわからないね。どうしよっか?」 子供の視線は黄 沐阳……ではなく、左側にいる全 思風へと注がれていた。 視線を送られた彼は首を左右にふって、ごめんねと子供の髪を指に絡めていく。回答できるほどの情報を持ってはいなかったこともあり、大切な子の期待に添えなかったのが悔しいと口にした。 情報が足りない状態では迂闊なことは言えない。それが彼の答えだった。 地図を人差し指の爪先で軽くたたく。コンコンという音が響くなかで、向かい側にいるふたりを注視した。 己の向かい側には左に黒 虎明、右に瑛 劉偉が立っている。 そんなふたりは、どちらも比較的整った顔立ちをしてはいた。けれど、お世辞にも親しみやすさを感じるような柔らかさはない。むしろ厳つく、気弱な者なら|裸足《はだし
Last Updated : 2025-05-14 Read more