息子の想いを届けることに成功した翌日、|全 思風《チュアン スーファン》は、ふっと目を覚ました。 ──あれ? 私はいつの間に寝てしまったのか。……ああ、眠るなんて行為、本当に久しぶりだ。 |華 閻李《ホゥア イェンリー》という|愛《いと》しい子を隣に置くだけ。たったそれだけなのに、彼は安心して眠ることができた。そのことにほくそ笑みながら上半身を伸ばす。 「……あれ? そういえば|小猫《シャオマオ》は?」 キョロキョロと、周囲を見渡した。ふと、|廃屋《はいおく》の奥にある台所に目が止まる。 そこには愛してやまない少年が立っていた。後ろ姿ではあったが、|一際《ひときわ》目立つ銀の髪が頭部でひと|縛《しば》りされている。 いつもと違う髪型に首をかしげつつ、|華 閻李《ホゥア イェンリー》の元へと近よった。 子供の髪から|薫《かお》るのは|薔薇《ばら》か。とても落ち着く、品のある|薫《かお》りである。ふわりと|靡《なび》く銀髪は、壁の隙間から差しこむ太陽の光を受け、|黄金《こがね》色に見えた。 |全 思風《チュアン スーファン》は子供の|神々《こうごう》しさに両目を見開く。 「──あ、お早う|思《スー》。よく寝てたみたいだね。もう起きるの?」 彼の視線に気づいたようで、子供はくるりと振り向いた。昨日のように青ざめた顔色ではない。血色のよい、薄い紅色を頬に浮かばせていた。 そんな少年は、顔のところどころに|煤《スス》をつけている。 いつもは服で隠れてしまっている白い細腕や首|筋《すじ》が見え、|妙《みょう》に|色香《いろか》を|漂《ただよ》わせていた。 「|思《スー》。今、朝ごはん作ってるから、ちょっと待っててね」 「|華 閻李《ホゥア イェンリ
Last Updated : 2025-04-30 Read more