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All Chapters of 鳥籠の帝王: Chapter 51 - Chapter 60

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内戦の兆し 暗雲ありきの関所

 |華 閻李《ホゥア イェンリー》は細長い|筒《つつ》のようなものを握っていた。右手で|筒《つつ》の下腹を持ち、左手は輪になっている部分に人差し指を引っかけている。「……|小猫《シャオマオ》、それは?」  驚きながら質問をした。集めた枝を地に置き、|華 閻李《ホゥア イェンリー》の前に立った。いつものように優しい笑みを子供へと落とす。 |華 閻李《ホゥア イェンリー》は「ああ、これ?」と笑顔を浮かべた。「僕にもよくわからないんだ。去年だったかな? 花で遊んでたら偶然できて……」「使い方は知っているのかい?」「うん、知ってるよ。まあ、最初は戸惑ったけど……」 苦く笑み、|筒《つつ》を垂直に構える。  |全 思風《チュアン スーファン》は何をするのかと小首を|傾《かし》げた。|爛 春犂《ばく しゅんれい》も同様に何が始まるのかと疑問を浮かべているようだ。「これはね……こう、するんだよ」 左の指を|添《そ》えていた|輪《わ》っかを、ぐっと強く押す。すると筒の出口らしき部分から何かが飛び出した。|全 思風《チュアン スーファン》たちの間を|掠《かす》めて後ろ雑草へと向かい、瞬時にドサッという小さな音が鳴る。 |爛 春犂《ばく しゅんれい》は何事かと雑草をかき分けた。するとそこには、土気色の肌をした|殭屍《キョンシー》が倒れている。しかも頭部から出血し、|痙攣《けいれん》する間もなく亡くなっているかのようだった。「し、瞬殺……あそこに|殭屍《キョンシー》がいたのは知ってたけど……|小猫《シャオマオ》、凄いね」 彼は|冥界《めいかい》の王である。それがゆえに、死者の気配には誰よりも|敏感《びんかん》だ。当然、この場にいる|爛 春犂《ばく しゅんれい》や|華 閻李《ホゥア イェンリー》よりも優れた能力を持っている。 そんな彼にとって|殭屍《キョンシー》という片指で|跳《は》ね飛ばせる存在など、気にもとめる者ではなかったのだ。だからこそ|殭屍《キョンシー》が近くにいても動かず、平気で喋る。 その証拠に剣に手を置いて戦闘|態勢《たいせい》に入る|爛 春犂《ばく しゅんれい》に対し、彼はつまらなさそうに|欠伸《あくび》をかくだけであった。 そんな|全 思風《チュアン スーファン》が手を差し伸べるのは|華 閻李《ホゥア イェンリー》のみ。 雑草に隠
last updateLast Updated : 2025-04-24
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友中関《ゆうちゅうかん》

 |黄族《きぞく》と|黒族《こくぞく》が治める地区の|境《さかい》にある|関所《せきしょ》、|友中関《ゆうちゅうかん》。 そこは普段から結果が張ってあり、|殭屍《キョンシー》や妖怪といった|陰《いん》の気を持つ存在を弾いていた。それは周辺地域にも効果があり、|全 思風《チュアン スーファン》たちが野宿をしていた場所にまで|及《およ》んでいる……  はず。で、あった──    山のように重なっている|骸《むくろ》からは大量の出血が見られる。兵として日々を過ごしていたのか、茶色で|簡素《かんそ》な|鎧《よろい》を着ている者たちばかりだった。 なかには旅人らしき者たちもいるが、彼らもまた兵たちと同様に死している。 「……これは、全員死んでいるようだね」  腰を曲げた|全 思風《チュアン スーファン》が、近くにいる死体を確認した。 どの|遺体《いたい》も、体のどこかに|噛《か》みつかれたような|跡《あと》がある。 「多分、何らかの理由でここに|殭屍《キョンシー》が現れたんだろうね。それが一気に広まり、|屍《しかばね》の山となった」  可能性として|妥当《だろう》だろうと、|爛 春犂《ばく しゅんれい》に語りかけた。  文句を言えるほどの情報がない今、|爛 春犂《ばく しゅんれい》は軽く|頷《うなず》く以外の方法がなかったのだろう。眉を寄せ、両目を細めた。 血まみれの兵を|仰向《あおむ》けにし、|噛《か》み|跡《あと》を確認する。死した兵の開かれた|両瞼《りょうまぶた》に手を伸ばし、そっと閉じさせた。 「……この者は、首に|噛《か》みつかれた|痕跡《こんせき》があるな。……しかし謎だ」 
last updateLast Updated : 2025-04-24
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鈍い子には伝わりません

 |陽《よう》の力に包まれた札は、妖怪などの悪しき者から守るためにあった。しかしその札の中身を意図的に書き換えたりすることで、その効力はなくなる。逆に|陰《いん》の気だけが集まり、|殭屍《キョンシー》などの人に害を成す存在が現れるとされていた。   この|友中関《ゆうちゅうかん》という|関所《せきしょ》は、それが起こっている状態である。 誰が何の目的で行ったかについては不明であるものの、仕組まれた札が事件を起こしているのは間違なかった。  「先生」  長い髪を後ろで高く束ね、華 閻李《ホゥア イェンリー》は|爛 春犂《ばく しゅんれい》を見つめる。小柄で儚げな見目を|惜《お》しげもなく|晒《さら》けだすように、|爛 春犂《ばく しゅんれい》の|袖《そで》を軽く引っ|張《ぱ》った。 「この関所で死んでた兵たちは、どこの|領土《りょうど》の者か。わかりますか? 僕はそういうのさっぱりわからなくて……」  頭の上にいる|躑躅《ツツジ》、いつの間にか抱きしめられている|白虎《びゃっこ》。そして二匹に負けない小動物感を|顕《あらわ》にする|華 閻李《ホゥア イェンリー》が、|爛 春犂《ばく しゅんれい》を見上げる。 「……っ!?」  |爛 春犂《ばく しゅんれい》は固まり、声が出なくなってしまったようだ。 「せ、先生!?」   |華 閻李《ホゥア イェンリー》は、素でそれをやっていたようだ。突然|硬直《こうちょく》した彼に戸惑い、どうしたのかと慌てる。 「ねえ|思《スー》、先生がおかしくなって……|思《スー》?」  |全 思風《チュアン スーファン》に助けを求めようと、彼へ振り向いた。 
last updateLast Updated : 2025-04-24
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関所の悲劇

 大きな月が光を地上へ落とす|丑三《うしみ》つ時。逃げろと、誰が声あげた。 そこかしこから悲鳴が聞こえ、辺りは|阿鼻叫喚《あびきょうかん》を生む。 茶色の|革鎧《かわよろい》を着た兵たちが女子供を先導し、火の粉が上がる場から逃がそうとしていた。商人は大事な荷物を捨て、|一目散《いちもくさん》に駆け出す。   「──こっちだ! こっちはまだ安全だ!」  そのなかの一人、|革鎧《かわよろい》に鉄|槍《やり》を持った男がいた。彼は必死に皆を|誘導《ゆうどう》し、安全確保をしようと|躍起《やっき》になっている。そんな男が持つ|槍《やり》には、黒い|房《くさ》がついていた。 「さあ、早く中に!」  生き残っている者たちとともに三階へと逃げこみ、扉を閉める。 同じ|革鎧《かわよろい》を着た者たちとともに扉が開かないように、机などの物を重ねて廊下側へと押しつけた。  扉の外にある廊下からは、未だに悲鳴が|轟《とどろ》いている。時おりプツッという鈍い音、人とは思えぬ|雄叫《おたけ》びも耳に届いてきた。 建物の外を見れば、おびただしいほどの死体が転がっている。砂や雑草が見えていたはずの地面は|既《すで》になく、あるのは赤黒い|水溜《みずた》まりばかりであった。 行商人が乗ってきたであろう馬の頭部はなく、身体だけが転がっている。 「……っ! なぜ、こんな事に……!」  部屋の中を|注視《ちゅうし》すれば、逃げ|延《の》びた者たちが|震《ふる》えていた。女子供は泣き、農民の男たちは顔を青ざめさせている。 数名の|革鎧《かわよろい》を着た者たちは剣を手にしながら、どうしてこんなことになったのかと口々に語った。 「無事なのは我らだけか」&n
last updateLast Updated : 2025-04-24
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情報の整理

「|夢現再生術《むげんさいせいじゅつ》は、感受性の高い子供が覚えやすい術だ。もっとも、|閻李《イェンリー》のように修行すらしておらぬ者が|習得《しゅうとく》できるほど、|容易《たやす》くはないがな」   それを何の苦労もなく習得してしまった|華 閻李《ホゥア イェンリー》は、術師として優秀な才能を秘めているのだろう。 |爛 春犂《ばく しゅんれい》の口から語られたのは純粋な喜びであった。 「……さて。|閻李《イェンリー》の見たそれを確実にするために、私たちは動かねばならん。それに、どうにも気がかりな事もあるのでな」  彼らがやることは以下の通りである。   この|関所《せきしょ》、|友中関《ゆうちゅうかん》で起きた事件の真相。 |華 閻李《ホゥア イェンリー》の見た夢を元にするならば、生き残りがいるはず。その彼ら、彼女たちの行方を探すこと。  そしてもうひとつと、人差し指を立てた。 「この扉を死守していた兵士。彼はどこに行ったのか……だ」  扉の前で自らの|喉《のど》を貫いたとなれば、|即死《そくし》だったのだろう。しかし|肝心《かんじん》の扉の前には誰もいなかった。 争った|跡《あと》はあり、たくさんの|血痕《けっこん》が飛び散っている様子も見受けられる。札はたくさん落ちているため、最後の力で破いたとされるものを探すのは|困難《こんなん》であった。 「……確かに、言われてみるとそうだな。だけど|小猫《シャオマオ》が嘘をつくなんて絶対にないし」  |清々《すがすが》しいほどの言い切りっぷりである。 |全 思風《チュアン スーファン》のなかで|華 閻李《ホゥア イェンリー》という少年は、絶対的な存在だ。子供が白だと言えば、例え黒でもそう信じるのだろう。
last updateLast Updated : 2025-04-24
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崩壊寸前の理性と小悪魔の無自覚誘惑

 もしも|間者《かんじゃ》がいたのならば、それは間違いなく今回の事件に関わっているのだろう。 しかし間者がいるという証拠すらなく、現段階では|全 思風《チュアン スーファン》の想像として止まっていた。 「……間者って、誰が?」  彼の真向かいにいる子供は、きょとんとした様子で|尋《たず》ねる。  |全 思風《チュアン スーファン》は、これは予想であり確かなことではないよと返答した。 彼の頭の中にあるのは、|黒《くろ》と黄以外の第三者。|憶測《おくそく》の|域《いき》を出ていなくとも、それが一番|妥当《だとう》な答だと伝える。 「ここは|黒《くろ》と黄色、その両方が治める土地だ。そこにこんな大がかりな事をするには、どちらかの|族《ぞく》に侵入する必要がある」  旅人や、周辺地域の者もあり得た。しかし村人の場合、危険な目に合うことはわかりきっている。そのような危険を犯してまで、間者として|潜《もぐ》りこむ意味はあるのだろうか。 「深い|怨《うら》みを持っているならあり得たかもだけど……そもそもそんな連中が、こんな手のこんだ仕掛けをするとは思えないんだよね。私の経験上、そういう奴らは、すぐ行動に移すんだよ」  しかし人は予測不能な動きをするものだ。|全 思風《チュアン スーファン》の考えが|及《およ》ばぬ者もいる。ただ、|間者《かんじゃ》というものは普通の人間ができることではなかった。 それを視野に入れても、近くの住民にとっては悪いことにしかならないのではないだろうか。 「|小猫《シャオマオ》が夢で見た出来事、あれが真実であるという事を証明するためにも、私は……」 「信じてくれるのは嬉しいけど……どうしてそこまで?」 
last updateLast Updated : 2025-04-25
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魂の声

 ──これは、私が望んでいた|薫《かお》りだ。優しくて、大切にしたい。あの人の血をひく、唯一の暖かさだ。   |全 思風《チュアン スーファン》は寝ぼけ|眼《まなこ》に思考を働かせる。 「……っ痛!」  ズキズキと、頭に鈍い痛みを覚えた。頭を触ってみれば、小さなたんこぶができている。これはいったい何かと考えながら体を動かした。 「あっ、|思《スー》。気がついた? 大丈夫?」  ふと、頭上より、子供の声が聞こえる。それは|紛《まぎ》れもない、愛しい子の声だ。 けれどあの子は背が低いはずだと、頭上より届く声に疑問を持つ。まだ頭痛が|癒《い》えておらず、それのせいで|幻聴《げんちょう》がしてしまったのだろうとため息をついた。 しかし…… 「もう、|思《スー》ってば! 無視しないでよ!」  視界に銀の糸が流れた。同時に、端麗な顔立ちの子供がのぞいてくる。  |全 思風《チュアン スーファン》は、鳩が豆鉄砲を食らったような表情になった。直後、「はあ!?」というすっとんきょうな声をあげる。   どうやら彼は横になっていたようだ。さらには|華 閻李《ホゥア イェンリー》の膝の上で眠ってしまっていた。 これには普段の|飄々《ひょうひょう》さは消え失せ、顔を真っ赤にさせながら言葉にならぬ何かを発する。  ──ちょっ、えーー!? な、何で|小猫《シャオマオ》が私を|膝枕《ひざまくら》しているのさ!?   |混乱《こんらん》が頂点に達し、ついには金魚のように口をパクパクとさせてしまった。しどろもどろになりながら耳の先をどんどん赤くさせていく。 
last updateLast Updated : 2025-04-25
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花の記憶

 人の形を|成《な》した|魂《たましい》たちは何かを|訴《うった》えるように、それぞれが違う行動をとっていた。 腰の曲がった|老婆《ろうば》は涙を流しながら|震《ふる》えている。数人の兵たちは弓や剣などを|構《かま》え、ひたすら空を斬り続けている。 女子供は怯えた表情で丸まり、泣いていた。農民であろう男たちもおり、彼らは逃げるように走っている。  直後、突然動きが止まった。正確には何かに驚いた様子で、全員が一点だけを見つめている。 「……|思《スー》、これって……」 「……おそらくだけど、|殭屍《キョンシー》の|襲撃《しゅうげき》から逃げたりしてる場面なんだろうね。でも、参ったなあ」   |華 閻李《ホゥア イェンリー》を抱きよせる彼は肩から大きなため息を|溢《こぼ》した。ほどかれてうねる髪をそのままに、空を仰ぎ見る。  ここで起きた|悲劇《ひげき》、それが嘘のように晴れた空だ。太陽が|燦々《さんさん》と地上を照らし、彼の両目を細めさせる。 青空の中を泳ぐように名もなき鳥が進んだ。雲はゆっくりと姿形を変え、海のように広大な空を隠す。  地上には雑草、木々など。自然のものがたくさん生えていた。 ときおり吹く冬の風は冷たい。けれど、どこからともなく|訪《おとず》れた|花弁《はなびら》が|舞《ま》った。 「……あのね|小猫《シャオマオ》、どうやら彼らかは情報を聞き出せそうにない」  |関所《せきしょ》の中を走る|静寂《せいじゃく》を浴びて苦笑いとともに、うーんと首を|捻《ひね》る。 「え? 何で?」  |華 閻李《ホゥア イェンリー》が小首を|傾《かし》げる様は、とてもかわいらしい
last updateLast Updated : 2025-04-25
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英雄

 兵の|魂《たましい》を追いかけた先には、目も当てられぬ光景が待っていた。  人力ではとても無理だろうと思われる、壁の穴や倒された木々。そして逃げまとう人々、地に点々と転がる死体など。 |関所《せきしょ》というよりは|地獄《じごく》の単語がふさわしいほどに、|悲惨《ひさん》な状況となっていた。   『……な、何だ、これは!?』   駆けつけた男の声が|震《ふる》える。手に持っていた|水桶《みずおけ》を落としたことにも気づかぬほど、体が固まっているようだ。 両目は見開き、涙が|溜《た》まっている。 『いったい何が……っ!?』  死体に駆けよろうとしたとき、|関所《せきしょ》の壁の影から何かが現れた。 それは人の形をしている。 けれど青白い肌に、たくさん浮かぶ血管。そして黒のない白目の者だ。髪型や大きな胸部からして、女だということはわかる。けれど服はビリビリに破け、皮膚のいたるところから出血していた。 なによりも両腕を胸の位置まで上げて、飛びはねながら前へ進んでいる。 『……っ|殭屍《キョンシー》!?』  驚く同時に|恐怖《きょうふ》が|襲《おそ》う。空の|水桶《みずおけ》を|仔猫《シャオマオ》へと投げ捨てた。  |殭屍《キョンシー》の頭に|桶《おけ》があたる。しかしこの者は痛みすら感じぬ様子だ。足元に落ちた|桶《おけ》を|踏《ふ》み|潰《つぶ》す。 どこを見ているのかわからぬ視線をもちながら、頭をぐらぐら揺らした。やがて男の気配に気づくや|否《いな》や、再び飛びはねながら彼へと近づく。 『……何で|殭屍《キョンシー》がここにいるんだ!? ここには、|陰《い
last updateLast Updated : 2025-04-25
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王として

 翌朝、逃げのびた人々の行方を探していた|爛 春犂《ばく しゅんれい》が|友中関《ゆうちゅうかん》に戻ってきた。  「──そうか。そのような事があったのか。なるほどな」  合点がいったと、|焔《ほのお》を前にして|頷《うなず》く。泣きやまぬ子供の頭に手を乗せ、頬に伝う雫を布で|拭《ふ》いた。 |華 閻李《ホゥア イェンリー》はびっくりして顔をあげる。けれど|全 思風《チュアン スーファン》が子供への独占欲を|顕《あらわ》にしながら、眼前の男を睨んだ。 「気安く|小猫《シャオマオ》に触れないでもらえるかな? この子は私のなんだから」  恥ずかしげもなく告げる言葉とともに、|哀《かな》しみに暮れる子供の肩を抱く。 |華 閻李《ホゥア イェンリー》は涙を|堪《こら》えては、再び泣いた。彼に優しく抱きよせられながら、|嗚咽《おえつ》を|洩《も》らす。 「……|全 思風《チュアン スーファン》殿、あなたはどうしてそう……ああ、もうよい」  あきれしか思いつかないらしく、背中を曲げてはあきれを含む|嘆息《たんそく》をした。    そんな彼らは|関所《せきしょ》の中区で、三人揃って|薪《まき》を|炊《た》いている。|革鎧《かわよろい》を着ていた男をあの世へと送り届けるため、静かに|焔《ほのお》を眺めていた。 バチバチと音をたて、|焔《ほのお》は空高く煙を巻き上げる。数えきれぬほどの|紙銭《かみせん》が、別れのときを惜しむように舞った。 「で? 何か成果はあったわけ?」  |紙銭《かみせん》を眺めながら、|全 思風《チュアン スーファン》が|喧嘩腰《けんかごし》に問う。抱きよせていた子供を両腕でギュッとし、暖かさを味わった。|華 閻李《
last updateLast Updated : 2025-04-25
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