Semua Bab ダンジョン喰らいの人類神話: Bab 31 - Bab 40

58 Bab

31.門番の役割

 氷のせいで冷え込む中、俺と鹿間さんは炎の剣の温度に当たりながら束の間の休息を過ごした。毒液を拭ったり、水分補給をしたり……特別なことは何もない休息。それなりの時間は体を休めていたが、俺が発生させた氷は溶けだす様子もなかった。氷というよりはまるでそういった鉱石でもあるかのように、虫たちを閉じ込めて冷気を放っている。 だいぶ体力も回復してきたようで、鹿間さんが「ふぅ」と一息つきながら話を切り出す。「さぁ、水瀬君……そろそろどうかな?」「そう、ですね……」  手を握ったり開いたり、その感触を確かめる。そこに痺れや痛みといった違和感はもうない。思ったより毒が抜けるのが早いみたいで助かった。「俺は……もう問題ないです。さっきはすみません……油断しちゃって……」「いやいや、いいんだよ。ボクだって気づかなかったしね。まあこうして一掃できたんだから結果オーライってことで」 鹿間さんが改めて氷に覆われた洞窟を見て苦笑いする。この規模の現象を引き起こしてしまうのは……一応は熟練者たる鹿間さんも今まで見たことのないものだったらしい。鹿間さんは「皐月 無垢を見つけたときの次に驚いた」と言っていた。何気に鹿間さんが皐月を見つけたというのも初耳ではある。というか……見つけたって、なんだか妙な表現だ。ヘッドハンティングでもしてきたのだろうか? 鹿間さんの続ける言葉が、脱線しかけていた思考をダンジョンに引き戻す。「しかしね……最初に見たあの大きいのをあれ以来まだ見ていないのが気がかりではあるね……」「大きいの……?」「忘れちゃったかい? ほらあの……ムカデの……」「ああ……!!」 そういえばそうだ。最初に俺たちの前にちらりと姿を現したあの大ムカデ。未だその全体像すら視界に収めていないあれは……さっき押し寄せてきた大群の中には居なかった。いや……もしかしたら俺たちの目の届かないところで他の大群と一緒に凍り付いているかもしれないが……それは希望的観測というほかないだろう。「でも……隙だらけなはずなのに……休憩中、ずっと何も寄って来ませんでしたよね? それか……俺がまた気づけてないだけ……?」「うーん……いや、なんとも言えないね……。ただ……」 鹿間さんの瞳が炎の剣のオレンジ色の光を映して、暗がりに輝く。「ただ、もしかしたら……あのムカデは
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-12
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32.崩落

 扉の先には、洞窟内とさして変わらない暗闇が待ち構えていた。こうしてボス部屋に立ち入るといよいよ空気中に充満していた毒の匂いが濃くなる。それはここに来る間までに感じていたような微かなものではなく、思わず顔をしかめたくなるような刺激臭。匂いの大本がこの部屋に居ることは間違いなかった。「鹿間さん……大丈夫ですか? なんなら鹿間さんは外側で待ってても……」「いやいや、そういうわけにはいかないよ。しっかり見届けないと。それに……ボクだってそこまでやわじゃない。毒に侵されたまま戦うのなんてわけないさ」 暗闇が満ちるボス部屋は未だその全貌が知れない。剣の照らす範囲にはボスの姿はまだ見えず、先のうかがい知れない闇の中にその存在を感じるのみだ。肌に感じる圧力というか、空気の重さから……この部屋の広さが察せられる。その広さに解放感に近いものは抱きながらも……同時に嫌な感じもするのだった。 粘つくような存在感。どこか遠くにいるようでもあり、すぐ近くにもう居るかのような感覚もあった。「ん? なんだこれ……」 剣の炎が照らしだす、岩肌……。しかし、どうにもそれが異質に見える。何に違和感を覚えているのかは自分でも定かでないが……なんだろう、色……だろうか?目の前にそびえる岩肌は、洞窟内壁のそれと比べると色が黒っぽくてどこか滑らか……。まるで高価な鉱石のようですらあった。「水瀬君……これは……」 鹿間さんも、俺と同じものを見て……その具合悪そうな顔で言う。「これは……もしかすると……」 鹿間さんの言葉の続きを聞くよりも早く、”それ”自身が答えを提示してくれる。暗闇の中に、突如現れる……橙色の光。それは俺らの前に立ちふさがっている黒い岩肌に現れた。「……あ」 その橙色は、巨大な……瞳。その瞳に大きく俺たちの姿が映し出され、それに背筋に嫌な感触がぞわっと走る。 それは死の予感。ただその瞳が開かれただけで、自分たちは狩られる側だと思い知らされてしまったのだ。 まるで今この瞬間目を覚ましたかのように、オレンジ色の瞳は暗闇の中を泳いで……上昇していく。そして、次の瞬間……。「おっ……!?」「くっ……」 突如訪れる激しい揺れに俺は驚き、鹿間さんは自らの体を支えきれず膝をついた。揺れに伴って、砂塵が巻き上がる。どこか近くに岩石が落ちてく
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-13
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33.大蛇狩り

 山のように立ちふさがる巨躯、その巨木のように丸々とした胴に駆けていく。蛇は上空から狙いを定めるように俺たちを見下ろしていた。「大丈夫……水瀬君、このくらいのランクのダンジョンのボスなら……そう変わったことはしてこないはずだ」 鹿間さんは無理して走りながら言う。飽くまで先輩としてこちらを気にかけてくれるが、やっぱり俺としては鹿間さんの方が心配だった。 蛇は俺たちの接近を黙って眺めているわけもなく、しゅるしゅるとその体を地に這わせる。といっても……その巨体さゆえに俺らからすればそう状況は大きく変わらない。眼前には依然として蛇の胴が横たわっていた。高速で地を滑ってはいるが……。「こ、のっ……よくもっ!」 鹿間さんが毒のもたらす苦痛への鬱憤を晴らすかのように、その胴体に突進するとともに拳を打ち込む。その貫くような鋭利な拳打に、胴体の蛇行が一瞬止まる。衝撃から一拍遅れて岩石のような鱗が砕け、その下で痛々しく潰れた果肉のようになった赤い肉が見えた。「けっ……ダメだ、浅いな……」 鹿間さんはその一撃を放った後、すぐに離脱する。どうやら拳の通りは本人からすればいまいちだったようだ。 太陽を背にこちらを見下ろす蛇の両目。それが鹿間さんを捉え、ゆっくりと高度を下げていく。洞窟内の虫たちとは違う、明らかに意思をもった眼差しだった。「鹿間さん……今ので、狙われたんじゃ……ないんですか……?」「みたいだね。まぁ……今のボクのコンディションじゃ……弾除けとしての方が貢献できるかもしれないし、むしろ好都合かもしれないよ?」「囮にしちゃ……機動力にだいぶ不安がありますよ……」 実際、鹿間さんの足取りはかなり不安定。クリーナーとしての経験とスキルのおかげでかろうじて走れている、くらいの状態だった。「大丈夫……言ってもD級、単純な物理攻撃なら直撃しても即死はしないさ」「そういう問題でも……っていうか! それじゃああいつが毒使ってきた場合はアウトじゃないですか!」「ははは……」 毒のせいか、それとも他の理由からか……鹿間さんの判断力が鈍ってきている気がする。ダンジョン内に微量ながら常に漂っていた毒の臭気、そして現在のように開放的になる前のボス部屋に充満していた毒の臭気……。ここのボスが毒を使わないわけがないのだ。……と、それについて言及して
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-14
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34.スキル判明……?

 ダンジョンの消滅と同時に、俺たちは入口のゲートのあった位置に放りだされる。ダンジョンが消えていく間、俺は片膝を立てて座っていて……鹿間さんに至ってはずっと大の字で横になったまま。だから当然、そのままの姿勢で人間社会の日常に帰されることになる。ダンジョンに入った時刻よりは往来の多い時間だったらしく……俺たちはすぐに視線を集めた。 クリーナーという存在が周知されているとはいえ、奇異なものは奇異に映る。その視線からすぐに逃げ出してしまいたいものの、久しぶりのダンジョンだったのもあってすっかり疲れ切ってすぐには立ち上がれなかった。だが鹿間さんのこともあるので、いつまでもこうはしていられない。「鹿間さん……」「ああ、そうだね……。協会に行かないと……」 鹿間さんも鹿間さんで毒の上に無理を重ねたことが祟ってか、その顔色はかなり悪かった。ここから協会に行くには……電車に乗らないとなんだが、大丈夫だろうか……? ひとまず少なくとも健康体ではある俺は鹿間さんより一足先に立ち上がり、レインコートを脱いでインベントリに格納した。一応、当初の想定通りレインコートの下の衣服はそんなには汚れていなかった。見た目が不審者すぎるという問題点もあるが、実戦を経るとやっぱりその効果もはっきりし……それらを鑑みた末にレインコートの続投を決定する。結局最後の一押しの決め手になったのはその値段だった。「っていうか……不審者といえば……」 ようやく体を起こしてきた鹿間さんに視線を向ける。ダンジョンで”本気”を出したがために……その身なりは下着一丁だ。その鍛え上げられた肉体によりある種の見ごたえがあって不審者感は薄まっている気もするが、たぶん俺よりはだいぶ不審者度が高いだろう。「鹿間さん……服、ちゃんとインベントリにしまいましたか?」「ああ……いけないいけない、疲れちゃうとどうしてもいろんなことに気が回らなくなってしまってね……。はは……ごめんね、水瀬君……思ったよりしっちゃかめっちゃかになっちゃって……」 鹿間さんは謝りながらインベントリから取り出した服を着なおす。道行く人は一瞥こそすれ、立ち止まってこの様子を見物していく者はいない。ダンジョンなんか立ち入ったことの無い人にとっても……こういう光景はこういう光景で、案外日常の一部なのかもしれない。 その後、一
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-15
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35.残る謎

「ちょっと待ってて!」「あ、鹿間さ……」 鹿間さんは俺を置いて、慌てて協会の奥に走り去っていく。俺がそれを呼び止めようとすると、鹿間さんは歩みを途中で止めこちらに振り向いた。「鑑定系のスキル持ってる人に見てもらおうと思って!」 かと思えば、それだけ言い残してまた走り出してしまったのだった。 時刻は日没手前。学生は帰路に着くころだが、協会職員やその他社会人はまだ働いている。そんななか、忙しいであろう職員さんの手を煩わせていいものだろうか?いや、それを言うなら鹿間さんだって職員だし……その鹿間さんがいいと言うならいいのだろうけど……。 程なくして鹿間さんは若い女性職員を一人連れて戻ってくる。好奇心に突き動かされてか鹿間さんは駆け足なので、着いてくる職員さんはちょっと大変そうだった。 協会職員は主に現役を退いたクリーナーの人たちがなるものなので平均年齢は高め。しかし今回、鹿間さんが連れてきたのは若い人……。ただ、それにもちゃんと理由がある。 協会職員というのは、何も現役を退いた人たちだけで構成されているわけではない。研修を経てスキルに覚醒したとしても、回復や鑑定などいわば後方支援的なスキルに目覚める場合ももちろんある。そういった場合、まあ全然クリーナーとしてダンジョン潜りますよって人も少なくないのだが、そういう人たちの一部はすぐに協会職員として働くパターンがあるのだ。今回鹿間さんが呼んできたのは鑑定持ち、ということなら……まあそのパターンなのだろう。 鹿間さんより数秒遅れて到着した職員さんが、一呼吸おいてからこちらを見る。「こちら、水瀬君……。ボクが担当してた子なんだけど、この子のアイテムを鑑定してもらいたくて……」「はあ……鹿間さん、相変わらず人使いが荒いんですから……。まあいいですけど……」「ははは、ごめんごめん。助かるよ……」 やっぱり忙しい中急に呼び出されたためか、職員さんは鹿間さんを恨めしそうな眼差しで見上げる。鹿間さんはその針で突くような視線を柔和な笑みでいなしながら、俺の前に職員さんを立たせた。心底めんどくさそうではあるが、ちゃんと要求には答えてくれるようで関係は良好そうだ。 職員さんが目の前に立っているのに俺だけ座っているのはなんだか悪い気がして、俺も立ち上がり軽く会釈をする。俺が立った後でも、微妙に
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-16
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36.正式な初仕事へ

 翌日……。色々と片付かない問題は残るけれど、これで今日から……正確には昨日カードを渡された時から俺は正式にクリーナーだ。そういうわけで、俺は午前中から携帯の画面を睨みつけていた。「優くん?」 なぜ携帯を食い入るように見ているかというと、こうして俺でも潜れそうなゲートを探しているのだ。「おーい、優くんやーい……」 もちろんゲートを探すなんて言っても、SNSを見て目撃情報を探しているとかそういう気の長いことをしているわけではない。「むぅ……優くーん……?」 クリーナーたちは、こうしてカードを貰うと……あるアプリケーションをダウンロードすることを推奨されるのだ。 これは一般向けに出回っているものではなく、利用者はもれなくクリーナーだ。 このアプリでは、発見されたゲートの位置情報と等級がリアルタイムで更新される。それを参考に俺たちクリーナーは現地へ向かいダンジョン攻略をするというのが基本的な流れなのだ。例外的に……協会側が攻略メンバーを指定して「特定のダンジョンを攻略してくれ」と依頼を出す場合もあるのだが、まあそれは今は関係の無い話だ。 さて、じゃあそれならどうして画面を見つめてそんな難しい表情を浮かべているかというと……結局のところ俺でも攻略できそうなゲートがなかなか見つからないからだ。 ダンジョン攻略となると、現実的な話をするなら当然報酬の分配という問題が出てくる。そのため、攻略できるのであれば少ない人数で攻略してしまった方が儲かるのだ。攻略メンバーは現地で様々な条件をすり合わせ、戦力が十分だと判断したらもうダンジョンに潜ってしまう。そうなった場合、このアプリはインベントリと連携されているため、攻略隊がダンジョンに潜ったのを受けてメンバー募集中のゲートの表示が攻略中に変わる。そこまでいくとトラブル防止のため、もうそこの攻略人員は締め切りとなってしまうのだ。 で、じゃあ俺に適したゲート……つまり俺の等級と同じE級のゲートが望ましいのだが……。それは一番簡単なゲート、D級以上のクリーナーが数をこなして稼ぐために単身攻略してしまうクリーナーが少なくないのだ。だからE級ゲートは募集中から攻略中に変わるまでの時間が短い。そういうわけで絶対数は多いとはいえ、なかなか捉まえるのが難しいのだ。時々クリーナー初心者たちのために、本来攻略に
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-17
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37.ハナと倉井

 マップに示された目的地付近にたどり着くと、例の二人らしき姿はすぐに見えた。女の人が一人に、男の人が一人。二人は顔見知りらしく、ゲートから漏れる不思議な色合いの光に照らされながら何やら話しているように見えた。 二人が顔見知りとなると……途端にある可能性が浮上してくる。それはもう一人の知り合いを待っている可能性だ。そもそも二人でずっと募集中になっているゲートがそんなに長いこと見逃されることは多くないだろうし、友人を待っていてそれ以外の来訪者は断っているのかもしれない。「はぁ……」 なんだか今から断られるかもしれないのを考えると気が重くなるが、そうも言っていられない。やることやんなきゃ姉さんに顔向けできないので、迷わず歩みを進めた。 ゲート前の二人も、俺の足取りを見てか同業者と感じたようで、近づいてくる俺の方に視線を向けている。その視線を感じつつ、ゲートの前までたどり着いた。「お……キミは、クリーナー……かな?」 女性の方がやってきた俺の方を向き、明るい声で尋ねる。見れば、緩く髪にウェーブのかかった少しあどけなさの残る少女だった。たぶんだけど俺より年下、ぱっちりした大きな瞳は一般人にはないオーラというか、ある種タレントみたいな不思議な魅力を帯びていた。 それと比べると……だいぶ影の薄い、目立たない感じの男の方が柔和な声色で女性の声に答える。「ハナさん、間違いないですよ。この人クリーナーです」 男の人の方はスマホの画面を見ているようだった。ゲート周辺50メートル以内に立ち入ったクリーナーはあのアプリのマップに表示されるようになるので、おそらくそれを見たのだろう。 男の人が俺に代わって答えたとはいえ、一応礼儀として俺も重ねて答える。「はい……そちらの方の言う通り、俺はクリーナーです。マップ見たら、こう……募集中になってたんで……迷惑でなければ……」「うんうん……♪」 俺の言葉に、女性は満足そうに笑う。「もちろん! 迷惑なんてことはないよ! むしろやっと来てくれて助かってるくらい! あたしが……ハナ! で、こっちが……」「倉井です。ハナさんも僕もD級で……それでなんですけど……」 ハナさんと倉井さん。ひとまず俺を迎え入れてくれる方向性でいるようで、そこには安堵するのだが……倉井さんはなんだか気がかりなことがあるようだ。も
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-18
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38.撮影開始

 俺たちは結局、そこから四人目を待つこともなくダンジョンに立ち入った。何せ四時間も待っていたのだ、やってきたのが例え能力に不安の残るE級の俺だけだったとして、もう待つのはこりごりなのだろう。 今回のダンジョンは……。「おぉ~……きれ~……。これはきっと動画も再生回るよ~!」 ハナさんも言うように、今まであまりお目にかかってこなかったタイプの景色のいいダンジョンだった。ダンジョンって言うと何故だか……よく“潜る”って表現を使うせいかもしれないが、何となく地下みたいなイメージがある。一応、今まで当たってきたダンジョンはなんだかんだで、そういう地下だのなんだのというイメージと遠くない閉所や薄暗い場所だったが……今回ばかりはそういうものとは全く違っていた。 いい匂いの涼しい風に、瑞々しい植物の緑。木々の影と暖かな陽の光が編み出すコントラストは、心身に染み入るようだった。つまるところ……観光地顔負けの景観の良さを誇る……広々とした森だった。「いよぉーし、それじゃあさ……キミは水瀬ちゃんだから……みーちゃんって呼ぶね?」「え、みーちゃん……ですか?」「そ、だってほらさ……動画出る時実名だすのは流石にでしょ……? あたしはチャンネル名がもう実名だから、そのまま”ハナ”で大丈夫! 倉井ちゃんはカメラマンちゃんね~……」「はぁ……な、なるほど……」 ハナさんは動画を撮る上で特別必要になってくる注意点を伝えながら、インベントリから出現させた装備を装着していく。それを見て俺もインベントリからあのレインコートを取り出して、身に纏った。「うわ……みーちゃん、すごいかっこだね……」「あ、はは……」 相変わらずこの姿は……どうも見る人からの評判は良くないみたいだ。まぁそれもそうか……。しかし今回ばかりは……。「でも、ハナさんだって……その、なかなかですけど……」「えぇ~、そっかな~……? 結構かわいーと思うんだけど……」 そう、俺に限った話ではなく、ハナさんもハナさんでなかなか変わった格好をしていたのだ。やたらフリフリした感じで、どこかコスプレじみているというか……そうでなくとも動きづらそうで少なくともダンジョンには不向きな格好に見える。本人のふわふわした明るい雰囲気とは裏腹に、手に携えた武器は金属の質感むき出しのメイスだった。「むぅ……モン
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-19
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39.教育的なコンテンツ

 このダンジョンに出現するモンスターは森ということもあって植物型のモンスターが多かった。さんざん虫に苦しめられた記憶がまだ色濃く脳裏に焼き付いているため、虫系の魔物が姿を現さないことに心底安堵する。虫に好きも嫌いもなかったが、もうしばらくは見たくもないところだ。そして……このダンジョンのモンスターの傾向が植物系に偏っていることに関しては、ハナさんも安堵しているようだった。「いやぁ、ちゃんと映せそうなモンスターでよかったよぉ……。あんまりこう……動物っぽすぎたり、血がどばってなるタイプの奴だと戦ってるところ撮れないからねぇ……。」 ハナさんは凶悪な形をしたメイスでキノコ型のモンスターをしばきながら言う。その絵面はハナさんの身に纏う雰囲気をもってしても普通にバイオレンスな感じに見えるが、動画的にはまだこれでもセーフなラインらしい。 さて、こうしていざ探索が始まると思いのほかカメラも気にならなくなってくる。単純に集中しているからなのか、それとも俺がこの環境に慣れてきたからなのかは分からない。しかし、ハナさんの実力も十分にあるのもあってか、攻略自体はすごく順調だった。 こう言ってしまうとナメた発言みたいになってしまうが、俺自身にとっても……どうやらこのくらいの難易度のダンジョンは問題にならないらしく、正直だいぶ余裕を感じている。そういうこともあって、俺はあの二本の剣は使わず、あの蛇を倒して手に入れたばかりの短剣の試し切りをしていた。ステータス補正という点ではやはり普通ではないのだが、しかしクリアしたダンジョンのランクの問題か……この毒の短剣の能力自体はあの二振りの剣のように圧倒的なものではなかった。まぁあまり目立たない能力の方がこの雰囲気に合っている気がするし、それも好都合だろう。「あっ、見て見て! みーちゃん、これ……!」「ん? なんですか……これ、花……?」 戦闘の合間、ハナさんに呼び止められて茂みの中に群生する白く小さな花を見る。子ぶりながら清楚な感じで、可愛らしい花だ。それに、なんだか……。「あ……これ、ほのかに甘くて……いい匂い、ですね……」 普通に外で嗅ぐような花のそれとも違う、癖が無く、しつこくなく、それでいて瑞々しく果実を思わせるような甘い香り。そのかすかな香りを追いかけるように顔を近づけようとすると……。「おっ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-20
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40.意外なつながり

 録画停止ボタンが押される。その音を最後に、俺たちはダンジョンの外の世界に放り出された。森林の匂いから一変して、辺りは都会の匂いに包まれる。それを鼻腔の奥まで吸い込むと……嫌気がさすというほどではないが、「こっちはそういえばこういう空気だったよな……」と少しがっかりしたような気がした。「はいは~い、みんなお疲れ~。みーちゃんも倉井ちゃんもありがとね~」 ハナさんは未だ眩しい日差しを浴びながら伸びをする。ダンジョンから出てカメラが関係なくなった今でもなお、俺の呼び方は「みーちゃん」のままだった。 ハナさんはそのまま伸びを終えると、相変わらず元気な様子でこちらに話しかける。「ねね! みーちゃんさ……E級なんだよね?」「え? はい……そう、ですけど……」 その等級に似つかわしく、今日は活躍というほどの活躍もなかった。まぁダンジョンに潜るたび危険に見舞われるのでは困るので、本来このくらい安全でいいのだ。しかし、俺の等級が今更なんだというのだろう?ダンジョン入る前だって、俺のランクが低いことに関してはあまり気に留めていなかったと思うし……。「みーちゃんさ……E級にしてはぁ……なんか強くなぁ~い?」「え、あっ……そっちか……」 続くハナさんの言葉に、内心安堵する。てっきり何か悪印象を与えてしまったのだろうかと思っていたが、その逆だったらしい。 ハナさんはいたずらっぽい表情を浮かべて俺の顔を覗き込む。「ん~……」 その表情はまるで「秘密を暴いてやる」とでも言いたげな、挑戦的な表情だった。あんまり見つめられてしまうと必然的に俺の視界のほとんどをハナさんが占有してしまうことになる。ただ……コミュ障の性か、視線を合わせることはできずに斜め下に視線を逃がした。「な、なんですか……?」「いいや~、なんでも~……?」 そう言いつつも、なんだか含みのある表情。と言っても、実際に俺自身に語れるどうこうがあるわけでもないし、ハナさんが聞いて面白いようなことは何一つ俺からは出せないのだった。それでも、俺から何も引き出せずともハナさんは楽しそうにしている。「ね、さ……みーちゃんはさ、あたしたちと……もう一回、こういうことしてみる気はある……?」「え、こういうことって言うのはつまり……」「そう、あたしたちとまた……どうがとってほしいなーって」
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-08-21
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