氷のせいで冷え込む中、俺と鹿間さんは炎の剣の温度に当たりながら束の間の休息を過ごした。毒液を拭ったり、水分補給をしたり……特別なことは何もない休息。それなりの時間は体を休めていたが、俺が発生させた氷は溶けだす様子もなかった。氷というよりはまるでそういった鉱石でもあるかのように、虫たちを閉じ込めて冷気を放っている。 だいぶ体力も回復してきたようで、鹿間さんが「ふぅ」と一息つきながら話を切り出す。「さぁ、水瀬君……そろそろどうかな?」「そう、ですね……」 手を握ったり開いたり、その感触を確かめる。そこに痺れや痛みといった違和感はもうない。思ったより毒が抜けるのが早いみたいで助かった。「俺は……もう問題ないです。さっきはすみません……油断しちゃって……」「いやいや、いいんだよ。ボクだって気づかなかったしね。まあこうして一掃できたんだから結果オーライってことで」 鹿間さんが改めて氷に覆われた洞窟を見て苦笑いする。この規模の現象を引き起こしてしまうのは……一応は熟練者たる鹿間さんも今まで見たことのないものだったらしい。鹿間さんは「皐月 無垢を見つけたときの次に驚いた」と言っていた。何気に鹿間さんが皐月を見つけたというのも初耳ではある。というか……見つけたって、なんだか妙な表現だ。ヘッドハンティングでもしてきたのだろうか? 鹿間さんの続ける言葉が、脱線しかけていた思考をダンジョンに引き戻す。「しかしね……最初に見たあの大きいのをあれ以来まだ見ていないのが気がかりではあるね……」「大きいの……?」「忘れちゃったかい? ほらあの……ムカデの……」「ああ……!!」 そういえばそうだ。最初に俺たちの前にちらりと姿を現したあの大ムカデ。未だその全体像すら視界に収めていないあれは……さっき押し寄せてきた大群の中には居なかった。いや……もしかしたら俺たちの目の届かないところで他の大群と一緒に凍り付いているかもしれないが……それは希望的観測というほかないだろう。「でも……隙だらけなはずなのに……休憩中、ずっと何も寄って来ませんでしたよね? それか……俺がまた気づけてないだけ……?」「うーん……いや、なんとも言えないね……。ただ……」 鹿間さんの瞳が炎の剣のオレンジ色の光を映して、暗がりに輝く。「ただ、もしかしたら……あのムカデは
Terakhir Diperbarui : 2025-08-12 Baca selengkapnya