「えっと……鹿間さん、これどこに向かって……」 あの後、ひとまず退院ということになってから数日……俺は鹿間さんの走らせる車の助手席に乗せられて、どこかを目指していた。俺の腕にはインベントリの腕輪がまだついている。その腕輪の銀色の曲面が映し出す俺の顔は、相変わらずしけた面だった。 鹿間さんはハンドルをさばきながら、俺の言葉に答える。「今向かっているのは……京都、つまり……新首都だ。ボクたちが普段通い詰めている協会は飽くまで支部、本部があるのは京都だ。水瀬君の状況は……少し特殊だからね、ちょっとしたテストみたいのものをしに行くんだ」「テスト……ですか?」 再び俺に訪れる”試される”瞬間。あの後、病棟で鹿間さんとあの謎の二振りの剣について話していた時に分かったことなのだが、俺は……スキルには覚醒していなかった。順当に考えれば、あれらの剣は俺のスキルによって呼び出されたもの……というのが最も自然だったのだが……現実はそう簡単に真相に至らせてくれないらしい。そうして、俺がスキル覚醒していないとなるとどうなるかというと……つまり、俺はクリーナーとしての資格がないということになる。それは同時に”普通の人間に戻る余地がまだある”ということでもあるが、そっちは俺にはあまり関係ない。 夏山さんやみんなの無念を背負って……というわけではないけれど、俺はもう今更またあの何者でもない、人間の失敗作みたいな奴に戻って姉さんに甘えて生きていくつもりは無いのだ。だから、あの死線を超えてきて尚……この状況に緊張感を抱いている。色々と言葉で取り繕うのをやめて、バカ正直に言ってしまえば……俺はクリーナーになりたいんだ。「……」 膝の上で握っていた手のひらに力がこもる。熱のこもった手のひらのうちにはじっとりと汗がにじんでいた。「まあ、そう緊張する必要は無いさ。君はあの晩……確かな戦闘能力を見せたんだ。ボクが直接見たわけではないけど……君のインベントリの記録と、いくつかの目撃情報がそれを裏付けている。結局……あの剣の出どころもはっきりしないと、君を”普通の人間”として解き放っていいのかも分からないしね。何をどう心配しているのかは君の顔を見ればわかる。確かなことは言えないが……現段階では君は特例的にクリーナーになってもらう可能性の方が高いよ」「そう、ですか……」 そう
Terakhir Diperbarui : 2025-08-02 Baca selengkapnya