臆病?苑は鏡の中の自分を見つめ、薄い唇の端を引き上げた。臆病なんかじゃない。ただ、素面なだけ。でも、これからはもう軽々しく酒を飲むのはやめよう。特に、蒼真のいるところでは。どうして、あの男によこしまな気持ちを抱いてしまったのか。もしかして、寂しすぎたから?苑は、自身のしなやかな身体に視線を落とし、小さく首を振った。そして、シャワーの下へと向かい、蛇口をひねる。温かい湯が頭上から降り注ぎ、意識をはっきりさせると同時に、身体に残った酒の匂いを洗い流していく。心身ともに、すっきりとした。だが、バスルームのドアを開けた苑は、思ってもみなかった。蒼真がまだ部屋を出ていかず、ソファにゆったりと腰掛けているではないか。しかも、本を読むでもなく、携帯をいじるでもなく、まるで苑を待っていたかのようだ。苑は淡々と一瞥しただけで、ウォークインクローゼットへと向かう。その背後から、蒼真の声が響いた。「少し話そう」まだ話すの?「これ以上話したら、午後になってしまいます」階下の人たちに、蒼真と昼も夜もわからなくなるほど睦み合っているなどと、誤解されたくはなかった。どうせ、いつかは別れるのだから。だが、相手はあの蒼真だ。彼がやろうと決めたことを、誰が拒めるだろうか。苑の足は、やはり彼の言葉に縫い止められた。「君はどうして、俺と佳奈が想い合っていると決めつけている?」「俺が彼女と寝たのを、君は見たのか?」「それとも、彼女が元気だった頃に、君に何か言ったとでも?」「あるいは……」蒼真は二秒ほど間を置いた。「あるいは、これはただ、俺から離れたいがために君が作り上げた、妄想に過ぎないとか?」どうしても話す気らしい。初めてのことではないが、苑はクローゼットへ向かうのをやめ、グラスを取りに引き返した。だが、持ち上げた瞬間、苑ははっとした。グラスにはすでに水が注がれており、しかもぬるま湯だった。ここは二人の寝室で、誰も入ってくるはずはない。つまり、彼が用意してくれたのだ。グラスを包む苑の指に、わずかに力がこもる。視線を蒼真の顔に落とすと、その鋭い顔立ちは、立体的で、それでいて清朗だ。ふと、「完璧な顔」という言葉が頭をよぎる。彼は本当に綺麗だ。昨夜、
더 보기