「くしゅん!」苑はくしゃみをした。健太がこちらを見た。「寒いのか、それとも花粉症か?」「誰かが私の噂をしてるのよ」苑はサンシェードの下でのんびりと炭酸水を飲みながら、琴音のSNSの投稿を思い出していた。「ねえ、人を殺すのは犯罪だけど、動物虐待はどうなるのかしら?」健太は、鉄板の上でじゅうじゅうと音を立てる肉に目をやった。「肉を食うのが犯罪だなんて、聞いたことねえな」彼は苑の言いたいことが分からなかった。彼女も説明はせず、ただもう一言だけ付け加えた。「よく、そんな酷いことができるものね」「エビにはエビの、魚には魚の命がある。そいつらの使命は、美味い肉を俺たちに提供することだ」健太と苑は、話が噛み合っていない。苑は深呼吸をし、気にするべきではない光景を無理やり頭から追い出した。そして、本題を尋ねる。「ネックレスの件、どうなりましたか?」「あれは今田家のものだ。正確に言えば、今田和樹のな」健太は鉄板の上の肉をひっくり返しながら、苑をちらりと見た。「あいつ、あの日、ずいぶん面白いことしてくれたよな。競り落とすって言っときながら、土壇場で取り消しやがって」苑は、健太の瞳に浮かぶゴシップ好きの探るような色を無視した。「今、ネックレスはどこに?」「噂じゃ、あの日の晩にはもう彼の手元を離れたらしい。どこに行ったかは、マジで分からねえ。知りてえなら、本人に聞くしかねえな」健太も、万能ではない。「あなたと和樹さんは知り合いでしょう。あなたが聞いてくれてもいいし、不都合なら私が出向いてもいい。でも……」健太は少し間を置いた。「この件は、姐さんが直接あいつに聞いた方がいいと思うぜ。ネックレスはまだあいつの手元にあって、他の誰かが買ったってのは、ただの芝居かもしれねえ」苑も、その可能性は考えていた。あの夜、和樹はずっと会場にいて、自分と琴音の争いを見ていたのだ。彼は、このネックレスに続きがあることを、きっと分かっていたはずだ。だとしたら、そう簡単に手放すわけがない。「ええ、分かりました」苑は、焼肉の香ばしい匂いにお腹を鳴らしていた。「もう、食べられますか?」健太が串を一本、手渡してくれた。「火傷すんなよ」焼肉、焼き魚、焼きエビ、そして焼き芋にジャガイ
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