寺は相変わらず線香の煙が絶えなかったが、改修されたようで以前より荘厳に見えた。苑は大殿の前に立ち仰ぎ見た……かつて呪いの言葉が刻まれていたあの大仏はすでに修復され金ピカに輝いており、もはや昔の痕跡はどこにも見当たらない。「変わりましたね」苑は軽く喃々と呟き、なぜか心に一抹の寂しさを感じた。蒼真は苑の顔の寂しげな表情を見て、もともと握っていた手をさらに強く握った。「良くないものは消し去るべきだ。もともと呪いなど存在しない。人の心の方が鬼より恐ろしい」二人は寺の小道をゆっくりと歩き、時折通り過ぎる僧侶が合掌して一礼した。陽光が木の葉の隙間から差し込み地面にまだらな光の影を落としていた。苑の心は次第に落ち着いていき、まるでこの寺が本当に心を洗い清める力を持っているかのようだった。「疲れたか?少し休むか?」蒼真は遠くない場所にある東屋を指差した。苑は頷き、二人が東屋の近くまで来た時、不意に……苑の足が止まり瞳孔がわずかに収縮した。東屋には見慣れた人影が座っていた。その人物も彼らの視線に気づいたようでゆっくりとこちらを振り返った……佳奈?どうしてここに?しかもあんな格好で?佳奈は素朴な白い修行着をまとい髪は簡単に後ろで束ね、手には一連の数珠を持ち頭を下げて何かを黙念としていた。苑の足がはっと止まり、蒼真も眉をひそめた。佳奈は視線に気づきゆっくりと顔を上げた。彼らを見た時明らかに固まった。「苑……蒼真さん……」佳奈の声は軽くどこか窮屈そうで、その眼差しは水の如く平穏で昔のような傲慢さや敵意はなかった。苑は佳奈を見つめ、しばらくしてようやく口を開いた。「どうしてここにいるの?」佳奈は自分の服装を見下ろし苦笑した。「私……もう俗世の念を捨て仏門に入って修行することにした」佳奈の指がそっと数珠を弾き、その口調は平穏だった。「以前のことは私が間違っていた。申し訳ない」苑はここで佳奈に会うとは思ってもみなかったし、ましてや彼女がこんなにあっさりと謝罪するとは思ってもいなかった。蒼真は冷ややかに佳奈を見た。「今更懺悔しても少し遅すぎるんじゃないか?」佳奈は反論せずただ軽く頷いた。「確かに遅すぎる。だが間違い続けるよりはましだよ」佳奈は顔を上げ、その眼差
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