「俺が冗談を言ってるように見えるか?」浩平は少し困ったように言った。「詩乃、俺はそんなひどい男じゃない。あの夜はたしかにアクシデントだったけど、もう覚悟は決めたんだ」詩乃にはその意味がわからなかった。「覚悟を決めたって、どういうこと?」「あの日、目が覚めたらあなたはもういなかった。人に調べさせたら、北城に行ったと分かったんだ。北城には音々さんがいるから、あなたもきっと大丈夫だろうと思って、俺は安心してH市に残ってお父さんと交渉を続けた」浩平の低い声が、静かな病室に響いた。「お父さんは口では、俺とあなたを結婚させて、俺を我妻家の婿養子にするってなんてうまいことを言っているが、でも本当は、俺たちを跡継ぎを産むための道具としか思ってないんだ。音々さんの子は岡崎家が全力で守るだろうし、前の騒動で立場が弱くなった我妻家は、もう岡崎家には逆らえないはず。お父さんはそれを分かってるから、後ろ盾のない孤児の俺と、昔から大人に逆らえなかったあなたに目を付けたんだ」それを聞いて、詩乃はため息をついた。「なんだか私たち、すごく可哀想ね。やっぱり立場が弱いといいように扱われてしまうのかな」浩平はそう言う彼女の言葉に思わず笑えてきた。「それはお父さんや我妻家の連中がそう思ってるだけだ。俺はもう我妻家を出た。後ろ盾になる家はないけど、今まで築いてきた資産と人脈があれば、お父さんの言いなりにならないといけないってこともないから」「だったらなんで、息子を兄さんの養子に出すって、お父さんと約束したの?」「俺が断ったら、彼がそれで引き下がると思うか?」詩乃は言葉を失った。「俺がお父さんに同意したから、彼もおばあさんもあなたのことを見逃して、入江家との結婚を無理強いするのをやめたんだ。彼らにとって今は、入江家との縁談よりも、我妻家の血を引く跡継ぎの方がずっと大事だからな」それを聞いて、詩乃はようやくことの全貌が分かった。「じゃあ、私が今まで、北城でこんなに自由に暮らせていたのは、我妻家が私を諦めたからじゃなくて、あなたがとっくに話をつけてくれてたからなのね」「ああ」浩平は詩乃の頭を撫でた。「でも心配するな。もし本当に男の子が生まれても、あいつらには渡さない」「でも、渡さなかったら......」詩乃は心配そうに言った。「彼らが黙っているはずないで
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