優希は絶句した。「俺は今、独り身だ。誰とも付き合っちゃいない」哲也は平然と言った。「子供が生まれて、将来、義理の父親にないがしろにされるリスクを負わせないためにも、実の父親である俺が、最初から最後まで責任を持ったほうがいいだろう」それを聞いて、優希は眉をひそめた。「あなたは私と子供を取り合うつもり?」「俺は子供を認知したい。でも、あなたは俺に子供を奪われるのが怖いんだろ」哲也は口の端を上げて笑った。「だったら、俺たちが結婚するっていうのはどうだ?」そこまで言われ、逆に優希はきょとんとした。「どうせあなたは、小山ってやつが好きだったわけでもない。それに、池田とかいう元カレとはもう5年も前に別れてるんだろう。今のあなたは独身で、俺も独身だ。子供ができたんだから結婚する。それこそが通常考えられる選択肢なんじゃない?」優希は少し驚いた。「池田徹也」という人物は、あの時、哲也の疑いを晴らすためにとっさにでっち上げた架空の存在だ。まさか、哲也が今でも覚えているなんて。「子供のためだけに結婚するなんて、無謀すぎる」優希は哲也を真剣な顔で見つめた。「心が通わない夫婦では、子供にだって十分な愛情を注げないと思うの。それに、こういう選択肢は私たち二人にとっても大きな賭けになるじゃない」「結婚してもいないのに、今から心が通わないって決めつけるのは早すぎるんじゃない?」哲也は優希を見つめた。「俺には好きな人なんていない。だけど、あなたは......」彼はそう言いながら、眉間にしわを寄せた。その口調も、少し冷たくなっていた。「まさか、今でも海外に行った元カレのことを考えているのか?」そう聞かれて優希は唇を引き結び、黙り込んでしまった。しかし、彼女の沈黙こそが、鋭い棘となって哲也の心に突き刺さったのだ。哲也はそれで思った。やはり、優希はあの元カレのことが忘れられないんだ。なにせ、彼女がもう別れて5年も経つのに、酔って泣きながら名前を叫ぶほどの男だ。哲也は、その相手に強い興味を抱いた。一体どれほど素晴らしい男なんだ?優希に、ここまで想わせるなんて。だが、それは男としての負けん気だったのか、それとも父親になって湧き上がった感情からなのか哲也には分からなかったが、とにかく、彼の頭には今、たった一つの考えしかなかった。それは優希と結婚
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