こうしてホテルをチェックアウトした優希は、車で都心に向かった。途中、薬局を見つけて車を停めた。車に乗ったまま、優希は薬を買うべきかためらっていた。今の自分の体調では、薬を飲んだところで気休めにしかならないかもしれない......その時、車内でスマホが鳴った。秘書の原田光葉(はらだ みつは)からだった。優希はワイヤレスイヤホンをつけて電話に出た。「原田さん、どうしたの?」「二宮さん、街の西側の件で、原告の父親が事務所に来て騒いでいるんです。裁判はやめて和解したいから、今すぐ訴えを取り下げろって......」その言葉に、優希は眉をひそめた。「分かったわ。とりあえず、その方を落ち着かせておいて。今からすぐ戻るから、たぶん20分くらいで着くと思う」「はい!」それから電話を切ると、優希はすぐに法律事務所へと向かった。......午前中、優希はその案件の対応に追われた。被害者の両親の意見が食い違っていたのだ。母親は裁判の続行を望み、父親は和解を主張している。これは非常に厄介な状況だった。優希は午前中ずっと、この父親の説得にあたっていた。しかし、この男は自分勝手なうえに保守的な考えの持ち主だった。これは本当に厄介な案件だ。被害者にとって一番の壁は、彼女自身の家族だったのだ。11時ごろ、被害者の父親は、「訴えを取り下げるから」とだけ言い捨て、怒って帰ってしまった。残された優希は応接室でかなり腹を立てていた。そこへ秘書の光葉がやって来て、おそるおそる言った。「二宮さん、さっきからスマホに何度か着信があったみたいです」優希は仕事の話をする時、いつもスマホをマナーモードにしていた。彼女はスマホを手に取って画面を見ると、7、8件の不在着信があった。いくつかは母親からで、残りの3件は見知らぬ番号からだった。優希は、まず母親に電話をかけ直した。「母さん、ごめん。さっきは打ち合わせ中で電話に出られなかったの」優希はこめかみを押さえながら言った。「そうなのね。じゃあ、お昼の約束には行けそう?」優希は動きを止めた。それでようやく、今日お見合いに行く約束をしていたことを思い出した。優希は目を閉じ、急に行く気が失せてしまった。「優希、もし本当に忙しいなら、お母さんが先方に連絡して、もう
더 보기