「ぐっすり眠ってたな」哲也は優希を見て、「目覚めはいかがかな?」と尋ねた。「うん」優希は体を起こして、軽く腰を動かした。「降りようか」「俺が先に降りるから、待ってろ」哲也はそう言って自分の席のドアを開けて車から降りた。そして優希の側に回るとドアを開けて手を差し出す。「俺に捕まれ。ゆっくりでいい」優希は唇をきゅっと結ぶと、哲也の掌に自分の手を重ねた。哲也はその手をしっかりと握った。それで車から降りると、優希は思わず周りを見渡した。空気が澄んでいて、見渡す限りの自然が美しい。深く息を吸い込むと、草花の香りがふわりと鼻をくすぐった。何十億円もかけて造られたリゾートホテルなだけある。ホテルの設備も五つ星レベルだ。哲也の説明によると、撮影は夜の8時からで、メイクは7時半からだそうだ。それまでは自由に過ごしていいらしい。それを聞いて、優希はうなずいた。そこで、哲也はまず、今夜泊まる部屋へと彼女を案内した。部屋に入り、寝室が一つしかないスイートルームだとわかった時、優希はようやく重要なことに気づいた。今夜、自分は哲也と同じ部屋で寝なければならないのだ。「どうして寝室が二つある部屋にしなかったの?」優希は哲也に聞いた。寝室のドアを開けようとしていた哲也は、ぴたりと動きを止めた。振り返って彼女を見ると、少し眉を上げる。「宿泊費はプランに含まれてる。俺たちは夫婦なんだから、スタジオのスタッフは当然一緒に寝るもんだと思うだろ。だからこの部屋で普通だ」優希は唇を引き結んだ。何も言い返せない。哲也はドアに寄りかかって腕を組み、彼女を見た。「何をそんなに怖がってるんだ?」優希はまつ毛を震わせ、哲也を見て弱々しく言った。「なにも、怖がってないよ」「そうか?」哲也は笑った。「どう見ても俺と二人きりになるのを怖がっているようじゃないか。前は俺のことが嫌いで避けてるんだと思ってたけど、最近のあなたを見てるとそうじゃない。あなたは俺を嫌ってるんじゃなくて、俺と向き合うのが怖いんだろ?」「違うよ!」優希は焦って食い気味に言い返した。「ただ妊娠してるから、二人で寝るのは何かと不便だってだけで......」「何が不便なんだ?」哲也は彼女に歩み寄り、深い瞳でじっと見つめて言った。「夜、電気を消したら、妊婦のあなたに俺が何かするとでも
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