それから約30分後、安人は寝室に入った。点滴が一つ空になったので、石川医師に教わった通り、慌てずに新しいものと交換した後、しばらくそばに立って、点滴がきちんとできているのを確認した。そして、安人はベッドで深く眠っている桜に視線を向けた。彼女の額には玉のような汗が浮かんでいたが、呼吸はさっきよりずっと穏やかだった。すると、安人は身をかがめてティッシュを数枚取り、そっと桜の額の汗を拭ってあげた。桜は、深く眠っていた。汗を拭き終えると、安人はそっと手のひらを彼女の額に当てた。熱は下がっていたが、まだ微熱は残っているようだ。それを確認すると彼はもう長居はせず、寝室を出て行った。そしてソファに腰を下ろした途端、新太から電話がかかってきた。「社長、ご依頼の件、すべて調査が完了いたしました」「話せ」「桜さんの戸籍は北城にはありません。法律上、春日康弘という男性と親子関係にあります。実の父親は前田会長、母親は、かつて前田家で働いていた使用人で、学があまりない田舎の女性だそうです。それで前田会長は、あるプロジェクトで近々桐島社長と提携する予定でしたが、どういうわけか彼の機嫌を損ねたようです。結局、桐島社長はそのプロジェクトを前田グループのライバル企業に回してしまいました。前田グループはこのために多額の先行投資をしていたので、これを失った今、資金繰りがかなり悪化しています。新たな大型契約でも取り付けられなければ、倒産の可能性も高いでしょう」新太の報告を聞きながら、安人は桜を助けたあの夜のことを思い出していた。なるほど、あの夜、桜に金吾と会うよう仕向けたのは彰人だったのか。「そもそも前田会長は前田家の養子です。妻の翠さんと結婚したのは、彼女の兄が事故で亡くなったのがきっかけでした。当時の当主、つまり翠さんの父親が会社を安定させるために二人の結婚を命じたのです。そのおかげで、前田会長は会社を継ぐことができました。二人には息子がいましたが幼くして事故死しており、前田会長が京子さんと関係を持ったのはその後のことです。桜さんはもう一人の前田家のお嬢さん、咲希さんより数ヶ月年上です。しかし前田会長は自分の体裁を守るため、桜さんを娘だと一度も認めていません」「娘と認める気はないのに、利益のためなら平気で売り渡すのか」安人
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