音々が部屋に入ってきて、ソファに座り足を組みながら、大きくため息をついた。「この忌々しい悪役、一体いつまで演じさせられるわけ?」誠也は振り返り、ソファでヤンキー座りをする音々を、いつものことだとばかりに見ていた。「北条先生が碓氷家に連絡を取ったらしい」音々は動きを止め、「ついに実家に戻る気か?」と尋ねた。「ああ」「いい度胸ね。奥さんと子供を奪うだけじゃ飽き足らず、財産まで狙う気か!」誠也の黒い瞳は冷たく沈み、「北部郊外の土地の情報は、そろそろ流してもいいだろう」と言った。音々は眉を上げ、椅子の背もたれに寄りかかりながら誠也を見つめた。「いよいよ網を引き上げるってこと?」「焦っているのは相手だ。これ以上長引かせるわけにはいかない」......週末の二日間、綾は子供たちと過ごすことにした。安人は優希と一緒にいるとリラックスしていて、宿題のことはすっかり忘れていた。彩は音々から何度か電話を受け、その度に外に出て出ていた。そして電話を終えて戻ってくると、複雑な表情をしていた。綾は、音々が彩に安人の宿題をさせるよう催促しているのだと察した。綾は宿題の内容を確認したことがあったが、難易度が高く、量も多いと感じた。まだ4歳で、小さな指も柔らかいというのに、音々は毎日、あんなにたくさんの宿題を安人にやらせている。綾は、そのやり方に強い不満を抱いていた。しかし、すぐに息子を引き取ることができないことも分かっていたので、安人の前では音々のことを悪く言わないようにしていた。まだ幼い安人には、大人同士の争いは理解できない。綾は、彼が音々に恐怖心を抱くようなことは避けたかった。日曜日の夕食後、綾は自ら安人を南渓館まで送っていった。綾は玄関先まで送り届け、彩に安人を連れて中に入るよう促した。彼らが家の中に入るのを見届けてから、綾は車の向きを変えた。夜の闇の中、車のテールランプが徐々に遠ざかっていく。誠也は視線を戻し、横を向いて、墨絵の肖像画に目をやった。絵の中の人の横顔は凛々しく、それでいて目元は冷たく沈んでいて、感情が読み取れない。まさに綾が彼に抱いている印象そのままだった。「ゴホッゴホッ――」誠也はハンカチを取り出し、口元を覆った......「お父さん」書斎のドアが開き、安人が絵
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