K大学で今年一番の大スキャンダルといえば、芸術学部の喜多川由希(きたがわ ゆき)の初めての夜を収めた動画が、学内のグループチャットに流出したことだった。動画は五つ星ホテルのプレジデンシャルスイートで撮影されたものだった。由希は一糸まとわぬ姿で、自分より頭一つ背の高い男に窓際に押さえつけられ、喘ぎ声が絶え間なく響いていた。終わった後、男は彼女の耳元で「いい子だ」と囁いた。その短い一言が、まるで爆弾のようにグループチャットに大きな波紋を広げた。【この声......桐島凛平(きりしま りんぺい)じゃないか?】【喜多川も大したもんだな、まさかうちの大学の理事に取り入るなんて!道理で前に彼女をいじめてた連中が静かになったわけだ】【ずっと喜多川のこと、純粋な子だと思ってたのに、まさか腹黒い女だったとは。さすが愛人の子ね!】その知らせが由希の耳に入った時、彼女は寮の部屋で凛平のためにマフラーを編んでいた。ルームメイトは動画の音量を最大にし、嘲笑を浮かべながらスマートフォンを回し見し、わざとらしく声を伸ばした。「喜多川さん、ずいぶん慣れた声じゃない?普段から練習してるんでしょ?」周りからどっと笑い声が起こり、由希は顔が真っ青になってその場に凍りついた。編みかけのマフラーが手から滑り落ち、彼女は立ち上がって部屋を飛び出した。彼女はよろめきながら凛平のオフィスへと走った。動画の件は一体どういうことなのか、彼に問いただしたかった。しかし、ドアの前に着いた途端、中から嘲るような声が聞こえてきた。「桐島さん、本当に由希には少しの情けもかけないんですね。わざとあんなにはっきり顔が映るように撮って、弁解の余地さえ与えないなんて」由希はそれを聞き、頭を殴られたような衝撃を受け、全身の血の気が引いた。「それは自業自得だろう。桐島さんが一番愛してる女に手を出したんだから、仕返しされても仕方ないさ」「大変なのは桐島さんの方だよな。彼女の母が愛人だっていう噂を人に流させなければならなかったし、救世主みたいに彼女をいじめる連中を追い払って、彼女の前では愛情深いフリをしなきゃならなかったんだから」「そうだ、桐島さん、いつ真実を告げるつもりです?あの子、自分がずっと好きだった人がいずれ義兄になる相手だと知ったら、その場で泣き崩れるでしょうね
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