父の登場はその場の空気を一変させた。母は、父の厳しい視線と言葉に、普段の強気を潜めて沈黙し、すっかり意気消沈しているようだった。「もういいだろう。啓介たちの結婚は、啓介と佳奈さん二人の問題だ。親として意見を言うのは構わないが度を超えてはいけない」父の言葉は母の耳に深く響いたようだった。母は反論することなくただ顔を伏せている。「啓介、佳奈さん。改めて先ほどの和美の無礼を詫びる。パーティーの件も佳奈さんが考えてくれた通りで構わない。いや、むしろ、その方がずっと理にかなっている」父はもう一度俺たちに深々と頭を下げた。「お気になさらないでください、お義父様。では、この方向でパーティーの準備は進めさせていただきます」佳奈は穏やかな笑顔で父に言った。「あのさ……そもそもいい歳した大人が『誕生日会』って正直どうかと思うんだ。あと婚約の発表も。…できれば今回のパーティー自体、なしにしてもらえないかな?」俺はこれまで抱いていた率直な気持ちを伝えた。母の無茶な条件はなくなったとはいえ、やはり大々的に誕生日を祝われるのは気恥ずかしい。「啓介の言う通りだ。私もそう思っていた。佳奈さんも無理をする必要はない。この話はなかったことにしよう」
Terakhir Diperbarui : 2025-07-04 Baca selengkapnya