All Chapters of 誰が契約結婚だって?ハイスぺCEOは私しか見ていない: Chapter 101 - Chapter 110

113 Chapters

101.手作りの言葉に込められた意味は?

ある日の夜、佳奈が真剣な表情で俺に切り出してきた。「啓介、料理のことで少し話があるんだけど」てっきり何かトラブルでもあったのかと思い、俺は身構えた。しかし、佳奈の口から出たのは全く予想外の言葉だった。「料理はね、基本は美味しいケータリングをお願いするんだけど、それだけじゃ面白くないでしょ? だから、当日、会場に出張シェフを呼ぶのはどうかな?」「出張シェフ? そんなことまで考えていたのか。」「シェフには、その場で調理してもらうようにお願いする予定。手配しているの。例えば、目の前で大きな肉の塊をローストして切り分けてもらったり、旬の魚介類をその場で焼いてもらったり。熱々の出来立てが食べられるし調理の様子を見るのも楽しいアトラクションになるから」佳奈は楽しそうに説明を続けた。「お母様が言う『手作り』とは違うけれど、プロの技が目の前で作り出すという意味では、それに匹敵する価値があると思うの。これなら見た目も豪華だし出来立ての美味しい料理を提供できる。創立パーティーにもふさわしい華やかさがあると思って。」母が求めていた「手作り」とは、佳奈がキッチンに籠って料理をすることだったと思う。しかし、規模が大きくなり他にもやることが多くなった今、一人で料理を作り提供するのは無理がある。きっと料理教室を経営している母にも出来ることではない。
last updateLast Updated : 2025-07-09
Read more

103.和美と凛の最終会議

パーティーまでの日にちが刻一刻と迫る中、私は凛ちゃんと最後の打ち合わせを重ねていた。あれから啓介と佳奈は私に何も話してこない。二人で準備を進めているらしいが、まさか私に何の相談もなく進めていくとは心外だった。全てが滞りなく進んでいるとは思えない。どこかに必ず綻びがあるはずだ。その綻びを突いて啓介の目を覚ます。その一心で私は凛ちゃんと共に最後の策を練っていた。「和美さん、周りに分かってもらうには映像が一番だと思うんです」凛ちゃんは自信満々に言った。「結婚式も行うような会場ですからDVDを流す機材は一通り揃っているはずです。なので、和美さんは当日スタッフの方にDVDを渡してください。当日の流れの中にDVDを流す時間があるはずですから時間ギリギリに渡して差し替えてもらうんです」凛ちゃんの提案に私は思わず息をのんだ。「そんなに上手く行くかしら」私の不安そうな声に凛ちゃんはニヤリと笑った。「大丈夫です。和美さんは啓介さんのお母様なんですよ。実の母親が息子から頼まれたと言えば、スタッフもまさか疑いませんし、それに直前に渡せば中身を確認している時間もないはずです」凛ちゃんの言葉に私の心臓がドキドキと高鳴る。確かに、それならいけるかもしれない。他にこれといった策も思いつかない今、この
last updateLast Updated : 2025-07-10
Read more

105.誰も手の届かない存在でいて

啓介が結婚するなんて信じられなかった。啓介はいつだって私の手の届かない場所にいた。私がどんなに想いを寄せても、付き合って彼女になってからも、最終的に彼は私を選ばなかった。そしてこれから例え誰かと付き合っても、結婚の話が出たら私と同じように断って、結局別れる結末を迎える、そう信じていたかった。啓介は、『永遠に誰のものにもならない存在』でいて欲しかった。誰が求婚しても断る啓介でいて欲しかった。 それが、かつて啓介に玉砕した私の傷を癒す唯一の方法だった。私だけが特別に選ばれないのではなく、誰も選ばない啓介だからこそ私の傷も薄れていく。そう信じていたのに。 なのに……啓介は、あの佳奈という女を選んだ。しかも、出会ってすぐに結婚までしようとしている。この事実が私を狂わせた。私には手に入らなかったものを、あの女は何の苦労もせずに手に入れようとしている、そのことが許せなかった。 あの女が本当に啓介を愛しているのかも、啓介があの女を愛しているかなんて本当はどうでもいい。ただ、啓介が誰のものでもないままでいること、それが私の心の平穏を保つ唯一の手段だったのだ。 私がこんな風に思っていることなんてきっと誰も知らないだろう。和美さんも私が純粋に啓介に未
last updateLast Updated : 2025-07-11
Read more

106.意外な救世主登場?①

パーティー開催まで残すところ二日となった日の午後に、携帯が鳴った。画面に表示されたのはパーティーの映像制作を依頼していた友人の名前だ。「ごめん、佳奈……実は、映像を頼んでいた担当者が盲腸で入院になってしまって当日はいけなくなってしまったんだ」「え?」「完成はしていて、あとは最終チェックと必要があれば微修正を加えることになっていたんだ。微修正はこちらでもできるからやっておくけれど、当日の対応はできなくなってしまったんだ」予期せぬ事態に頭の中が真っ白になったが、友人の申し訳なさそうな声に冷静さを取り戻した。「そう、わかったわ。こちらは大丈夫だから無理はしないでお大事にしてくださいって伝えてもらえる?」努めて明るく問題ないと言って電話を切ったが、内心では焦りが募っていた。エンディングで創立したばかりの会社の歴史を振り返るアルバム形式の映像を流す予定だったのだ。その映像には、当日の楽しかった様子を撮影してその場で編集して少しだけ組み込むつもりだったが、これでは難しそうだ。(うーん、必須ではないし今回は諦めるか…)「もしもし、啓介?パーティー当日の映像なんだけどね、担当の方が入院することになって今回は当日の場面はカットでいいかな?」
last updateLast Updated : 2025-07-12
Read more

108.パーティー当日、啓介の不安①

「なんかあっという間にパーティーの日が来ちゃったわね。」パーティー当日の朝、俺のベッドで目を覚ました佳奈が、枕元に置かれたスマートフォンを見ながら呟いた。「ああ、なんか当日になると不思議な感じだな。」俺もそう言いながら佳奈の白い肌をそっと撫でた。華やかな創立パーティーの準備を二人で進めてきたが、いざ当日となるとどこか現実味がない。佳奈は俺の胸に頭を乗せ、少しだけ不安そうな声で言った。「万全は尽くしたつもりだけれど、お母様、喜んでくれるかしら」「きっと大丈夫。お世辞とかじゃなくて佳奈のプランは本当にいいと思ったよ。聞いていてワクワクしたし、今も楽しみだ。もし、万が一母さんが何か言ってくるようであっても俺が佳奈を守るし、次を考えよう。」そう言って佳奈を抱き寄せ髪を優しく撫でた。そのまま指をずらし頬を撫でていく。佳奈はそっと目を閉じて口を少しだけ開けて、次のアクションを待っているようだった。その愛おしい表情を見つめていたが、ふと、ある不安が頭をよぎり手が止まってしまった。「……その前に、佳奈が愛想つかして嫌になったりしない?」俺から出た思わぬ言葉に、佳奈は目を開け虚を突かれたように小さく笑った。
last updateLast Updated : 2025-07-13
Read more

109.パーティー当日、啓介の不安②

俺は、自分でも気がつかないくらい心の奥の方に眠っていた不安を吐露した。「いつもさ、結婚の話が出ると俺が断って、向こうから離れていくんだ。諦めだったり、嫌気がさしたり、何度も言われることもあれば、もう1回で踏み込めなくて相手が落ち込んだりとかさ…。でも今回は、俺は佳奈と結婚したいと思っているけど親の問題があって。今まで断ってきた人たちの気持ちが、ほんの少しだけ分かったというか……」俺が拒絶される側の気持ちを理解した、と語ると佳奈は真剣な表情になった。「自信ないの? 断って去っていた彼女たちのように、私も去って行かないかって思っているの?」「いや…佳奈のこと疑っているわけじゃないんだけど。」「悪いけど、見くびらないでくれる?」佳奈はそう言うと、俺の胸を軽く叩いた。「私は啓介が好きで一緒にいたいからここにいるの。これからも一緒がいいと思っているから、こうしているの。お母様のことでどれだけ面倒なことがあっても、私にとっては啓介と一緒にいることのほうが大切よ。それに、私はそんなに簡単に諦める女じゃない。」佳奈は、俺の不安を優しく、しかし力強く打ち砕いてくれた。佳奈の強い意志と、俺への深い愛情が伝わってきて俺は心の底から安堵した。「ごめん、変なこと言って。ありがとう」
last updateLast Updated : 2025-07-13
Read more

110.招かねざる客、凜の登場

煌びやかなシャンデリアが光を放つホテルの宴会場は、華やかな熱気に包まれていた。啓介の会社にとって初めてとなる創立パーティー。堅苦しい挨拶や余興は一切なく、社員とその家族がリラックスして楽しめる、自由な雰囲気の会となっていた。啓介はホストとして、社員一人ひとりと笑顔で言葉を交わしている。佳奈が事前に手配したベビーシッターのおかげで、子供連れの社員たちは子どもたちの視界の入る場所にいながらも気兼ねなく食事や会話を楽しんでいた。会場のあちこちで笑い声が弾けている。一方、佳奈は会場全体を見渡し細部にわたる確認を行っていた。ドリンクの補充、料理の配置、そしてキッズスペースの安全確認まで、彼女はプロのイベントプランナーのようにテキパキと動いている。会場の一角で、私は夫とテーブルで会話を交わしていた。夫は、佳奈が企画したパーティーの出来栄えに満足し、社員たちの楽しそうな様子を眺めている。「佳奈さんは本当に気が利くね。子連れの家族も楽しめるように配慮しているとは。男はそこまで気が回らないから、佳奈さんの女性ならではの気遣いを感じられて感心したよ。」私は口元を引きつらせながらも頷いた。内心では、佳奈の完璧な準備に焦燥感を覚えていたが、夫がいる手前、素直に認めるしかなかった。(完璧すぎて腹が立つわ…)佳奈の完璧さに苛立ちながらも、最後の切り札であるDVDの存在を確かめ、凛の登場を今か今かと待ち望んでいた。 
last updateLast Updated : 2025-07-14
Read more
PREV
1
...
789101112
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status