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100.コンセプトは『自由』 ②

last update Last Updated: 2025-07-09 19:03:05

「それから進行なんだけど、堅苦しい挨拶とか、会社の紹介や歴史なんかの沿革はなしにしない? せっかくのパーティーなんだから、みんながリラックスして自由に楽しめる会にしたいの」

佳奈の提案に即座に賛同した。俺自身、ああいう形式ばった挨拶は苦手だし社員たちもきっと退屈するだろう。

「いいな! そうしよう。 じゃあ、乾杯の挨拶だけにしてあとは自由に楽しんでもらう形にするか」

堅苦しいルールを排除し誰もが心から楽しめる空間を作る。それが佳奈と俺が目指すパーティーの形だった。

「あとさ、事前に小さいお子さんの人数を確認しておいて、多いようなら当日はキッズスペースに専属のベビーシッターさんにいてもらうようにしない? 子どもの食事に気を取られてたら大変だし、せっかくのパーティーを楽しめないだろうから。」

佳奈の細やかな気配りには本当に頭が下がる。

「うん、それがいい!席も自由にして みんなが自由に動き回って美味しいものを食べて、たくさん話して。そんな温かみのあるアットホームなパーティーにしたいね」

佳奈の提案に満面の笑みで同意した。俺たちは立場に捉われず誰もが自由に楽しめる、型にはまらないパーティーを目指すことで一致した。

佳奈は
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