啓介side「社長、こっち向いてください。」そう言うと美山は、俺の正面に来てネクタイのゆがみを見始めたが、俺はひどく居心地の悪さを感じていた。「美山、大丈夫だ。もういいよ。」そう言っても美山はやめようとせず今度は背広を見てから肩を撫でて汚れを払っている。背中側も少し手を伸ばすように払うと、周囲から見ればまるで抱き合っていちゃついているようにしか見えない。俺は、その距離感に思わず後ずさりした。「美山、近い。誤解を生むかもしれないから、少し離れてくれないか。」しかし、そう言ったときには遅かった。横を振り向くと、三田が気まずそうに少し離れたところで立ち止まっていた。(三田、違うんだ。そんな顔しないでくれ。誤解だ……)そして、ちょうど店から出てきた男女が俺たちを見て足を止めた。その男性は酔っぱらっているようで、女性の肩に手を掛け顔を少し赤らめている。「なんだか楽しそうにしている男女がいるな。いいな。」その声にさりげなく振り返ると、顔はよく見えないが男性は女性の身体を引き寄せて、指で女性の顎を上げ、自分の顔へ引き寄せ、もうすぐキスをしそうな距離感になっていた。
 최신 업데이트 : 2025-09-26
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