不妊治療をしてまで子どもを作る気がないと言った啓介に対し、佳奈に同意を求めたが『啓介さんと同じ考えなので問題ありません』と特に気にした様子もなく返してきたのだった。 「で、でも、それで子どもが出来なくて後悔しても遅いのよ?」 ようやく絞り出した声は震えていた。親として息子夫婦の未来を案じる気持ちが私には痛いほどあった。しかし、啓介は私の問いに全く動じなかった。 「それでもいいと思っているよ。子どもが出来たら責任もって育てるし、出来なければ夫婦で支え合いながら暮らすつもり」 佳奈の目を見て微笑みながら言う息子に、私は目を見開いた。私には啓介の言葉がただの無責任な言い訳にしか聞こえなかった。啓介が高柳家の家系をこんなにも軽んじていることに深い悲しみと怒りを感じた。 「何言っているの! あなたは高柳家の長男よ! お金なら援助するわ、いくらでも協力する」 私の声はもはや抑えきれない怒りに満ちていた。高柳家の血筋を絶やすなどあってはならないことだ。子どもが出来なければ医学の力を借りてでも授かるために専念して欲しかった。 啓介は私の剣幕に押し黙った。息子も私と同じように高柳家の長男としての責任を感じているはずだ。それなのになぜこんなにも無責任なことを言うのか。
Terakhir Diperbarui : 2025-06-14 Baca selengkapnya