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60.揺れる母の心、思い描いていた未来

last update Last Updated: 2025-06-19 18:03:27

息子の啓介と佳奈が家に来てから早くも二週間が経とうとしていた。私の心の中では、あの日の出来事がまるで昨日のことのように鮮明に蘇る。啓介が佳奈を庇い、私に反論した言葉の数々、そして「子どもを産む道具じゃない」とまで言い放ったあの冷たい響き。

佳奈の子どもを持つことへの意識の低さ。どれもこれも深い闇となりいまだに忘れられずにいた。

「啓介ったら、あの佳奈って人のどこがいいのよ」

誰もいないリビングで私は思わず呟いた。あの人のどこに啓介がそこまで惹かれるというのだろう。凛ちゃんのように健気で息子のことを心から想ってくれる女性ではないというのに。

その日の午後は、私が主宰する料理教室「和みの食卓」の日だった。生徒さんたちも集まり、賑やかな声が響いているはずなのに、私の心はいつものような覇気が湧かず、時折ぼんやりとしてしまう。手元がおぼつかなくなることもあり生徒さんに心配される始末だった。

(なんでこんなことになってしまったのだろう……。)

私が思い描いていた未来は、もっと明るく穏やかなものだった。

息子の嫁と一緒に台所に立ち、啓介の好きな料理を教えてあげる。週末には息子家族が遊びに来て、孫たちのリクエストに応えて料理を作り、賑やかに食卓を囲む。そんな明るく楽しい家族団らんを想像していた。息子が結婚した
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