啓介に結婚願望がないことを知り、私は少し悩んだが、親密になるためには同じ価値観を持っていると思わせることが重要だと考え、自分も結婚願望がないように装うことにした。本当は結婚願望が強くてすぐにでも啓介と結婚したかった。若くして成功して社長になった啓介の隣で妻として微笑んでいる姿を何度も想像していた。しかし、交際に発展しなければ意味がない。「結婚は当人たちがしたければすればいいし、焦ってするものではないよね。」そう言って彼に共感を示した。啓介の結婚願望のなさは徹底していて、願望を持つのに一緒にいてもらうのは申し訳ないと交際を申し込まれても断っていることを知人から聞いていた。だからこそ、最初は結婚願望がないと伝えて恋愛対象から外れないようにした。私の作戦は功を奏し、知人も交えて何度か食事に行くうちに徐々に親しくなり、私から想いを告げて恋人として付き合うようになった。付き合ってからの啓介は、理想の彼氏ではなく『理想以上の彼氏』だった。ルックスも良く身のこなしも洗練されているうえ社長の啓介は、私のように付き合いたいと狙っている女性も多い。しかし、彼は声をかえられても一定の距離を保っており女性関係の心配がなかった。 普段は仕事人間だが、記念日や誕生日などは覚えてレストランを予約してくれる。たまに仕事が早く終わると迎えに来てくれたり週末はご飯を振る
Last Updated : 2025-06-09 Read more