All Chapters of 誰が契約結婚だって?ハイスぺCEOは私しか見ていない: Chapter 41 - Chapter 50

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41.凜の回想‐3/3‐ 小さな嘘と別れ

啓介に結婚願望がないことを知り、私は少し悩んだが、親密になるためには同じ価値観を持っていると思わせることが重要だと考え、自分も結婚願望がないように装うことにした。本当は結婚願望が強くてすぐにでも啓介と結婚したかった。若くして成功して社長になった啓介の隣で妻として微笑んでいる姿を何度も想像していた。しかし、交際に発展しなければ意味がない。「結婚は当人たちがしたければすればいいし、焦ってするものではないよね。」そう言って彼に共感を示した。啓介の結婚願望のなさは徹底していて、願望を持つのに一緒にいてもらうのは申し訳ないと交際を申し込まれても断っていることを知人から聞いていた。だからこそ、最初は結婚願望がないと伝えて恋愛対象から外れないようにした。私の作戦は功を奏し、知人も交えて何度か食事に行くうちに徐々に親しくなり、私から想いを告げて恋人として付き合うようになった。付き合ってからの啓介は、理想の彼氏ではなく『理想以上の彼氏』だった。ルックスも良く身のこなしも洗練されているうえ社長の啓介は、私のように付き合いたいと狙っている女性も多い。しかし、彼は声をかえられても一定の距離を保っており女性関係の心配がなかった。 普段は仕事人間だが、記念日や誕生日などは覚えてレストランを予約してくれる。たまに仕事が早く終わると迎えに来てくれたり週末はご飯を振る
last updateLast Updated : 2025-06-09
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42.凛、再来。狙うは啓介母の心

「先生、また来ちゃいました!」都心から少し外れた閑静な住宅街の一角にある啓介母が主宰する料理教室に、今日もまたエプロン姿の女性たちの活気ある声が響く中、私は明るい声で教室の扉を開けた。その顔には一点の曇りもない笑顔が貼り付いている。啓介母は、教壇から私の姿を認めるとふわりと目を細めてくれた。「あら、凛さんいらっしゃい。また来てくれたのね。嬉しいわ。」前回の料理教室で啓介の母親が好きな作家の展示会の情報を伝えた。場所は啓介の家の近く。私の予想通りお母さんは喜び、近くまで足を運んだついでに息子に会おうかしらと口にしていた。あらかじめ行く日を聞いておき、展示会を一緒に回った。そして、待ち合わせ場所に行くのに道に迷うと心配だからと送り届け、偶然を装って啓介との再会を果たしたのだった。もちろん全て計算通りで、啓介のお母さんに私と啓介の関係を知ってもらう、そして啓介に私とお母さんが仲良くしている姿を見せるための作戦だった。まさか私が母親と一緒にいるとは思ってもいなかった啓介の驚いた顔ときたら……。今でも思い出すと笑みがこぼれてくる。 「先日はありがとうございました。とても楽しかったです! あの日、啓介さんにもお会いできて嬉しかったです。」
last updateLast Updated : 2025-06-09
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43.凛、再来。狙うは啓介母の心 (後編)

『啓介さんとお付き合いしていた。まだ好きで忘れられない』私の言葉を聞いて、驚きの表情を滲ませていた。「そうだったの?啓介は自分のことをあまり話したがらないから聞いても教えてくれなくて。ずっと恋愛に消極的で交際している女性はいないと思っていたの。それが……凜さんみたいな素敵な方と付き合っていたなんて」「啓介さんはとても素敵な人です。実際に啓介さんとお付き合いしたいと言う女性はたくさんいました。」(啓介が凜さんと付き合っていた?結婚に消極的だから交際している女性はいないと思っていた。前から息子の口から付き合っている女性の話は出てきたことはなかったから、ずっと彼女がいないと思っていたけれどこんな可愛らしいお嬢さんとお付き合いしていたんて……。)「結婚の話も少しは出たんですけれど……私の至らなさのせいで別れることになってしまって本当に後悔しています。別れてから啓介さんがどれだけ私にとって大切な存在だったか分かって、今でも啓介さん以上の人はいないと痛感する毎日で……」今にも泣き出しそうな震える声で告白した。瞳は潤み、本当に啓介を愛し別れを後悔している女性を演じきった。啓介への深い愛情と、失ってしまったことへの後悔がにじみ出るよう考えに考え抜いた言葉を絞り出した。全て計算された演技だったが啓介の母の心には響いたようだった。「啓介さん、いつもお仕事でお忙しいから……。出来ることなら、 私、本当は啓介さんを支えたいんです。啓介さんの大変さを少しでも和らげてあげたい。そ
last updateLast Updated : 2025-06-09
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48.母のジャッジ!息子にふさわしいのはどっち? 後編

結婚しても仕事を続け出世にも意欲を示す目の前の女性に私は不信感を露わにしていた。「…そう。女性が活躍する時代ですものね」明らかに沈んだ冷たい声で言った。「でも、結婚となると家庭も大切になってきますわ。啓介も、会社を経営していて大変だと思うの。それに結婚したら夫を支えるのも妻の役目でしょう? お仕事が忙しくて家庭を放っておくことになるのはどうかしら」「仕事への情熱」に水を差そうとする発言に息子がたまらず口を開こうとしていたのを佳奈はそっと手で制した。「もちろん家庭も大切にします。啓介さんとは、お互いの人生を尊重し支え合っていくと決めております。彼の仕事に支障をきたすようなことは決してございませんし、私も、彼がいるからこそ一層仕事に打ち込めると思っております。」佳奈は穏やかに微笑んだが、私は面白くなくて表情は険しくなるばかりだった。先ほどから佳奈の言葉がひどく耳障りに聞こえている。自身のキャリアを優先し輝くことを目的とする佳奈の言葉からは、啓介を「支える」「尽くす」という言葉が一切出てこない。(結婚して妻になるということは、夫を支え、家庭を守り、子育てに励むことなのに……この子まるで分かってない!) 「啓介は、昔から本当に頑張り屋でね。私も、啓介
last updateLast Updated : 2025-06-12
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49.理想の嫁と高柳家の崩壊危機?前編

リビングに漂う香ばしい紅茶の匂いと、時折響くカップとソーサーの触れる音だけが高柳家の静寂を破っていた。啓介と佳奈、そして啓介の母親の三人の間に流れる空気は、さっきまでよりも一層重く冷ややかになっている。 私の胸の奥には、熱く煮えたぎるような感情が渦巻いていた。(私は夫を支え家庭を守ることに人生を捧げてきた。それが、妻としての当然の務めであり、家族の幸福を築く礎だと信じて疑わなかった。家庭を守ってきたからこそ、夫も安心して仕事に邁進できたはず。だから、息子の妻にも同じように啓介を心から支えたいと願う女性であって欲しいと思っていたのに……。) 先ほどの佳奈の「結婚後も働き続けたい、上を目指したい」という言葉が私の心に深く引っかかっていた。私が描く「理想の息子の嫁」の姿とはあまりにもかけ離れていたからだ。私は、この女性が本当に啓介の妻としてふさわしいのか試すような気持ちで、穏やかな口調を装いながら佳奈に尋ねた。「でも、子どもが産まれたらお仕事だって今のままというわけにはいかないでしょ?」妻として、そして母としての佳奈の覚悟を問うための私なりの最終確認のつもりだった。結婚したら、子どもを産み育てるのは女性にとって当然のことだろう。そして、それを前提にキャリアを考えるべきだというのが私の揺るぎない信念だった。しかし、佳奈は私の期待を裏切った。彼女は一瞬考えた後に朗らかな笑顔で迷いなく答えたのだ。
last updateLast Updated : 2025-06-13
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50.理想の嫁と高柳家の崩壊危機?後編

(子どもは授かりものですからって?私たちが跡継ぎ、孫の誕生を楽しみにしているのが分からないのか。なんて無責任なの…!)私は怒りでわずかに声が震え始めていた。子どもが産める時期や自然に妊娠しなかった場合のことも考えて不妊治療も考慮するように諭した時だった。隣に座っていた啓介が静かに口を開いた。彼の声は穏やかだったが目つきはひどく鋭かった。「母さん、今はお互い仕事が好きで大切なんだ。子どもが欲しいと思ったら、その時に俺と佳奈で考えていくよ。」(何を言っているの、啓介! あなたは高柳家の長男なのよ! 私がどれだけ孫を望んでいるかを知っているはずだわ!)私の心臓が激しく波打った。息子までこの女に感化されてしまったのか。啓介までが高柳家の未来を軽く見ているというのか。私は、睨みつけるように今度は佳奈に問いかけた。啓介がどうであれ、女性であれば結婚して子どもが欲しいと思うのは当然のことだろうと信じていたからだ。佳奈が私に同調し啓介を説得してくれることを期待していた。「でも佳奈さんはそれでいいの?出産や子育てのことを考えるのであれば年齢的に早い方がいいんじゃないかしら?」しかし、私の期待は残酷なまでに打ち砕かれた。「ありがとうございます。でも、私も啓介さんと同じ考えなので問題ありま
last updateLast Updated : 2025-06-13
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