静江は顔を上げて彼を見た。「明輝、財産を半分に分けることに同意しないなら、私、離婚には応じないわ。私が同意しない限り、あなたが裁判を起こしたって無駄よ」「私を脅せると思っているのか?」「脅しているわけではないわ。ただ、事実を言っているだけ。私たちももういい歳ですもの、離婚沙汰で世間を騒がせても、お互いにみっともないだけでしょう」明輝は冷ややかに彼女を見た。「先に離婚したいと言い出したのは、お前じゃなかったか?」静江は目を伏せ、しばらくしてようやく口を開いた。「私、これまでずっと意地を張って生きてきたから、頭を下げることができなくて、それで離婚だなんて言ってしまったのよ」彼女はずっと、自分が言った言葉を明輝が本気にするはずがないと思っていた。今になってようやく、自分が自信過剰だったのだと知った。オフィスに静寂が訪れ、明輝は眉をひそめ、何かを考えていた。どれほどの時間が経ったのか、ノックの音が響いた。秘書が書類を持って入ってきたが、二人の間の険悪な雰囲気に気づき、おそるおそる口を開いた。「社長、こちらの書類に、至急ご署名をお願いいたします」明輝は手を振った。「分かった、もう出ていい」「かしこまりました」秘書が去った後、静江は立ち上がった。「言ったこと、お考えになって。離婚せずにこのまま続けるか、それとも離婚するか。でも、離婚するなら、あなたの財産の半分はもらうわ。あなたに弁護士がいるように、私にも弁護士は探せる。そうなって世間に知れ渡れば、恥をかくのはあなたの方よ」静江が去った後、明輝はテーブルを強く叩き、その顔は怒りに満ちていた。この離婚は、成立させられそうにないな。それから半月ほどが過ぎ、時子の体は少しずつ回復に向かい、日々のリハビリを経て、ゆっくりとなら話せるようになっていた。明弘は、時子が汐見グループの株をすべて結衣に譲ったと知ってから、何度か病院で騒ぎを起こしたが、その度に結衣が雇ったボディーガードに追い出された。それを何度か繰り返した後、彼も現実を受け入れ、航空券を買って海外へ発った。冬が去り春が来て、年が明けると、結衣は正式に汐見グループで働き始めた。彼女の役職は社長秘書兼補佐で、まずは明輝のそばでしばらく学び、徐々に会社を引き継いでいくことになっていた。出社初日、結衣が自分の席に着い
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