涼介の顔が険しくなる。「玲奈、何を騒いでるんだ。結衣は汐見社長の秘書で、社長の代わりに俺を見送りに来ただけだ」玲奈は嘲るような表情で冷笑した。「汐見社長には秘書がたくさんいるのに、どうしてわざわざこの女が見送りに来るの?あなたたち、元恋人同士だったでしょ。少しは分別をわきまえたら?」そう言うと、彼女は結衣に視線を移す。「どうせ、未練たらしい誰かさんが、あなたを誘惑して自分の元に戻そうとしてるんでしょ!」結衣は冷ややかな笑みを浮かべ、自分のこめかみを指差した。「頭がおかしいなら病院に行ったらどう?いっそ精神病院にでも入院して、いつものように公共の場で騒ぐのはやめてくれない?見ていて不愉快なのよ」玲奈は顔を真っ赤にし、手を振り上げて結衣を叩こうとしたが、その手は涼介にしっかりと掴まれた。「玲奈、いい加減にしろ!」彼の目に浮かぶ苛立ちと冷たさを見て、玲奈の胸に悔しさがこみ上げる。「涼介、この女はわざとあなたに近づいて誘惑してるのよ。分からないの?!」涼介の目に嫌悪感が浮かぶ。「さっきも説明しただろう。結衣は汐見社長の秘書として、社長の代わりに見送りに来ただけだ。人の話がわからないのか?」結衣の前でそう怒鳴られ、玲奈の目には次第に涙が滲んできた。「分かったわ、あたしの勘違いだったってことにしておく。だったら、今後は汐見社長に頼んで、別の秘書に対応してもらって。あなたたちが接触するところなんて見たくないの」今、涼介の心は自分のものではない。もしも二人が度々顔を合わせるようになれば、昔の恋心が再燃しないとも限らない。そうなれば、自分の負けだ。「ただの仕事上の付き合いだ。それすら理解できないなら、今後、俺が商談に出るときは付いてくるな」結衣は彼らの口論に付き合う時間を無駄にしたくなく、涼介に視線を向けた。「長谷川社長、まだ仕事が残っておりますので、これで失礼します」そう言うと、彼女はきびすを返し、汐見グループのビルへと足早に向かった。背後から玲奈の怒声が届く。「汐見!待ちなさいよ!やましいことがあるから逃げるんでしょ?!」「玲奈、いい加減にしろ!騒ぎたいなら一人で騒いでろ。俺は仕事に戻る。お前のヒステリーに付き合ってる暇はない!」「涼介、今日、二度とあの女に会わないって約束してくれないなら、仕事なんてさせないから
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