ほむらの姿を見て、ぼんやりとしていた結衣ははっと我に返り、眉をひそめた。「一人で頭を冷やしたいって言ったはずよ。どうして入ってきたの?」結衣の冷ややかな表情を見て、ほむらの胸は苦しさで満たされる。今はもう、彼女は自分のことさえも嫌いになってしまったのだろうか。「結衣、兄が病室の前にいるんだ。君に直接謝罪したいと……」言い終える前に、結衣はほむらの言葉を遮った。「彼に会いたくないし、謝罪など受け入れるつもりもないわ」ほむらの表情が暗くなる。「じゃあ、君は……警察に通報するつもりなんだね?」一度通報すれば、節子はもう手加減しないだろう。最終的には、きっと相互に傷つけ合う結果になる。ほむらはその結末を望んでいなかったが、同時に、結衣が妥協するような人間ではないことも理解していた。結衣は頷いた。「ええ。たとえ……このことで、私たちの関係が終わることになったとしても」結衣には分かっていた。たとえ警察に通報しても、結果は得られないかもしれない。結局のところ、汐見家は伊吹家と比べれば、あまりにも力が及ばないのだから。蟻が象に勝てるわけがない。でも、勝てなくても、一矢報いてやりたい。彼らにも痛みを感じさせたい。結衣が求めているのは、公正さだった。結衣の決意に満ちた表情を見て、ほむらは唇を引き締め、彼女をまっすぐ見つめて言った。「分かった。君の決断を支持する」ほむらはこれまで、伊吹家が汐見家に報復することを恐れて、康弘に謝罪させて事態を収めようとしていた。しかし、彼は一度も、結衣の本心を尋ねることをしなかった。彼女が警察に通報したいというのなら、自分も彼女の味方になる。結衣は一瞬呆然とし、その目に驚きの色が浮かんだ。ほむらが自分の味方になってくれるとは思ってもみなかったのだ。「警察に通報したら、たとえあなたの兄が最終的に罪を逃れたとしても、彼の評判や伊吹グループに傷がつくわ。本当に……私の味方でいてくれるの?」ほむらは少し戸惑いながらも言った。「僕は君の恋人だ。当然、君の側に立つ」「でも……あなたを困らせたくない……実は先ほどまで、あなたと別れようかと……」「結衣!」ほむらは厳しい声で彼女の言葉を遮り、その瞳に冷たい光が宿った。「そんなことを言わないでくれ。僕は絶対に認めない」ほむらの漆黒の、わずかな怒り
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