大神殿内にある食堂で少し早めの朝食を摂った後、アモンの案内でシェイドが訪れたのは、行政区画にある自警団|組合《ギルド》の本部だった。 「──本当に、良いのだな?」 アモンが問うと、シェイドは小さく頷いた。 「……俺には学者のような知識もなければ、軍人のように人を殺す覚悟もない。剣を振るうしか取り柄のない俺には、自警団の仕事が性に合ってる」 「しかしなぁ……シェイドよ、君はまだ若い。そう一つの考えに、固執する必要もなかろう? それに自警団は、常に死と隣り合わせ。何時死んでも、可笑しくない危険な仕事だ。悪いことは言わぬ、考え直さないか」 「確かにそうかもしれないが、生憎これ以外の生き方を知らないものでね」 「……そうか。そこまで言うなら、止めはすまい」 ここに来るまでの道中で、何度もアモンと話し合って決めたことだ。今更、考えを改めるつもりはなかった。 「──失礼するぞ」 「はい──」 書類の整理をしていた、二十代そこそこと思われる若い受付嬢が、アモンの声に顔を上げる。黒い髪に黒い瞳。ハルモニア人と比較すると、少し濃い肌色。聖教徒によく見られる身体的特徴を、眼前の可愛らしい受付嬢は余すことなく備えていた。黒のロングワンピースの上から白いエプロンを身に付けたエプロンドレス姿が、とても良く似合っている。 「あら、アモン様。その節はどうも、お世話になりました」 「元気そうで何よりだよ、ルビィ。ここでの仕事には慣れたかね?」 「ええ、アモン様のお陰で。それで、本日はどのようなご要件でしょう?」 ルビィと呼ばれた受付嬢が首を傾げながら尋ねると、アモンはシェイドの肩に手を置きながら、 「──この青年を、自警団組合に所属させたい。君と同じく聖教会からの迫害を受けたようでな、この度ハルモニアが受け入れることになった」 「成程。確かに、自警団は慢性的な人手不足ではありますが……宜しいのですか?」 「剣の腕前は申し分ない。《《あの》》ベリアルのお墨付きだ。それに私が強要したわけではなく、彼自身の強い希望だ」 「そうですか。畏まりました」 一旦奥へと引っ込んだかと思うと、ルビィは何枚かの書類を携えて姿を現し、カウンター席に座るようシェイドたちを促した。 「何か、飲み物はお召し上がりに?」 シェイドが腰を下ろすと、ルビィは愛想よく笑いなが
Terakhir Diperbarui : 2025-05-08 Baca selengkapnya